UL、ドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明するリポートを公開(日本語版)

 ULは、同じブランドマークで知られ、アメリカ合衆国に本拠を置き、世界的な機器の機能や安全性に関する標準化を目的とした製品安全規格を策定し、同時に評価方法を設定、実際の評価試験を実施している企業です。
 そのULが、そのチーフエコノミストであるエリン・グロッシ(Erin Grossi)による、2015年、ドイツのエネルギー・エコシステムの現地調査の結果をまとめた「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」というリポートを公開しました。
 国内では、現在独メルケル政権とEU全体が直面している、政治および社会システムの困難な状況全体をもって、ドイツの再生可能エネルギーの重用、脱原発へと舵を切った手法全体を失敗だと決めつける話をする人もいます。また、再生可能エネルギーは原発を代替することはできないという、見当違いの話をする識者もいます。しかし、再生可能エネルギーの大量導入を口にしながら、実は優先接続などを最初に設定することこそがその導入の成功の秘訣であるというポイントを見逃している(または、意図的に無視している)現状においては、ドイツとアメリカの実証を得ての知見を国内に活かすための門戸の議論にさえ達していないと考えています。
 今回のエリン・グロッシ(Erin Grossi)のドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明する白書がこのタイミングで読めることは、そうした考えに一石を投じる意味でも意味のあるものです。

 そして、今回のリポートは、内容で比較されている独米の再生可能エネルギーの導入体制のリポートという意味だけでなく、福島第一原発事故を経験しつつ安易な原発再稼動に舵を切る日本人に向けてもいると考えています。その意味で、日本語版が同時リリースされたのだと考えています。
 ドイツの成功を表す言葉としては、

「..........規制当局、送電系統運用会社(TSO)、配電系統運用会社(DSO)、再生可能エネルギー供給会社は、世界で最も信頼性の高いグリッドシステムの一つであることを示す長年にわたる記録が、太陽光や風力のような再生可能エネルギー源が有する間欠性によって途切れてしまわないように協力しています..........」という一文をリポートの中から拾いました。そして、この過程、どの送電線をどんなエネルギーが流れているかを、知りたいと思えばだれでも知ることができるというエネルギー民主主義を実現する、ドイツのかつてない試みであると読み取りました。

 日本語リポートには、詳細な数字はあがっていません。誰でも読める18ページのパンフレットです。是非ダウンロードしてお読みください。
 同書では、増加が続く再生可能エネルギーのグリッドシステムへの導入におけるドイツと米国のアプローチの違いが述べられています。そして、特にバッテリーでの蓄電、インテリジェント・トランスフォーマ/インバータ、センサーとデータ分析並びにそれらに関する規格などの分野での、この二つの国の技術協力の可能性に光が当てられています。オバマ政権は、再生可能エネルギー分野への投資を確保して任期を終えようとしています。アメリカ合衆国の今後については、大統領選挙の結果しだいでは、違い選択をする可能性もあります。また、困難に直面しているメルケル政権の今後も不透明です。

 流動化する世界。そのタイミングで出されたこのリポートを味わって読むことにします。

 独米の体制の違いを同リポートは、以下のように表現しています。

 「二つの国の最大の違いは… ドイツ連邦政府が国内のエネルギー市場を転換すると決断したことである。」


プレスリリース / UL UL白書、ドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明、2016年2月12日
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-----image : 「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」カバー

" 世界的な安全科学組織であるULはこのほど、ドイツが送電網への再生可能エネルギーの供給量の増量に成果を上げるために何を行っているかを理解する目的で調査を実施した。この調査とその結果は、ULの首席エコノミスト、エリン・グロッシ博士によって書かれた「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」と題する無料の白書(http:bit.ly/1VVnTnx )から入手できる。 ..........  この白書のための調査には、現地調査およびドイツのエネルギー転換に取り組むエネルギー・エコシステム関係者とのインタビューが含まれている。ドイツは、原子力発電所を再生可能なエネルギー源に置き換えるという積極果敢な目標を設定することにより大きな経済的賭けをしており、グロッシ氏にとって非常に興味深いものであった。全体の再生可能エネルギーの使用量に関して、ドイツは2014年に30%の目標をパスしており、全国的に2025年までに40-50%、2050年までに80%に到達する計画である。

 グロッシ氏は「われわれは、なぜドイツが再生可能エネルギーにそのような重大な経済的賭けをするのか、なぜそれが最終的に成功するとドイツ政府が信じているのか、世界中の他の市場が貢献できること、それから学ぶものは何なのかを明らかにしたかった」と語る。

 同白書は、ドイツの環境上の見解と安全保障上の見解の間の全体的な相違、送電網の持続可能性を維持することにカミソリのように鋭い焦点を合わせていること、最新の工学的課題の幾つかを解決する仮想発電所の登場について説明している。しかし、同調査はまた、ドイツがそのエネルギー目標を達成するために対処しなければならない幾つかのエネルギー上の盲点があること、そして他の国々は、その克服に役立つイノベーションを与えることができると記している。

 グロッシ氏は「われわれが最終的に明らかにしたことは、ドイツが自身の変革の取り組みを進めるために最終的に必要とするであろうさまざまな技術は既にあるということである。アジアや他の市場の製造立国は、その取り組みを達成するのを支援することができる。われわれが注目した具体的なイノベーションは、電池による蓄電、インテリジェントな変圧器、インバーター、センサー、データ分析およびそれらに関連する規格である」と語る。

 同白書は、これまでよりももっと広がりのある、柔軟性に富んだ、スマート・エネルギーを擁した未来がこれからの10年間に開花し、発展途上国は中央集中システムを構築するよりもむしろこれらのシステムを利用するようになる、と結論付けている。なぜなら、今日の機械・電気工学と情報技術のリソースをもってすれば、それは現在、技術的に実現可能であり、経済的に実行可能であるからである。
..........
白書の全文は、ULのオンラインライブラリー(http://bit.ly/1VVnTnx )において各種言語でダウンロードできる。 
.......... "

関連
UL Whitepaper by Chief Economist Dr. Erin Grossi Outlines Renewable Energy Success With Power Grids in Germany & Potential Opportunities for Other Nations-----UL、January 21, 2016

