小田原市で始まる「逆潮流型」地域電力――REXEV、蓄電池を活用した次世代地産地消モデルを開始
-----image : 当該発表、キャプチャー画像
小田原市で始まる「逆潮流型」地域電力――REXEV、蓄電池を活用した次世代地産地消モデルを開始
再生可能エネルギーの普及が進む一方で、日本の電力システムは新しい課題に直面しています。
その一つが、「出力制御」です。
太陽光発電が増えすぎた結果、晴天時には発電量が需要を上回り、せっかく作った電力を止めざるを得ない状況が全国で増えています。
つまり現在の課題は、「発電設備を増やすこと」だけではなく、「どう賢く使うか」に移り始めているのです。
そうした中で、小田原市で始まったREXEVの取り組みは興味深い実験です。
特徴は、太陽光発電と大型蓄電池を組み合わせ、「逆潮流」を前提にしている点です。
従来、家庭や施設の蓄電池は「自家消費」が中心でした。しかし今回のモデルでは、蓄電池から電力系統へ電力を送り返し、市場価格や地域需要に応じて柔軟に充放電を行います。
これは、単なる蓄電池ではなく、「地域全体を小さな発電所のように運営する」方向へ、日本の電力システムが少し動き始めたことを示しているのかもしれません。
プレスリリース概要
REXEVは、神奈川県小田原市において、太陽光発電設備と蓄電池を組み合わせた「逆潮流型」エネルギーマネジメント事業を開始すると発表しました。
本事業は、小田原市が推進する脱炭素先行地域構想の一環であり、東京電力グループ、京セラ、湘南電力などと連携して進められます。
小田原市わんぱくらんどに設置された50kWの太陽光発電設備と、630kW・1,580kWhのBYD製蓄電池を、REXEVの統合制御システムによって運用します。
主な取り組みは3つです。
第一に、AEMS(エリアエネルギーマネジメントシステム)と連携し、地域内で発生する再エネ発電量の誤差(インバランス)を吸収・調整すること。
第二に、蓄電池を活用して需給調整市場へ参入し、新たな収益化モデルを構築すること。
第三に、市場価格に応じた充放電制御を行い、余剰太陽光を蓄電し、価格が高い時間帯に放電して、湘南電力を通じて地域へ供給することです。
本事業の特徴は、蓄電池から系統側へ電力を送り返す「逆潮流」を前提としている点です。
REXEVによれば、こうした市場連携型の逆潮流モデルは全国的にもまだ珍しく、再エネ地産地消を最大限活用するモデルになるとしています。
今後は、小田原市での検証を踏まえ、全国自治体や企業向けへ展開を広げる方針です。
プレスリリース / REXEV、2026年5月11日
・小田原市で太陽光併設蓄電池の「逆潮流」を活用した電力地産地消の事業を開始
コメント
今回の小田原モデルで重要なのは、「蓄電池の役割」が変わり始めていることです。
従来、蓄電池は「停電対策」や「自家消費拡大」が中心でした。しかし現在は、電力市場、需給調整、地域マネジメントへ直接関与する存在になり始めています。
つまり蓄電池は、単なるバックアップ装置ではなく、「地域電力を調整する知能付きインフラ」へ変化しているわけです。
特に面白いのは、「逆潮流」を積極的に活用している点でしょう。
これまで日本の制度設計では、系統へ戻す電力より、「施設内で消費すること」が重視される傾向がありました。しかし再エネ比率が高まるほど、地域全体で柔軟に融通する仕組みが必要になります。
その意味で、小田原の取り組みは、「地域を一つの小さな電力市場として運営する実験」とも言えます。
また、この種の分散型エネルギーシステムは、災害対応や地域レジリエンス向上とも相性が良い。
おそらく今後の電力システムは、「巨大集中発電所」だけではなく、「小さな蓄電池群」「地域制御」「柔軟な市場連携」が組み合わさる方向へ進んでいくのでしょう。
小田原モデルは、その小さな先行事例の一つとして注目されます。
関連
参考
需給調整市場とは何か
一次調整力と蓄電池の役割
この電力のバランスを保つために必要な力を「調整力」と呼びます。そして、その調整力を市場で調達する仕組みが「需給調整市場」です。
市場では、発電所、蓄電池、需要家側の設備などが、必要に応じて出力を上げたり、下げたり、電気の使用を調整したりする能力を提供します。
