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農研機構、耕作放棄地の放牧の省力化を可能にする独立系太陽光発電システムを開発

 農業についてのさまざまな研究を行っている、農研機構(農業・生物系特定産業技術研究機構)は、耕作放棄地等で放牧において、省力化を推進する太陽光発電を利用した、電気牧柵と直流ポンプを利用した自動家畜飲水供給システムを開発し、その詳細を公開しました。
 耕作放棄地等の放牧では家畜の飲水確保が絶対条件とのことで、この技術を利用することで、放牧現場では、家畜の飲水供給を自動化でき省力化が可能ということです。放牧管理に有効な電気牧柵は、蓄電池を備えた既製品システムを利用し、これにバッテリーを備えた独立系のポンプシステムを組み合わせることで、放牧の現場の要求に応えるシステムとなっています。
 ポンプシステムは、直流ポンプ、太陽電池、充放電コントローラ、蓄電池、水位制御のためのフロートスイッチ、ポンプのON-OFF制御のためのポンプコントローラで構成されています。詳細なマニュアルが公開されていて、そのマニュアルに紹介されているシステムでは、太陽電池は20-30Wp、蓄電池容量は36-82Wh、そして直流ダイヤフラムポンプ(DC12V-Max.10A)を利用して、おおよその性能としては、「100m離れた高さ20mの場所に1時間あたり約400リットルの水を送ることができます。夏場の放牧牛の飲水量を45(L/日/頭)とすれば、放牧頭数4頭の放牧地では1日わずか30分間のポンプ稼働により、家畜の必要水量が供給できます。」とリリースで紹介されています。
 マニュアルによれば、非常に安価にシステムが組めることから、あちこちの放牧地で利用されるようになりそうです。


プレスリリース / 農研機構(農業・生物系特定産業技術研究機構)、2015年2月25日
太陽光発電を活用した放牧家畜飲水の自動供給システム

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-----image : 上下とも同リリースより-----
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" 耕作放棄地等での放牧推進に貢献
ポイント
・既存の太陽光電気牧柵1)システムに揚水ポンプ2)システムを組み合わせた新たな家畜飲水供給システムを開発しました。棄地等での放牧推進に貢献
・本システムの導入に伴う既存の電気牧柵器電圧などへの影響はなく、家畜への必要水量が安定かつ自動で供給できます。
・開発した技術は、電気牧柵システムなどと同様に、耕作放棄地3)等での放牧推進における重要な技術として、今後広く活用されることが期待されます。

概要
 農研機構は、耕作放棄地等の放牧において、既存の太陽光電気牧柵システムに直流電源で駆動する揚水ポンプシステムを組み合わせた新たな家畜飲水供給システムを開発しました。耕作放棄地等の放牧では家畜の飲水確保が絶対条件の一つです。しかし、耕作放棄地等の放牧において近くに水源がない場合は、頻繁に水を運搬・供給する必要があります。水源がある場合でも、水源が放牧地より低い位置にあるときは人力か動力ポンプなどで水を汲み上げる必要があり、放牧現場では、家畜の飲水供給に多大な労力と時間を要してきました。

 本方法は、放牧地の多くに導入されている太陽光発電を利用した電気牧柵システムに揚水ポンプシステムを組み合わせることで、家畜に必要な量の飲水が自動で供給され、家畜飲水管理の省力・軽労化が実現できます。

 本システムは、電気牧柵システムなどと同様に、耕作放棄地等での放牧推進に大きく貢献します。

予算:
・運営費交付金
・攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)
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詳細情報
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研究の内容・意義
1.本システムは、耕作放棄地などの放牧現場において、直流電源で駆動する揚水ポンプシステムを導入し、自動的に家畜の飲水を供給するものです(図1)。本システムは、直流ポンプ、発電・蓄電制御のための充放電コントローラ、飲水槽などの水位制御のためのフロートスイッチ、ポンプのON-OFF制御のためのポンプコントローラで構成されており、耕作放棄地放牧などで一般的に導入されている太陽光電気牧柵と組み合わせて利用します(図2)。

2.本システムに用いた揚水ポンプはダイヤフラム式の直流ポンプであり、100m離れた高さ20mの場所に1時間あたり約400リットルの水を送ることができます。夏場の放牧牛の飲水量を45(L/日/頭)とすれば、放牧頭数4頭の放牧地では1日わずか30分間のポンプ稼働により、家畜の必要水量が供給できます。

3.放牧牛の飲水に必要な量の水が安定的に供給され、飲水不足による体重の低下もありません。また、本システムと電気牧柵システムの併用による電気牧柵器の電圧低下などの影響もなく、放牧牛の管理に十分な電圧が維持されます(図3)。

4.傾斜地等に複数の牧区が隣接しているような場合は、1台のシステムがあれば、最も高い位置に揚水し、高低差を利用して低部の牧区に飲水を供給することができます。また、いくつかの牧区で家畜を移動させて放牧を行う場合は、システム一式を移動して利用することも可能です。

5.本システムの導入コスト(飲水器、配管資材、電気牧柵システム、バッテリーに掛かる経費を除く)は、約6万円(2014年10月時点の価格)です。

今後の予定・期待
 本方法は、耕作放棄地等での放牧の推進に当たっての重要な技術の一つであり、電気牧柵システムなどと同様の基本要件のシステムとして、広く活用されることが期待されます。今後は、放牧技術を普及する者等を対象としてシステムの導入法などに関する講習会を開催し、技術の普及を図っていく予定です。なお、機器の接続、給・排水系統の概要、電力設計等を説明した「耕作放棄地放牧等における省力的家畜飲水供給システム導入マニュアル」を畜産草地研究所のホームページの以下のサイトからダウンロードできます。

http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/pamphlet/tech-pamph/055278.html

用語の解説

1) 電気牧柵
電線とそれを支える柱、高圧のパルス電流発生器等からなる防護柵の一種で、これに触れた時の電気ショックにより家畜が放牧地からの脱出することを防ぐ器材です。逆に野生動物の田畑などの農地への侵入防止にも広く用いられています。電源はバッテリーや家庭用交流電源ですが、商用電源から遠い耕作放棄地等の多くは、太陽光発電とバッテリーを組み合わせています。

2) 揚水ポンプ(ダイヤフラム式)
ダイヤフラムは膜という意味を持ち、ゴム、樹脂、金属などを素材とした膜の往復運動と逆止弁を組み合わせて、水を低い位置から高い位置へ汲み上げるポンプのことをいいます。小型ですが、比較的省エネ型で高い送水能力と耐久性があります。

3) 耕作放棄地
農林業センサス上の統計用語で「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」を指します。全国でおよそ40万ha程あり、滋賀県の面積にも匹敵します。食料生産や農地保全の視点からもその縮小や解消が急務といえます。
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関連
・農研機構(農業・生物系特定産業技術研究機構) : 畜産草地研究所 / 耕作放棄地放牧等における省力的家畜飲水供給システム導入マニュアル(Ver.1.1)
Wsgmanual11
-----image : 上記サイトより

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発行年月日
: 2014年11月28日
概要
: 本書は、畜産草地研究所が開発した「耕作放棄地等の放牧における太陽光発電を活用した家畜飲水自動供給技術」の現地導入マニュアルです。システム構成機器やその接続法、機器の維持管理、システムの導入事例などを解説しています。また、「システム設計シート」により、導入に必要なソーラーパネルの電力量やバッテリー容量などが計算できます。

ファイルダウンロード
耕作放棄地放牧等における省力的家畜飲水供給システム導入マニュアル(Ver.1.1)[PDF:2.1MB]
家畜飲水システム設計シート[XLSX:40.5KB]
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