UL Podcast - "Putting the Pieces Together

(UL CI Marketing、2016/02/01 )

UL Japan


参考

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IHIグループ関連、磁気軸受式100kW級バイナリー発電装置で米ベルデコープ VerdicorpとOEM契約

 IHIとIHIプラント建設は、バイナリー発電装置(有機ランキンサイクルシステム : ORC)で多数実績のあるベルデコープ Verdicorp 社とOEM契約を締結しました。ORC(オーガニックランキンサイクル)は、低沸点媒体を熱循環させることで、タービンの作動媒体とする発電システムです。今回のベルデコープのシステムの熱媒は、HFC-245fa(不活性ガス)です。対応する熱源温度は、120~150℃です。最大出力は、100kWです。
 バイナリー発電装置は、本年5月20日に施行された電気事業法施行規制の改正により、これまで100℃未満となっていた熱源温度条件が、撤廃されたことで、ディーゼル・ガスエンジンの排熱、ごみ焼却プラントや化学プラントのプロセス熱や排温水など、これまで活用できていなかった100℃以上の低温熱源を利用して発電することが可能となることから、今後、需要の増大が見込まれているということです。また、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーの分野においても、今後、市場拡大が期待されます。

 ベルデコープ社のORC100kW級バイナリー発電装置は、磁気軸受(Magnetic bearing)の採用により摺動部がなく、かつオイルフリーで、作動媒体の劣化や補充が必要ないとのことです。これにより発電ロスを押さえることができるということですから、興味深いパーツを採用していますね。

 IHIは、これまでも当ブログでも紹介してきたように、20kWの自社開発の小型バイナリー発電装置を保有しています。こちらも、オーガニックランキンサイクル(ORC)を採用し、70~95℃の温水から発電が可能というものです。
 IHIのラインナップの充実により、バイナリー発電はどこまで普及するのでしょうか? IHIは、この製品を2015年3月に販売を開始する予定です。そして、3年間で20台の販売を目指すとしています。

プレスリリース / IHI、2014年9月9日
磁気軸受式100kW級バイナリー発電装置でVerdicorpとOEM契約 ~エンジン排熱や産業排熱を有効利用、地熱にも適用
100kwverdicorpoem_large
-----image : 同リリースより

" IHIとIHIの100%子会社であるIHIプラント建設株式会社(以下、IPC)は、このたび、バイナリー発電装置(有機ランキンサイクルシステム)で多数実績のあるVerdicorp(以下、V社)とOEM契約を締結しました。
 本契約により、IHIグループは、米国・欧州を中心に多くの販売実績がある信頼性の高いV社独自開発のバイナリー発電装置について、日本での独占販売および、東南アジアなどでの販売権利を得ました。
 今後、実プラントの性能確認テストを行った後、2015年3月に販売を開始する予定で、3年間で20台の販売を目指します。

 バイナリー発電装置は、本年5月20日に施行された電気事業法施行規制の改正により、これまで100℃未満となっていた熱源温度条件が、撤廃されたことで、ディーゼル・ガスエンジンの排熱、ごみ焼却プラントや化学プラントのプロセス熱や排温水など、これまで活用できていなかった100℃以上の低温熱源を利用して発電することが可能となることから、今後、需要の増大が見込まれています。また、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギーの分野においても、今後、市場拡大が期待されます。

 IHIグループでは、これまで数多くのエンジン発電プラント、焼却炉や各種プラントの設計エンジニアリング、建設、保守・メンテナンスを行ってきた実績を有していることから、これまでの経験を活用し、V社製のバイナリー発電装置を用いて、お客様にとって最適な排熱発電システムを提案し、排熱エネルギーを資源として有効利用できるシステムの提供を行っていきます。

 また、IHIとV社では、さらに低温で作動可能なバイナリー発電装置の共同開発を進め、広いニーズに応える製品ラインナップを構築していきます。

<100kW級バイナリー発電装置の特長>
・発電機本体は、磁気軸受の採用により摺動部がなく、かつオイルフリーで、作動媒体の劣化や補充が必要ない
・作動媒体は有機不活性ガスを用いており、不燃、無毒で安全性が高い
・作動媒体温度が250℃未満で、ボイラ・タービン主任技士の選任が不要

<主な仕様>
・最大出力:100kW以上(NET)
※出力値は、熱源、冷却源により変わります。
・作動媒体 : HFC-245fa(フルオロカーボン)
・熱源温度 : 120℃~150℃
・系統連系機能 : 有り(低圧連系)
.......... "

関連
・IHIプラント建設バイナリー発電装置

G04
G07
-----image : 上記サイトから

" パッケージ仕様

項目 仕様
発電方法 ラジアルタービン/PM高速発電機
作動媒体 HFC-245fa(不活性ガス)
寸法 W:1,500×L:1,700×H:2,200mm
熱源温度 120~150°C
最大出力 113kW(Gross) "

Verdicorp Organic Rankine Cycle Turbine
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-----image(”Verdicorp VTA085 Air-cooled ORC Turbine”) : 上記サイトより


参考エントリー
IHI、長野県七味温泉ホテル向け20kWの小型バイナリー発電装置を温泉利用向けに受注-----ソフトエネルギー、2014/01/23

IHI、福島でバイオマスボイラーと併用の20kW小型バイナリー発電装置を受注。茨城でも焼却炉に1台-----ソフトエネルギー、2014/01/15

地熱発電(廃棄熱発電等用)小型バイナリー発電ユニット カタログ

参考ツィート
・Twilog : #binary(世界のバイナリー発電の話題)

・Twilog : #binary #renewjapan(日本のバイナリー発電の話題)

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ソニー、カナダのハイドロ・ケベックと合弁で電力系統用大規模蓄電システムの新会社を設立