この市場は2021年4月に開設され、段階的に対象商品が増やされてきました。2024年度には、一次調整力、二次調整力、三次調整力など、主要な商品区分で取引が始まっています。
需給調整市場の商品は、応答の速さや継続時間によって分けられています。主な区分は、一次調整力、二次調整力①、二次調整力②、三次調整力①、三次調整力②です。
大まかに言えば、一次調整力はもっとも速く反応する調整力で、三次調整力は比較的ゆっくりした需給調整に使われます。
需給調整市場で得られる報酬には、大きく分けて二つあります。
ひとつは「ΔkW価値」です。これは、いざという時に出力調整できる能力を待機させておくことへの報酬です。実際に電気を出したかどうかではなく、「調整できる状態で待っていること」に価値があります。
もうひとつは「kWh価値」です。これは、実際に指令を受けて発電したり、放電したり、需要を調整したりした電力量に対する報酬です。
特徴は、送配電事業者からの細かい指令を待つのではなく、設備側が周波数の変化を自ら検知して、自動的に出力を調整する点です。これを「自端制御」または「ガバナフリー制御」と呼びます。
一次調整力には、10秒以内に応答し、5分以上継続することが求められます。つまり、非常に短い時間で反応できる能力が必要です。
そのため、系統用蓄電池事業では、一次調整力が重要な収益源のひとつとして期待されています。
このため、蓄電池の充電率、つまりSOCの変動が比較的小さく、卸電力市場など他の市場取引と組み合わせやすいと考えられています。とはいえ、系統異常や長時間の偏った周波数変動があれば、SOCは大きく変化する可能性があります。
その中で一次調整力は、高速応答という蓄電池の特性を生かしやすい分野です。比較的高単価になりやすい商品区分とされますが、価格は市場の需給や入札状況によって変動します。
したがって、一次調整力は有望ではあるものの、それだけで事業採算が安定するとは限りません。実際には、複数の市場を組み合わせた運用設計が重要になります。
電気の需要と供給のバランスを保つために必要な調整力を、一般送配電事業者が市場から調達する仕組みです。
電力の不足や余りに対応するため、発電量や電力使用量をすばやく変える能力のことです。
周波数の乱れに対して、最も速く反応する調整力です。10秒以内の応答と5分以上の継続が求められます。
日本の電力系統では、東日本は50Hz、西日本は60Hzを基準にしています。需要と供給のバランスが崩れると、この周波数が乱れます。
Frequency Containment Reserveの略です。周波数の変動を抑えるための一次調整力を指します。
中央からの指令を待たず、設備自身が周波数の変化を検知して自動的に出力を調整する仕組みです。
発電設備などが周波数変動に応じて自動的に出力を変える制御方式です。一次調整力の基本的な考え方です。
実際に電気を出す前の段階で、調整できる能力を待機させておくことへの価値です。スタンバイ報酬と考えるとわかりやすいです。
実際に発電・放電・需要調整を行った電力量に対する価値です。
State of Chargeの略で、蓄電池の充電率を意味します。電池にどれくらい電気が残っているかを示します。
その中でも一次調整力は、周波数の乱れに瞬時に対応する重要な役割を担います。高速で出力を調整できる蓄電池は、この分野と相性がよく、今後の分散型エネルギーシステムを支える有力な技術のひとつです。
ただし、一次調整力は万能の収益源ではありません。卸電力市場、容量市場、需給調整市場などをどう組み合わせるかが、系統用蓄電池ビジネスの実際の成否を左右していくことになります。
しなやかな技術研究会 Alternative Technology Research Group for the world of resilient communities /GreenPostの視点から言えば、現在の課題は、「発電設備を増やすこと」だけではなく、「どう賢く使うか」に移り始めていることです。世界中でも様々な取り組みがあるようなので、今後取り上げて行きたいテーマです。
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