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大成建設、稲わらからバイオエタノールを製造技術を開発。製造コスト 70.7円/L

 大成建設は、平成20年7月から5年間サッポロビールと共同で進めてきた、農林水産省補助事業「ソフトセルロース利活用技術確立事業」を継続し、稲わらを材料にした高効率バイオエタノール製造技術を開発しました。今回開発された技術では、稲わらに含まれるセルロースとデンプンから同時にエタノールを製造することで、効率を追求、石油代替の燃料として評価できる数値を実現しました。
 リリースによると、バイオエタノールが石油代替の燃料となり得るための目標値である製造コストは、100円/L以下であり、今回開発された技術では、70.7円/Lを実現したということです。

 とはいえ、稲わら。バイオ燃料の材料としての将来性はどのくらいあるのでしょうか? そのあたり、これから調べるつもりですが、基本的な見方について、コメント続きのほうに、メモを書きました。


プレスリリース / 大成建設、2014年5月30日
稲わらを材料にした高効率バイオエタノール製造技術の開発

Taoseo_biofuel_from_straw
-----image : 同リリースより

" 大成建設株式会社(略)は、稲わらに含まれるセルロースとデンプンから同時にエタノールを製造することで、コスト低減およびCO2削減を可能とした新しい技術を開発しました。
 当社は、サッポロビール株式会社(略)と共同で、平成20年7月から5か年にわたり農林水産省補助事業「ソフトセルロース利活用技術確立事業」を実施、その後もバイオエタノールが石油代替の燃料となり得るための自主研究を継続した結果、今回の技術を確立したものです。

 地球温暖化防止対策のCO2排出量削減を目的とした再生可能エネルギーであるバイオエタノールは、主に米国やブラジルでトウモロコシや砂糖キビなどを原料に製造されていましたが、現在では食糧問題と相まって、食糧と競合しないセルロース系バイオマス(注1)からの製造が注目されており、当社では稲わらを原料に、研究を進めてきました。
 稲わらに含まれる成分のセルロースやデンプンは、糖化・発酵させることでエタノールを製造できます。糖化には複数の方法がありますが、少ないエネルギー投入量で糖化できるものとして酵素糖化があります。ただし、この酵素糖化を効率的に行うためにはそれぞれの成分に応じた前処理が必要です。(注2)

 今回当社は、稲わら中に含まれるセルロースからエタノールを製造するための前処理として開発した「アルカリ処理」(注3)が、同じく稲わらに含まれるデンプンにも作用し、デンプンからエタノールを製造するための処理として有効に利用できることを見出しました。
 この作用を活用し、セルロースからエタノールを製造する工程に、デンプンからエタノールを製造する工程を組み合わせ、稲わらを原料としてセルロースとデンプンから同時にエタノールを製造する高効率な技術を開発しました。

 本技術により原料の稲わら単位重量当たりのエタノール製造効率を高めた結果、エタノール製造コストは70.7円/L、CO2排出量削減率も52%を実現しました。(注4)この値はバイオエタノールが石油代替の燃料となり得るための目標値である製造コスト100円/L以下、CO2排出量削減率50%以上という基準を満たしています。

 本研究の成果を基に、未利用バイオマスである稲わらをバイオエタノールの原料として利用することで、温暖化ガス排出量の削減のみならず、再生可能な国産エネルギーとして大いに貢献が見込まれます

.......... 
(注1) セルロース系バイオマスとは樹木や草本類等の葉や茎、幹を示し、バイオエタノールの原料には本事業で検討した稲わらの他に廃木材やコーンストーバなどが使われている。
   
(注2) 稲わらにはセルロース以外にもエタノールの原料とできるデンプンが含まれているが、デンプンをエタノールの原料となる糖に変換するには通常セルロースとは別のプロセスが必要である。デンプン糖化酵素であるアミラーゼによって糖化するためには、加熱等による糊化という前処理が必要である。
   
(注3) アルカリ処理は、セルロース系バイオマスの酵素糖化を促進するための前処理方法であり、低コストで省エネルギーな手法である。当社では、このアルカリ処理を組み込んだ稲わらからのエタノール製造技術を開発し、農林水産省「ソフトセルロース利活用技術確立事業」において当該開発技術を組み込んだ実証プラントをサッポロビール北海道工場の敷地内に建設した。なお、当該事業の製造システムではセルロースをエタノール原料としており、デンプンは利用していない。
   