 ソニーは、カナダ最大の電力会社であるハイドロ・ケベックと合弁で電力系統用大規模蓄電システムの新会社『エスタリオン・テクノロジーズ株式会社』を設立します。具体的には、ソニーが有する安全性・信頼性の高いオリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池と、拡張性の高い蓄電モジュール・システムの制御技術と、ハイドロ・ケベック社が有する電力系統の運用・制御技術をもって、電力系統用大規模蓄電システムと電力系統の使用に適した電池材料技術の開発を行うということです。ハイドロ・ケベックは、カナダ、合衆国はもちろん、海外での発電および系統網の確立・運用に積極的です。
 新会社の名前、エスタリオン・テクノロジーズは、「ESS(Energy Storage System:蓄電システム)」と「Station(エネルギーマネジメントの場所の意)」と「Lithium ion(リチウムイオン)」を組み合わせた造語で、リチウムイオン電池の技術を使用した電力系統用蓄電システムという、文字通りの意味がこめられたものだということです。

プレスリリース / ソニー、2014年06月03日
ソニーとハイドロ・ケベック社との合弁会社 エスタリオン・テクノロジーズ株式会社を設立

" ソニー株式会社(以下、ソニー)とカナダ最大の電力会社であるハイドロ・ケベック社は、電力系統用大規模蓄電システムに関する研究・開発の合弁会社として、『エスタリオン・テクノロジーズ株式会社』を設立しましたのでお知らせいたします。

 『エスタリオン・テクノロジーズ株式会社』は、ソニーが有する安全性・信頼性の高いオリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池と、拡張性の高い蓄電モジュール・システムの制御技術、及びハイドロ・ケベック社が有する電力系統の運用・制御技術とリチウムイオン電池材料技術を活用します。
 両社が、これらの技術を組み合わせて同じ場所で研究・開発を行うことで、大規模な用途でも高い安全性と信頼性を実現するシステムに加えて、電力系統用に適した電池材料技術の研究・開発を行い、変電所におけるピーク対策や再生可能エネルギーの系統連系など、拡大するさまざまな用途への有効性の検証を行います。

 新会社名『Esstalion Technologies Inc.』の「Esstalion」は、研究・開発の対象となる、「リチウムイオン電池の技術を使用した電力系統用蓄電システム」という意味を込めており、「ESS(Energy Storage System:蓄電システム)」と「Station(エネルギーマネジメントの場所の意)」と「Lithium ion(リチウムイオン)」を組み合わせた造語です。
..........
エスタリオン・テクノロジーズ株式会社の概要
設立 2014年5月14日(※合弁会社としては6月2日に発足)
本社所在地 カナダ国ケベック州ヴァレンヌ市
代表者 エリー サヒブ / Élie Saheb
(現 ハイドロ・ケベック社 テクノロジー部門 EVP)
事業内容 電力系統用蓄電システムと電池材料技術の研究・開発
.......... "

関連
Establishment of Esstalion Technologies, Inc., a joint venture between Hydro-Québec and Sony-----Hydro-Quebec, June 2, 2014

Hydro-Québec and Sony Announce the Establishment of a Joint Venture to Start Development of a Large-Scale Energy Storage System for Power Grids-----Hydro-Quebec,April 16, 2014

・Wikipedia : ハイドロ・ケベック電力公社


コメント続き
 カナダは、水力発電大国として名をはせています。これだけ広大な国土に、三千万人強の人口しかいません。資源は豊富で、実に多くの、広大な自然環境を有しています。電力の60%が水力ということは知っていましたが、ケベック州に関しては、なんとその96%が水力だということは知りませんでした。今回、ハイドロ・ケベックのサイトで始めて知りました。

 カナダ全体の電力に関する各発電ソースの2011年の割合は、
・水力 60%
・風力 2%
・バイオマス 1%
・石炭 12%
・天然ガス 9%
・石油 1%
・原子力 14%
・その他 1%

 となっています。将来的には、風力とバイオマスを増やし2035年には、2011年に両者合計3%のところを2035年には、この風力とバイオマスに加え、太陽光と地熱も増やし、水力をのぞく再生可能エネルギーの割合を12%まで増やす政府の見積もりもあります。豊かな自然を生かし、化石燃料と原子力への依存をどこまで減らすことができるのか? 日本の条件とはかなり隔たりがありますが、両国の協力には多くの可能性が存在しています。カナダを通して、エネルギー技術の市場としての中国を見ると大きな可能性を感じます。


参考
・Hydro-QuebecHydropower - A CLEAN AND RENEWABLE ENERGY SOURCE
Electricity_map_usa_canada_0_w640
-----image(”Map - Electricity Generation in Canada and the United States”) : 上記サイトより-----
2011_electricity_usa_canada_w800

"Map of the different sources of electricity generation in Canada and the U.S. and the impact on greenhouse gases emissions"

・Canada National Energy Board : Canada’s Energy Future: Energy Supply and Demand Projections to 2035 - Emerging Fuels and Energy Efficiency Highlights
Fg7_3eng
-----image(”Canadian Generation Mix in 2010 and 2035, Reference Case”) : 上記サイトより

Natural Resources Canada : About Renewable Energy

"Key Descriptors
・Canada, with its large landmass and diversified geography, has substantial renewable resources that can be used to produce energy; these resources include moving water, wind, biomass, solar, geothermal, and ocean energy.
・Canada is a world leader in the production and use of energy from renewable resources. Renewable energy sources currently provide about 16.9% of Canada’s total primary energy supply.
・Moving water is the most important renewable energy source in Canada, providing 59% of Canada’s electricity generation. In fact, Canada is the third largest producer of hydroelectricity in the world.
Wind is the second most important renewable energy source in Canada. It accounts for 1.6% of electricity generation in Canada.
・Biomass is the third largest source of Canada’s electricity generation. Its share in Canada’s electricity generation is 1.4%.
・Wind and solar photovoltaic energy are the fastest growing sources of electricity in Canada."

