理化学研究所とダ・ヴィンチ、フレネル・サン・ハウスとロータリー熱エンジンを組み合わせた「熱電併給システム」を開発
理化学研究所とダ・ビンチ社は、朝日から夕陽まで、太陽光の光熱エネルギーをフレネルレンズで効率良く回収し、蓄熱タンクに貯めた水を加温、必要に応じてこの熱を取り出して発電と給湯ができる「熱電併給システム」を考案したと発表しました。
同心円状に刻んだ溝で効率良く集光できるパネル型のフレネルレンズを立方体状に組み合わせたフレネル・サン・ハウスは、全方向の太陽光熱を回収可能な設計になっていて、立方体、つまりフレネル・サン・ハウスの内部にはアルミ合金でできた逆T字型の熱交換器が置かれています。熱交換器は、集光した光を熱エネルギーに変換します。熱交換器の下には水を満たした蓄熱タンクが設けられています。
そして、蓄熱タンクからの温水が持つ熱エネルギーは、奈良県大和高田のダ・ビンチ社が開発した「ロータリー熱エンジン」に供給され発電します。ポイントは、このしくみにより、40℃の低温熱源まで循環利用しロータリー熱エンジンで発電できる点です。
「低温度域で有効なランキン・サイクルと低い圧力で効率的に動作する新型エンジンを搭載したロータリー熱エンジンを発電機と組み合わせることによって、 低温度域(40~200℃)の廃熱や太陽熱を高効率に回収して電力へと変換することが可能になります。」(ダ・ビンチ社の関連サイトより)
ロータリー熱エンジンは、次の①~③の工程を繰り返す、ランキン・サイクルと呼ばれるしくみを利用しています。
①蒸発器内の作動流体を加熱して蒸気を生成する、②その蒸気を動力源としてエネルギーを回収する、③蒸気を凝縮器で冷却して液化しポンプで蒸発器に戻す
このシステムは、太陽光という変動の大きいエネルギーをいったん水に蓄熱することで安定的に保存し、必要な時にいつでも使えるように工夫されているということです。地方自治体などと連携し、遊休地を利用した中小規模の分散電源として活用を図っていく計画で、2013年中に出力1kW(キロワット)の試作機を、2014年には10kWの実証システムの実現を目指すということです。
プレスリリース / 理化学研究所、平成25年1月10日
・太陽光の熱を朝日から夕陽まで回収し効率よく発電----- 60秒でわかるプレスリリース:太陽光の熱を朝日から夕陽まで回収し効率よく発電版
-----image(”図1 フレネル・サン・ハウスとロータリー熱エンジン”) : 同リリースより
[(図の解説)
右:フレネル・サン・ハウス。①同心円状に刻んだ溝により効率よく集光できる フレネルレンズ②集光した光を熱エネルギーに変換する逆T字型の熱交換機③ 蓄熱タンク、という3つの要素で構成したフレネル集熱ユニット。
左:フレネル・サン・ハウスが供給する温水を利用して発電するロータリー熱エンジン。①蒸発器内の作動流体を加熱して蒸気を生成する、②その蒸気を動力源としてエネルギーを回収する、③蒸気を凝縮器で冷却して液化しポンプで蒸発器に戻す、①~③の工程を繰り返す。このサイクルはランキン・サイクルと呼ばれ、カリーナ・サイクルやバイナリー発電もランキン・サイクルの1種である。
下:フレネル・サン・ハウスの形状モデル。]
"熱電併給システムを考案、2013年夏に試作機で検証◇ポイント◇
フレネルレンズを立体的に組み合わせ、全方向の太陽光熱を回収可能に
40℃の低温熱源まで循環利用し、ロータリー熱エンジンで発電
2013年夏に1kW、2014年には10kW出力の実地試験を目指す理化学研究所(略)と株式会社ダ・ビンチ(略)は、朝日から夕陽まで、太陽光の光熱エネルギーをフレネルレンズ※1で効率良く回収し、蓄熱タンクに貯めた水を加温、必要に応じてこの熱を取り出して発電と給湯ができる「熱電併給システム」を考案しました。これは、理研と企業が一体となって研究を進める「産業界との融合的連携研究プログラム※2」にもとづき、2012年4月に理研社会知創成事業イノベーション推進センター(土肥義治センター長)内に発足した、光熱エネルギー電力化研究チームの東謙治チームリーダー(株式会社ダ・ビンチ社長)、大森整副チームリーダーらの成果です。
太陽光を利用して発電する代表的なシステムにソーラーパネルがあります。その光電変換効率は20%前後ですが、天候によって発電量が左右される、蓄電装置のコストが高い、廃棄するときパネル材料に含まれる重金属を分離する技術が未確立、などの課題があります。
研究チームは、効率良くエネルギーを蓄えるため、太陽光に由来する熱エネルギー(光熱エネルギー)に着目し、熱交換器経由で水を温めて蓄熱、その熱エネルギーを必要なときに取り出して発電や給湯できる効率的な熱電併給システムを考案しました。具体的には、朝日から夕陽までどの角度からの太陽光も光熱エネルギーとして回収できるように、同心円状に刻んだ溝で効率良く集光できるパネル型のフレネルレンズを立方体状に組み合わせました。立方体内部にはアルミ合金でできた逆T字型の熱交換器を置き、水平から垂直方向のどの方向からの光熱エネルギーも逃さない構造としました。熱交換器の下には水を満たした蓄熱タンクを設け、温水が持つ熱エネルギーをダ・ビンチ社(奈良県大和高田市)が開発した「ロータリー熱エンジン」に供給し発電するシステムです。
このシステムは、高額な太陽光追尾装置や駆動部が不要です。また、太陽光という変動の大きい光熱エネルギーをいったん水に蓄熱することで安定的に保存し、必要な時にいつでも使えるようにしました。地方自治体などと連携し、遊休地を利用した中小規模の分散電源として活用を図っていく計画で、2013年中に出力1kW(キロワット)の試作機を、2014年には10kWの実証システムの完成を目指しています。再生可能エネルギーの新しい可能性をひらく技術として期待できます。
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-----image(”図2 ロータリー熱エンジン10kwシステム(縦67cm、横121cm、高さ211cm)”) : 同リリースより
[(図の解説)
ランキン・サイクル・システムのエンジンに外燃式のバンケル型エンジンを搭載したシステム。ダ・ビンチ社が開発したシステムで、40℃という低温熱源でも熱仕事効率が良いのが特徴。フレネル・サン・ハウスと組み合わせることで、太陽光熱を回収して、電力と湯を供給する効率の良い太陽光熱コージェネレーションシステムとなる。]
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関連
・ダ・ビンチ / ロータリー熱エンジン (RHE)
初出
・週刊GreenPost 55号 年末・年始特別版 しなやかな技術研究会 p.2
コメント続き
昔からスターリングエンジンなどの熱利用の発電システムへ関心の高い一部マニアと言われるような知人が何人かいて、海外でスターリングディッシュなどの太陽熱発電機が開発されるたびに、日本でもどこかが開発してほしいと願っていました。今回のダ・ビンチ社のシステム、彼らの御眼鏡にかなうのか、今度聞いてみたいと思います。
おすすめエントリー
・週刊GreenPost 57号 2013/1/21-25日版 しなやかな技術研究会
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