日立製作所、再生可能エネルギー大量導入時代を拓く低コストで拡張性に優れた系統電圧安定化技術を開発
世界では高度な天候の予測と需給調整により、電力に占める再生可能エネルギーの割合が3割以上となる状況でも、問題なく安定的な電力系統網を維持できるとする意見がある一方で、日本や再生可能エネルギーが2割を超える状況が現実のものとなったドイツやスペインでは、再生可能エネルギー導入で課題となる系統電圧の安定化技術の開発が急がれています。再生可能エネルギーの占める割合が数パーセントのわが国では気が早い気もしますが、日本人が電力に期待する複合的かつ総合的な機能を考えると、いたしかたないのかもしれません。
さて、この課題、再生可能エネルギー導入で課題となる系統電圧の安定化技術において、問題解決に向けた取り組みが行われています。
今回は、日立製作所が再生可能エネルギー大量導入時代を拓く低コストで拡張性に優れた系統電圧安定化技術を開発したと発表しました。
この技術は、既存の配電系統上にある自動電圧調整器(SVR)や静止型無効電力補償装置(SVC)などの各機器の電圧・電流を、系統内通信ネットワークを用いて計測し、それに基づき系統全体の電圧を推定し、予め設定した目標値との偏差を解消するように各機器の電圧を分散的に制御する技術です。試算によると、住宅1000戸のうち40%が太陽光発電を導入した配電系統を想定して、SVCを2台用いた場合、系統電圧が規定電圧を逸脱する頻度を3%に低減させる効果が得られたとのことです。
本技術により、配電系統におけるエリアごとの再生可能エネルギーの導入状況に合わせた段階的な設備投資が可能となり、電圧調整機器を集中的に制御するよりも安価なコストで系統電圧の安定化が実現出来るとのことです。
日立では今後、国内外の実証実験による効果の検証をされに進め、技術の確立を目指すということです。
プレスリリース / 日立製作所、2013年3月18日
・スマートグリッドの普及に貢献する拡張性に優れた系統電圧安定化技術を開発
" 既存の通信ネットワークで繋がれた機器の情報から系統全体の電圧を推定し安定的に制御株式会社日立製作所(略)は、このたび、再生可能エネルギーの導入に際して世界的な課題となっている系統電圧の安定化、ならびに新興国における電力系統の安定運用を目的として、低コストで拡張性に優れた系統電圧安定化技術を開発しました。
本技術は、既存の配電系統上にある自動電圧調整器(SVR)や静止型無効電力補償装置(SVC)などの各機器の電圧・電流を、系統内通信ネットワークを用いて計測し、それに基づき系統全体の電圧を推定し、予め設定した目標値との偏差を解消するように各機器の電圧を分散的に制御する技術です。試算によると、住宅1000戸のうち40%が太陽光発電を導入した配電系統を想定して、SVCを2台用いた場合、系統電圧が規定電圧を逸脱する頻度を3%に低減させる効果が得られました。日立では今後、国内外の実証実験による効果の検証を進めます。既存の配電系統では、SVRやSVCなどの電圧調整機器を個別に制御して、電圧を規定範囲内に維持しています。一方、配電系統に太陽光や風力等の再生可能エネルギーが大量に導入されると、天候により発電量が大きく変動し、規定電圧の逸脱が想定されます。こうした規定電圧の逸脱を防ぐ手段のひとつとして、系統全体に整備した通信ネットワークによる電圧調整機器の集中的な制御が検討されていますが、通信設備をはじめとする設備投資コストが実用化の課題となっています。
今回、日立は、計測した各機器の電圧・電流から系統全体の電圧を推定する機能(状態推定機能)と、他の機器の動作を推定して電圧調整量を最適配分する機能(推定制御機能)から構成される、大域推定分散制御技術を開発しました。本技術により、配電系統におけるエリアごとの再生可能エネルギーの導入状況に合わせた段階的な設備投資が可能となり、電圧調整機器を集中的に制御するよりも安価なコストで系統電圧の安定化が実現出来ます。
開発した大域推定分散制御技術の特長は以下の通りです。
(1) 状態推定機能
配電系統の電圧と電流の関係を表す電力方程式を、部分的な計測値と連立させて解くことで、系統全体の電圧と電流を推定して補完する機能です。本機能を分散コントローラごとに備えることで、各分散コントローラにおける系統電圧の把握と、制御への活用が可能になります。
(2) 推定制御機能
補完された系統電圧に対する他の電圧調整機器の動作推定に基づき、系統全体の電圧偏差を解消するように電圧調整量を最適配分する機能です。通信ネットワークの制約から分散コントローラ間で制御情報が共有できなくても、本機能を分散コントローラごとに備えることで、各分散コントローラが協調して電圧調整機器を制御し、電力需給の変化や電力流通設備の段階的整備に応じて系統電圧を安定化します。
なお、この成果を、3月20日から名古屋大学で開催される電気学会全国大会において発表します。
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関連
・日立製作所 : 実証事例【ハワイ】日米共同の島嶼域スマートグリッド実証事業
"2030年、島の発電量の40%を再生可能エネルギーに"
-----image : 上記サイトより
コメント続き
日本で再生可能エネルギーの割合が数割となると、必ずでてくるのが蓄電池です。しかし、必ずしも蓄電池に登場してもらわなくとも、問題を解決できる可能性については、海外では実現可能とみる、見方、研究が複数あります。
今後もそのあたりの情報を集めていきたいと思います。
参考
・日本電気工業会 : 風力発電システムの標準化・認証活動
"IEA Wind Task25 (風力発電が大量に導入された電力系統の設計と運用)
・第1期(2006~2008年) 最終報告書 2009年発行 日本語版"
・米国立再生可能エネルギー研究所 National Renewable Energy Laboratory、電力網は従来の研究よりも不安定化の恐れなく大量の再生可能エネルギーを受け入れることができるという研究成果を発表-----ソフトエネルギー、2010/07/09
おすすめエントリー
・週刊GreenPost 65号 2013/3/18- 日版 しなやかな技術研究会
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