・GENI : Canada Energy Issues

・Twilog : renewcanada(カナダの再生可能エネルギー関連の情報)

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産総研、福島再生可能エネルギー研究所とNRELのESIFとの国際連携を強化

 産業技術総合研究所(産総研)は、4月1日に郡山で開所した福島再生可能エネルギー研究所と米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のエネルギーシステム統合施設(ESIF : Energy Systems Integration Facility)との再生可能エネルギーシステムに関する研究において、これまでの関係をより強化し連携する覚書に署名しました。これにより、福島が再生可能エネルギー研究の国際拠点になる可能性もあります。

 エネルギーシステム統合施設(ESIF)は、昨年7月にコロラドのゴールデンの他のNREL関連の施設に隣接した土地に建設されたばかりの、アメリカ初で最大となる再生可能エネルギーの研究の中心となる施設です。そこでは、太陽光発電、風力発電、ストレージシステムなどを接続し解析できる、スーパーコンピューターや接続および解析のためのさまざまなシステムが整備され、商用電源網、グリッドにおける統合、つまり合理的で整合性のある運用などが研究されています。
 一方、郡山の福島再生可能エネルギー研究所では、水素や蓄電池などによるエネルギー貯蔵と制御技術を駆使した再生可能エネルギーシステム統合技術、太陽光発電技術、先進的風力発電技術、地熱・地中熱の適正利用のためのデータベース構築など、世界最先端の研究を世界に開かれた形で整備することになっています。
 今回の関係強化では、これまでの太陽光発電やバイオ燃料などの基盤技術および国際標準化技術に関する研究連携に加えて、いよいよ太陽光発電、風力発電、電力貯蔵、水素エネルギー貯蔵から構成される再生可能エネルギーシステムの最適運用のための評価技術の開発を進めていくということです。

 ただ、エネルギーシステム統合施設 (ESIF)は、200名程度のスタッフを擁し、スパコンなどの分析環境と本格的な風力発電などの実証実験施設を備えたかなり本格的な造りです。一方、福島のほうは、地域を中心とした民間と大学などの研究機関との産学協同の体制作りもこれからで、具体的な成果でどこまで期待できるのか、よくわからりません。世界に開かれた研究所ということなので、情報発信にも期待しています。
 

プレスリリース / 産業技術総合研究所(産総研)、2014/04/18
米国国立再生可能エネルギー研究所と産業技術総合研究所が、再生可能エネルギーシステム統合での研究連携に関する覚書に署名-福島を再生可能エネルギー研究の国際拠点に-

Fukushima_sansouken_lab
----image : 再生可能エネルギー研究センター

" 再生可能エネルギーの大量導入の早期実現に向けた技術開発

再生可能エネルギーの大量普及のためには、時間的に大きく変動する、コストが高い、場所ごとに適切な技術の選択が必要、等の課題を解決する必要があります。このため、当研究センターでは、研究拠点に設置予定の実証フィールドを有効に活用し、以下の研究開発を中心に進めます。
・水素や蓄電池等のエネルギー貯蔵とパワーエレクトロニクスを駆使した統合システム技術を開発し、時間的に変動する大量の再生可能エネルギーを活用する技術モデルの実証研究
・軽量安価な太陽光発電モジュール等、大幅なコストダウンを実現する革新的技術の研究開発
・健全な技術普及と社会の受入れを目的とした、地熱、地中熱等の再生可能エネルギーデータベースの構築と提供

研究拠点
福島再生可能エネルギー研究所
(平成 25 年度中はつくばセンター(中央))
所在地
〒963-0215 福島県郡山市待池台2-2-9 "

" ポイント ・産業技術総合研究所(産総研)と米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が再生可能エネルギーシステム統合での研究協力で連携を一層強化 ・産総研福島再生可能エネルギー研究所と、NRELのエネルギーシステム統合施設(Energy Systems Integration Facility: ESIF)を中核として、太陽光発電や風力発電、電力貯蔵などからなる再生可能エネルギーシステムを最適化するための評価技術の開発を推進 ・日米両国の高い研究開発ポテンシャルを活用した共同研究の推進により、再生可能エネルギー技術の早期実用化を目指す

 概要

 米国国立再生可能エネルギー研究所【略】(以下「NREL」という)と独立行政法人 産業技術総合研究所【略】(以下「産総研」という)は、平成26年4月に福島県郡山市に開設した産総研福島再生可能エネルギー研究所及びNRELのエネルギーシステム統合施設(Energy Systems Integration Facility: ESIF)を中核として、再生可能エネルギーの研究開発に関する連携を推進することを目的とした研究協力覚書(以下「MOU」という)を平成26年4月18日に締結する。
 本MOUに基づいて、これまでの太陽光発電やバイオ燃料などの基盤技術および国際標準化技術に関する研究連携に加えて、太陽光発電、風力発電、電力貯蔵、水素エネルギー貯蔵から構成される再生可能エネルギーシステムの最適運用のための評価技術の開発をより一層推進する。世界的にもポテンシャルの高いNRELと協調し、双方の研究ポテンシャルを補完し合うことにより福島再生可能エネルギー研究所が世界的な研究拠点になることを目指す。
..........
具体的な連携・協力内容

(1)再生可能エネルギーシステム統合(Renewable Energy System Integration)
産総研福島再生可能エネルギー研究所とNRELの ESIFとが連携
太陽光発電、風力発電、電力貯蔵、水素エネルギー貯蔵などから構成される再生可能エネルギーシステムの最適利用のための評価技術の開発
(2)太陽光発電(Solar Photovoltaics)
太陽電池および太陽光発電の性能や信頼性を向上するための技術、および試験・評価するための技術開発
(3)バイオ燃料(Biofuels)
セルロース系エタノール生産のための糖化技術の改良と評価
.......... "

関連
産総研 福島再生可能エネルギー研究所 / フォトギャラリー
Exterior01
-----image : 「産総研 福島再生可能エネルギー研究所 施設・実験設備」より

産総研の再生可能エネルギー研究開発拠点 来春、郡山市に開設 施設概要固まる-----福島みんなのNews ,2013

NREL Energy Systems Integration Facility (ESIF) / Newsroom

New Facility to Transform U.S. Energy Infrastructure-----NREL's Continuum Magazine,September 12, 2013


産総研、郡山に福島再生可能エネルギー研究所を4月に開設-----ソフトエネルギー、2014/01/14

アメリカエネルギー省とNRELは、再エネと送電網の統合をめざし、新たな研究センター ESIF を開設-----ソフトエネルギー、2013/07/03

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ファーストソーラー、CdTe カドテル太陽電池のモジュールベースで変換効率17%を達成