(注4) 「ソフトセルロース利活用技術確立事業」では、サッポロビールと共同で稲わらからのエタノール製造の高効率化を検討し、原料の収集運搬実験とエタノール製造実験の結果を元に、北海道における稲わらからのエタノール製造工場のケーススタディを行った。エタノール製造規模を1万KL/年とした工場において、工場で使用するエネルギーは地域で発生する廃棄物の焼却熱から得るものとし、製造設備の減価償却費をコストに見込まない場合、エタノール製造コスト85.2円/L、CO2排出量削減率45%という結果を得た。
 上記エタノール製造システムに今回開発したデンプンのエタノール化プロセスを付与することで、「ソフトセルロース利活用技術確立事業」と同条件のケースにて試算した結果、エタノール製造コストは70.7円/L、CO2排出量削減率は52%となった。
.......... "


参考エントリー
農林水産省、バイオ燃料生産拠点確立事業(北海道、新潟)3案件、平成26年度限りで廃止-----ソフトエネルギー、2014/07/10


コメント続き

 稲わらからバイオ燃料をという話は、古くはホンダ、比較的最近は川崎重工があり、川崎重工の場合、「商業規模となれば、1リットルあたり40円の製造コストを実現」することができる技術として確立可能ということだったと思います。しかし、非食物系のバイオマス資源としての稲わらは、そもそも、稲わらとは、古くから有効な農業資材として、肥料や飼料として活用されてきたという指摘があり、食物とは非競合のバイオマス資源にはあたらないという指摘がありまた。とはいえ、肥料にも飼料にも利用されない稲わらも大量にあり、その有効活用としてのバイオ燃料の有効性を評価する話もありました。
 ここで、話を整理するために、現在の利用の方法と量について調べてみたいと思いましたが、飼料としての稲わらについて、福島第一原子力発電所の苛酷事故の影響による核汚染された稲わら、不足する飼料のために、海外から輸入される稲わらなどというデーターに行き当たってしまい、調べる頭から右往左往しています。

 ちょっと、調べるには時間がかかりそうです。ただ、稲わらは未利用なバイオマス資源などではなく、伝統的な農業資材であるという話だけは、初めから押さえておく必要があります。

 まず今回は、基礎的な量について、農林水産省の資料から数字を拾っておきます。

”1 稲わらの需給状況 ・ 平成15年度の飼料用稲わらの総供給量は、119万 でtあり、このうち、国内産稲わらは8.5割、輸入稲わらは1.5割。 ・ 国産稲わらは約871万 生産されているが t 、この利用状況をみると、飼料用は約1割にとどまっており、約8割の稲わらはすき込み・焼却等。 ・ 我が国における口蹄疫の発生に伴い、口蹄疫の侵入防止措置に万全を期するため、口蹄疫の清浄地域以外の地域から輸入される稲わら等について検疫強化がなされたこと等から、輸入稲わらへの依存から国産稲わらへの転換が喫緊の課題。 ・ このため、耕種と畜産との連携、農協等を中心とした組織的な取組等により、国産稲わらの飼料利用を促進することが重要。 H15_inawara-----image : 「飼料用稲わらの需給状況(平成15年出来秋分)、国産稲わらの用途別利用状況(平成15年出来秋分)」

国産稲わらの利用が減少してきた理由
・コンバインの普及により稲わらが裁断され、飼料用に利用できなくなたこと
・稲作農家の兼業化や高齢者により、労力面で稲わらを収集することが、困難となってきたこと
・畜産の立地と稲作の立地が乖離し、畜産農家が稲わらを集めることが困難となるとともに、輸送費がかさむようになったこと
・畜産の経営規模が拡大し、稲わらを集める労力が不足してきたこと
.......... ”-----以上「農林水産省 : 稲わらをめぐる状況 平成17年9月」より


[ www.maff.go.jp/j/chikusan/souti/lin
/l_siryo/koudo/h170906/pdf/ref_data01.pdf ]


参考
稲わら等の利用に関する全国調査について-----農林水産省、平成23年7月28日(農林水産省サイト内検索 : 稲わら

・Wikipedia :

・農林水産省 : わら 、飼料用の乾草の輸入検査手続


参考エントリー
川崎重工、非食用バイオマスの稲わらから低コストなバイオエタノール製造技術を確立-----ソフトエネルギー、2013/05/31

".....商業規模で1リットルあたり40円の製造コストを実現するバイオエタノールの製造技術を確立....."

川崎重工、稲わらから熱水式バイオエタノール製造技術によりバイオエタノールを製造。秋田県潟上市-----ソフトエネルギー、2010/10/21

稲わらから燃料! - セルロース系のバイオエタノールがまもなく実用化 ------しなやかな技術研究会β、2006-09-15

RITEとHonda、セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発 / プレスリリース HONDA-----ソフトエネルギー、2006/09/19




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