 下の記事をご覧ください。

ファーストソーラー、CdTe カドテル太陽電池のモジュールベースで変換効率17%を達成-----自然エネルギー、2014/03/21

参考エントリー
ファーストソーラー First Solar、CdTe化合物系薄膜太陽電池の最高、20.4%の変換効率を達成。日本でメガソーラー・デビューも-----ソフトエネルギー、2014/03/18

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ファーストソーラー First Solar、CdTe化合物系薄膜太陽電池の最高、20.4%の変換効率を達成。日本でメガソーラー・デビューも

 ファーストソーラー First SolarのCdTe(カドミウムテルル)太陽電池を使った1.3MWp(当初の発表では、1.4MWp)のメガソーラー施設が北九州に完成した。施設の写真などは公開されていないが、これをもって薄膜化合物系太陽電池の雄である、同社が日本に本格的に足跡を記した。

ファーストソーラーがやってくる! 北九州で2014年にCdTe薄膜採用、1.4MWpのメガソーラー建設へ-----ソフトエネルギー、2013/11/26

 そして、この2月には、ファーストソーラー First Solarは、このCdTe化合物系薄膜太陽電池の最高、20.4%の変換効率を達成したと発表しました。コスト面での強さから拡大してきた同社の販売力を、今度はその変換効率が強化する形になると考えられます。結晶系に追いついた、ファーストソーラーがそのコストと性能をひっさげて、この日本でどこまで健闘するのか? 興味のつきないところです。


プレスリリース / First Solar, February 25, 2014
FIRST SOLAR SETS WORLD RECORD FOR CDTE SOLAR CELL EFFICIENCY

" ・20.4 Percent Research Cell Certified at Newport Lab and Confirmed at NREL
 ・Achievement capitalizes on First Solar/GE technology partnership
 ・Performance matches long-standing mSi record

First Solar, Inc. (Nasdaq: FSLR) today announced it has set a world record for cadmium-telluride (CdTe) photovoltaic (PV) solar cell conversion efficiency, achieving 20.4 percent conversion efficiency certified at the Newport Corporation's Technology and Applications Center (TAC) PV Lab and confirmed by the U.S. Department of Energy's National Renewable Energy Laboratory (NREL). The record-setting cell was constructed at the company's Perrysburg, Ohio factory and Research & Development Center.

This certified result bests the previous record of 19.6 percent conversion efficiency set by GE Global Research in 2013. Last April, First Solar and GE announced a solar technology partnership in which First Solar acquired GE's CdTe solar intellectual property and secured a collaborative research partnership with GE's R&D team. The partnership was formed to accelerate innovation in PV technology and accelerate solar module performance at manufacturing scale.
.......... "

関連
First Solar surpasses GE’s CdTe cell efficiency record-----PV-Tech,25 February 2014

追加情報
ファーストソーラー、CdTe カドテル太陽電池のモジュールベースで変換効率17%を達成-----自然エネルギー、2014/03/21


参考エントリー
ファーストソーラーがやってくる! JX日鉱日石エネルギーが販売する契約を締結-----ソフトエネルギー、2013/11/16

2012年の太陽光発電のNo.1 EPC(設計·調達·建設)業者は、ファーストソーラー - IMS Research-----ソフトエネルギー、2013/03/29

ファーストソーラー First Solar、カリフォルニアで 550MWpの大規模太陽光発電所 Topaz Solar Farmの建設中-----ソフトエネルギー、2012/05/10

ファーストソーラー First Solar のリサイクルシステムと同社のCdTe太陽電池の展開。2009年度1GWp越えNo.1の実績-----ソフトエネルギー、2010/06/08

2012 太陽電池メーカーシェア / 自然エネルギーの世界-----自然エネルギー、2013/02/01

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米Stion、タンデムジャンクション方式のCIGS太陽電池で変換効率23.2%を達成

 結晶系に並ぶ性能とより安価なコストを実現している化合物系薄膜太陽電池に新たな企業が加わった。米Stionは、タンデムジャンクション方式のCIGS太陽電池で変換効率23.2%を達成したと発表した。同社は、20×20cmサイズのプロトタイプモジュールにおいて、20.0%以上の効率を、さらに65×165cmの量産モジュールの生産につながる実証モジュールにおいて、20 - 22%の変換効率の実現に目処をつけているということです。

 化合物系薄膜太陽電池といえば、CdTeのファーストソーラー、そしてCIGSの日本のソーラーフロンティアが結晶系に伍し、それをコストで凌駕しつつある。ここにきて、今回のStion社以外にも頭角を現しつつある企業が複数でてきました。
 太陽光発電が化石燃料にコストでならびつつある現在、その動向が注目されます。

 とはいえ、結晶系もこの競争によく生き残っているという気もします。それぞれの、生産、発電の上での性能や性格の差が今後どうなるのか? なかなか面白い状況です。


プレスリリース / Stion, February 27, 2014
Stion Demonstrates 23.2% Efficiency Thin Film With Simply Better™ Tandem Technology

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-----image : 上下(”Stacked Tandem Graphic”)とも同リリースより-----
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"Stion, a leading US-based manufacturer of high efficiency thin-film solar modules, announced that it has produced a 23.2% efficiency thin-film cell based on its proprietary tandem junction technology. Stion has already scaled this technology at or above 20.0% efficiency on a prototype module (20 cm x 20 cm) and expects to soon scale to monolithic modules (65 cm x 165 cm) in the 20-22% efficiency range.

A pioneer in tandem module technology, Stion is the first to demonstrate fully integrated thin film devices at such high conversion efficiencies using scalable commercial processes. Stion will continue to implement the key technical innovations behind the 23.2% cell on its pilot production line in San Jose, CA in preparation for the commercialization of thin-film modules with >20% efficiency.

“Achieving 23.2% cell efficiency and 20% mini-module efficiency on this state-of-the-art technology clearly demonstrates Stion’s commitment to technology differentiation and its deep IP portfolio,” said Howard Lee, Stion’s Chief Technology Officer, Founder and Sr. Vice President of Technology. “Showing initial results of 20%+ is a strong validation of scalability, and our ability to provide Simply Better™ solutions to our customers using this technology. We expect the technology to keep improving with production experience”
.......... "

関連
Stion achieves 23.2% solar PV cell efficiency using tandem CIGS technology-----Solar Server,2014-03-05

参考
・Wikipedia : Multijunction photovoltaic cell

・Twilog : 化合物系

・Twilog : CIGS

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GE、日本の風況に最適な、2.85MW風力発電機2.85-103を発表

 GE(米ゼネラル・エレクトリック)が、日本向けの風力発電システムをひっさげて、日本市場に再上陸。今回リリースされた、2.85MWの風力発電タービン2.85-103は、翼の直径が103mで、日本の風況や地形に合わせた仕様になっているようです。GEの風力発電機のラインナップでは、1.5 MWと2.5 MWのシリーズと4.3MWの洋上風力発電機(4.1-113 Offshore Wind Turbine)があり、今回の日本向けの2.85-103 for Japanは、2.5MWシリーズの派生型となります。

GEは、2010年に伊藤忠と提携、風力、太陽光など自然エネルギー分野で北米、ヨーロッパ以外での展開を模索しています。日本でも展開しようとしましたが、あまり存在感はありませんでした。そして、今回日本向けの風車をひっさげて、日本での本格的な展開に再挑戦します。昨年末には、ながらく係争中だった風力発電の特許巡る訴訟において、三菱重工と和解もしました。今回の同社の展開がどのていど本気モードか気になるところです。是非、成功していい刺激となることに期待しています。
 

プレスリリース / GE, February 26, 2014
GEは日本の風況に最適な、風力発電タービン2.85-103を発表
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-----image : 同リリースより

" ・風力発電に制約が多い日本の独特な地形でも高い出力を確保
・台風等の高風速と日本に多い、高い乱流状況を考慮した設計
・世界で2万2千基設置している信頼されたGEの風力発電タービン技術と経験を最大限活用

 本日、GEは日本向けに定格出力2.85MW、ブレード直径103m、制約の多い地域においても高出力を発揮する風力発電タービン2.85-103を発表しました。この風力発電タービンは日本独特の高い乱流状況にも適応し、台風等の高風速や、落雷にも対策を施し、国内法規を順守するため国際規格IEC基準を超える性能を持ち合わせます。

「私たちGEは今後、日本で風力発電がさらに導入されることを大いに期待しており、日本のために設計された風力発電タービン2.85-103を導入できることを嬉しく思います。このタービンは厳しい風況や乱流状況にも耐えうるように設計され、 今まで難しいといわれてきたサイトにも高収益な風力発電所の建設が可能になるでしょう。」とGEパワー&ウォーターの傘下で、再生可能エネルギー事業部門のアン ・ マッケンティ社長兼CEOは述べています。

2.85-103風力発電タービン1基で日本のおよそ2千世帯に必要な電力を発電することができます。日本向けの2.85-103風力発電タービンは日本各地で発生する雷対策をはじめ、電気事業法や建築基準法にも準拠する設計です。

日本は2005年対比で2020年までに温室効果ガスを3.8%削減するという目標を掲げています。ブルームバーグ・ニューエナジーファイナンスによれば、日本の、水力発電を含む再生可能エネルギー分野は2013年3月末で年間総発電量の9.3%を占めています。
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関連
日本 GE / プレスリリース

・GE : Wind Turbines / 2.85-103 for Japan
275103main
-----image : 上記サイトより
- Catalog : 2.85-100 and 2.85-103 Wind Turbines(PDF)
Ge_wind_renewjapan_2_85mw_power_cur
-----image : 上記PDFカタログより”パワーカーブ”

・Wind Energy Market : GE 2.85-103

GE、風力で日本再参入 日立や東芝と競争激化 高出力の発電機を開発-----日本経済新聞、2014/2/25


参考エントリー
GEの蓄電池付き最新型2.5MW風力発電機の例で考えるグリッドの再エネ受け入れ可能バランスとは?-----ソフトエネルギー、2013/05/09

GEとXtreme Powerが、NaMxバッテリー”Durathonバッテリー Durathon Batteries”を市場展開へ-----ソフトエネルギー、2012/10/18

伊藤忠商事、GEと風力や太陽光発電、バイオマスなど再生可能エネルギー分野で提携。互いのメリットを活かして米、世界展開へ-----ソフトエネルギー、2010/06/22


参考
Visualization of GE's 20,000 Global Wind Turbine Installs

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2030年までに、40%以上を再生可能エネルギーで賄う計画のハワイで、日米スマートグリッドが稼動

 NEDOと日立製作所、みずほ銀行、サイバーディフェンス研究所が共同で取り組んでいる、ハワイ州マウイ島におけるスマートグリット実証事業の実証サイトが、現地時間の12月17日、実証運転を開始しました。これは、2010年に交換された、「日-米、沖縄-ハワイ間でクリーンエネルギー発展と実施のための覚書」にのっとて実施されるもので、プロジェクトは「ハワイ州マウイ島におけるスマートグリッド実証事業(正式名称:Japan U.S. Island Grid Project)」と命名されています。
 ハワイ州は、2030年までに電力需要の40%以上を再生可能エネルギーで賄う計画をもち、再生可能エネルギーの導入が進む中で、問題とその解決に関する先進的な実証実験が行われる予定です。今回のプロジェクトは、2009年11月に日米首脳会議で合意した『日米クリーン・エネルギー技術協力』の一環として行われるもので、この他にはロスアラモス国立研究所 (LANL = Los Alamos National Laboratory)で実施されている日米スマートグリッドプロジェクトが進行中で、蓄電池の分野と分析制御の分野で世界の先進的な役割を果たせる可能性をもつ日本の企業が参加して実施されています。

プレスリリース / 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2013年12月18日
ハワイにおける日米スマートグリッド事業の実証サイトが始動-再生可能エネルギーの効率的利用システムを確立へ

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-----image(”ハワイ州マウイ島におけるスマートグリット事業概要”) : 同リリースより

" NEDOと(株)日立製作所、(株)みずほ銀行、(株)サイバーディフェンス研究所が共同で取り組んでいる、ハワイ州マウイ島におけるスマートグリット実証事業の実証サイトが、12月17日(現地時間)、実証運転を開始しました。
 本実証事業は、日米の政府間合意に基づいて実施されるもので、再生可能エネルギーの効率的な利用や同エネルギー特有の急激な需給変動への対応などを可能とするため、電気自動車(以下、EV)を活用し、島内の電力システムに適するスマートグリッド技術の検証を同日から2015年3月末まで実施。分析・評価結果を基に、マウイ島と同様の環境をもつ島々や亜熱帯地域に対し、低炭素社会を実現するシステムとしてビジネスモデルの構築・展開を図ります。

1. 概要
 米ハワイ州では、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの導入が進んでおり、2030年までに電力需要の40%以上を再生可能エネルギーで賄う計画です。
 こうした再生可能エネルギーの導入が進んでいる環境において、再生可能エネルギーの利用に伴い生じる課題を解決するため、NEDOは2011年より「ハワイ州マウイ島におけるスマートグリッド実証事業(正式名称:Japan U.S. Island Grid Project)※」を開始。日立製作所、みずほ銀行、サイバーディフェンス研究所、ハワイ州、マウイ郡、ハワイ電力、ハワイ大学、米国国立研究所などと共同で実証サイトの構築を進めてきました。
本実証事業においては、EVを活用したスマートグリッドを実現するため、EVエネルギーコントロールセンターを設置するとともに、マウイ島キヘイ地区の配電系統の制御システム(Distribution Management System/以下、DMS)や電力系統における需給バランスを制御し、再生可能エネルギーの効率的な運用を支援するためのエネルギーマネジメントシステム(Energy Management System–Plus /以下、EMS-Plus)を設置しました。また、再生可能エネルギーの変動影響を緩和するため、需要家側の機器を直接制御するダイレクトロードコントロール(Direct Load Control)の実施を進めています。
 これまで、こうしたシステムを利用して頂けるマウイ島のEVユーザーや、電気温水器などの制御実験を行うキヘイ地区の一般需要家などから、ボランティアを募集する取り組みを推進してきました。また、ボランティアのために、EV用急速充電ステーションの設置や、実証サイト全体のシステム安全性を実現すべく米国におけるサイバーセキュリティ基準への適合を進めてきました。
 現在、EVボランティアに関心を示す方が約150台相当、需要家ボランティアに関心を示す方が約40軒相当おります。今後さらなる実証の推進に向け、200台相当のEVボランティアと、40軒相当の需要家ボランティアの協力を頂くべく手続きを進めていく予定です。また、EV用急速充電ステーションは、現在5拠点に20台の充電スタンドを設置していますが、将来的には20拠点に拡大して設置していく予定です。
 本実証サイトでは、マウイ島に設置されている総出力7.2万kWの風力発電システムと電力系統を用いて、IT(情報技術)を活用しながら、配電系統や需要家側負荷の制御、複数タイプの急速充電器を含めたEVの運用・充電制御システムなどの実証を行います。実証サイトの運転は、2015年3月までの予定で、実証試験の分析・評価結果をもとに、今後、ビジネスモデルの検討、議論を進めていきます。

プロジェクト呼称=JUMPSmartMaui

2. 実証事業詳細
 本実証事業は、2009年11月に日米首脳会議で合意した『日米クリーン・エネルギー技術協力』の一環として2010年6月に経済産業省、米エネルギー省、沖縄県、ハワイ州間で交わされた『沖縄・ハワイクリーン・エネルギー協力に関わる覚書』に基づき、NEDOが米国ハワイ州、マウイ郡と基本協定書を締結し実施しているものです。
 再生可能エネルギーの有効利用率の向上を目的とするEVを活用したスマートグリッドの構築を実現するため、EVエネルギーコントロールセンターを設置、キヘイ地区に設置したDMSやマウイ電力の電力系統における需給バランスを制御するEMSと連携させることでEVの統合的なエネルギー管理の実現を目指します。
 EVとEMSの連携により、EVに搭載されているカーナビゲーションやPC、スマートフォンなどを活用したEV充電状況のモニタリングや充電開始時間の自動調整が可能となることから、再生可能エネルギーの余剰電力を効率的にEVへ吸収させる仕組みについて検証します。
 また、再生可能エネルギー比率の増加に伴う出力変動の影響を緩和し、配電系統の安定化を図ることを目的に、DMSによる周波数支援制御*1、蓄電池制御、μ(マイクロ)DMS制御*2および需要家機器を制御するDLCを実施し、これらの機能による配電系統の安定化への効果について検証を行います。
 さらに低圧系統においてμDMSの自律制御によるトランス過負荷防止を目的とした緊急負荷制御、太陽光発電(Photovoltaics)の出力制御と電圧制御を行います。また、上位系統と協調した階層的な制御により、周波数の異常緩和やDLC等の系統全体の最適なエネルギーマネジメントの検証を行います。

*1 周波数支援制御:風力発電など再生可能エネルギーの出力が急激に変動すると、電力系統周波数に変化が表れる。周波数が規定値を逸脱しそうになった時に、DMSは緊急性の低い負荷を遮断したり、バッテリーの充放電量を調整することで、周波数の変動を抑制する。
*2 μDMS:低圧変圧器に設置され、配電系統全体の制御を行うDMSの下層システムとして、DMSと低圧配電系統間の双方向通信機能により、家庭内機器制御を担う。
.......... "


関連エントリー
日-米、沖縄-ハワイ間でクリーンエネルギー発展と実施のための覚書 Clean Islands Partnership を交換-----ソフトエネルギー、2010/07/08

日米スマートグリッドプロジェクト、ロスアラモスで設備が完成し、本格的な実証運転を開始-----ソフトエネルギー、2012/09/24

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日立 Hitachi、北米でワン・コンテナ - 1MWのリチウムイオン蓄電システム CrystEna (TM)を販売

 日立製作所 Hitachi は、北米でコンテナ型の充放電制御部などを組み込んだ、パッケージ型の1MWのリチウムイオン蓄電システム CrystEna (TM)を販売すると発表しました。日立は、再生可能エネルギーの発電割合が日本よりも高く、先進の送電網の整備を急ぐ地域を中心とした市場において、大型蓄電池に関するニーズの拡大が進むことを見越し、まずは北米での展開を選んだようです。2014年より実証実験を開始し、再生可能エネルギーの発電量の増減による変化が送電網に与える影響を最小化し、かつ送電網全体の挙動をもダイナミックに制御する仕組みの中での蓄電池の役割を試すことになります。この分野は、アンシラリー(ancillary : 従属的、補助)サービスと呼ばれています。1MW リチウムイオン蓄電システムパッケージの名称、CrystEna (TM)は、Crystal + Energyからきているそうです。コンパクトなコンテナ型蓄電システム「CrystEna」の詳細は発表になっていないようですが、パッケージ化されているので、北米で評価されれば、全世界での展開が可能です。

" アンシラリーサービス(Ancillary Service)とは、発電設備系統連系において、電力品質(周波数、電圧)を維持するためにおこなう周波数制御などの系統運用サービスのこと。

アンシラリーサービス機能の一例としては、需要変動によって送電系統の周波数が低下した場合には発電出力を増加させ、上昇した場合には反対に抑制するといった出力調整があります "-----リリースより

 報道によれば、「日立製作所は北米でトップシェアを目指す」とのことです。


プレスリリース / Hitachi, December 2, 2013
Hitachi Develops All-in-One Container-type Energy Storage System

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-----image(”Concept of Energy Storage System”) : 同リリースより

" Plans to Begin Demonstration Test on CrystEna*1 Energy Storage System
Incorporating Hitachi Group Technologies in North American Market

Hitachi, Ltd. (TSE: 6501) today announced that it has developed an all-in one, container-type energy storage system as a core energy product for ensuring the stable use of distributed renewable energy such as wind and solar power, while maintaining the power supply-demand balance. This energy storage system fuses Hitachi's electricity grid control technologies built up in the Hitachi Group and Hitachi Chemical Co., Ltd.'s battery-related know-how and will be offered as a packaged system.

In the beginning of 2014, Hitachi plans to begin demonstration test of this energy storage system in North America. Plans call for Hitachi to reflect the results of this testing in a commercial product after verifying the commercial viability and performance of the system in the electricity trading market, or the so-called ancillary market*2 connected with maintaining the electricity supply-demand balance. Furthermore, Hitachi will examine whether to promote the system, to be named "CrystEna" (Crystal+Energy), as one of its solution businessess for expanding the transmission & distribution business in the global market.
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The 1 MW lithium-ion battery energy storage system package announced today utilizes Hitachi Chemical's lithium-ion batteries to raise system performance, such as extended expected battery lifetime, and realize high economic viability. It was developed with an emphasis on maximizing the benefits to be obtained by customers during long-term use. Initially, Hitachi will conduct field trials in the rapidly growing U.S. ancillary market and plans to accumulate know-how from testing battery capacity optimality and durability as well as the control algorithms written to maximize income from power sales.

Having positioned transmission & distribution systems as a core business of the Power Systems Business, Hitachi is endeavoring to expand solutions businesses fusing equipment, control systems, other IT and power electronics technologies. Hitachi is aiming to provide power transmission and distribution solutions for various needs in countries and regions looking to strengthen and enhance their power transmission networks.
.......... "

関連
日立:北米で風力・太陽光エネルギーの蓄電システム販売へ-----ブルームバーグ、12月2日

"日立製作所 は2日、風力・太陽光発電の安定供給を支える蓄電システムを米国で発表した。ユーザーはこのシステムを活用し、カリフォルニア州など規制緩和が進んだ市場で電力を販売することが可能になる。
.......... "

日立が再生エネ発電支援の蓄電システム開発 北米で首位目指す-----MSN産経ニュース、2013.12.3

" 日立製作所は2日、風力や太陽光による再生可能エネルギー発電の安定供給を支える蓄電システムを開発したと発表した。2014年初頭に実証実験を始め、まずは北米向けで同年度中に事業を開始し、世界各地にも広げる方針だ。
.......... "

日立のコンパクトなコンテナ型蓄電システム「CrystEna」、北米で実証試験-----japan.internet.com、2013年12月3日


参考
・新神戸電機 : ニュースリリース(日立グループ) / 2013年07月24日大規模蓄電システム用大容量リチウムイオン電池の生産能力を
4倍以上に増強(PDF)

"サイクル用電池の従来生産能力 月産5,000セルを 2013年3月に12,500セルに増強。 さらに2013年12月に月産22,000セル体制を構築
..........
今後のリチウムイオン電池市場で拡大が期待されるのは、
(1)再生エネルギー導入に伴う電力需給の変動を抑制する大規模蓄電システム(周波数変動抑制、アンシラリーサービス(注6)など)
(2)産業用移動機械の回生エネルギー(港湾クレーン、鉄道、無人搬送車など)
(3)通信機器、携帯基地局向け及びデータセンター向けのバックアップ電源、UPS(無停電電源装置)
..........
注6 アンシラリーサービス
アンシラリーサービス(Ancillary Service)とは、発電設備系統連系において、電力品質(周波数、電圧)を維持するためにおこなう周波数制御などの系統運用サービスのことです。
アンシラリーサービス機能の一例としては、需要変動によって送電系統の周波数が低下した場合には発電出力を増加させ、上昇した場合には反対に抑制するといった出力調整があります
.......... "

コンテナ型データセンターのラインアップを強化 国内向けに可搬型として国内最大級の2モデル、ASEAN向けにISO規格に準拠した1モデルを追加-----日立製作所、日立システムズ、2013年10月24日

"..........
国内市場向けに、公道で運搬できる*1コンテナ型データセンターとしては最大級の新モデル2タイプを追加するとともに、東南アジア諸国連合(以下、ASEAN)市場向けに、ISO(International Organization for Standardization)規格に準拠した可搬型の新モデルを開発し、それぞれ10月25日から販売開始
......... "

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