岡山大学、巨大な円筒の倒立振り子の流力振動で発電する新方式の海洋エネルギーを開発中
岡山大学の大学院環境生命科学研究科の比江島 慎二 准教授は三井造船とも協力しながら、巨大な円筒の倒立振り子の流力振動で発電する新方式の海洋エネルギーを開発中。
昨年の3月から三井造船の研究所の水槽で行われた実験では、塩ビ管で作られたさまざまなサイズの中空の円柱の倒立振り子を使った実験が行われ、水流による振動や回転、往復運動のメカニズムが解明されました。円柱の倒立振り子のサイズと流速の関係の研究からの試算によると、長さ 20m の巨大振り子を流速 5m/s の流れに設置すれば 8300kW の発電が可能だという計算結果が得られたということです。この試算結果は、各社が開発している同サイズのプロペラ回転式の潮流発電と同等の性能で、風力発電と比べるならば直径100mを超える超巨大風車に匹敵する発電性能を実現できるとの所感を得たとのことです。
倒立振り子の流力振動で発電するこの方式は、構造がシンプルであるため低コストで耐久性が高く、さらにプロペラのように魚を傷つけることない。他の海洋での振動を利用した発電に比べて、2倍以上のエネルギー取得効率が得られるなどのメリットがあり、今後は軽量で強度の高い材料を利用した円柱の開発などを進め、実証試験ができる場所などの選定を行うとのことです。
現在作成中の「波力・潮流・潮汐・海洋温度差発電のカタログ」でも紹介しているように、海中に巨大な風車のような潮流発電機を設置するプロジェクトが世界中で進んでいます。それらは、当初考えていた以上の成果を上げつつありますが、どうも巨大なプロペラがたとえゆっくりでも海中で回転して発電するという”図”の非現実感を感じてしまいます。それに比べると、今回の岡山大学の潮流・海流、そして水力発電への応用などは本当に有効にエネルギーが取り出すことができれば、十分に有望な形に思えます。いずれにしろ、まだ開発には時間がかかりそうです。期待しつつ成果を待たせていただきます!
プレスリリース / 岡山大学、平成24年12月20日
・プレスリリース / 巨大な振り子で潮流・海流発電 【比江島 慎二 環境生命科学研究科 准教授】資料(PDF)
" 潮流や海流は,風力や太陽光と違って気象に影響されないため,極めて安定したエネルギー源として注目されています。潮流・海流発電では,風力発電と同じプロペラ回転式の発電機が使われますが,複雑な構造を持つためコストが高く,過酷な海中環境では壊れやすく,鋭利なプロペラで海洋生物を傷つけるなどの問題があります。これに対し,巨大な円筒を海中でゆっくりと振り子振動させて発電する,全く新しい方式を企業と共同で開発しています。海外でも,円柱の振動を利用した同種の方式の開発が進められていますが,振り子を利用した我々の方式はその2倍以上のエネルギー取得効率が得られています。<発電の仕組み>
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右(この記事では上)図のように,水よりも軽い中空円柱を水中に沈め,下端を回転軸に固定すると,中空円柱が回転軸を中心に回転して傾いたとしても,常に鉛直に戻ろうとする浮力が働くため,円柱は鉛直に自立した状態を保ちます。これに水流を与えると,円柱の周りには周期的に渦が発生し,渦による周期的な力が円柱に作用することによって,流れと直角方向に円柱の振り子振動が誘発されます。この振り子運動で回転軸を往復回転させ,それを発電機に伝えて発電する仕組みです。<特 徴>
・構造がシンプルであるため,低コストで耐久性が高く,プロペラのように魚を傷つけることがありません
・並進振動を用いた同種の方式に比べ2倍以上のエネルギー取得効率が得られます
・試算によると,長さ 20m の巨大振り子を流速 5m/s の流れに設置すれば 8300kW の発電が可能です。これは,同サイズのプロペラ回転式の潮流発電と同等で,風力発電と比べれば直径 100m を超える超巨大風車に匹敵する発電性能です。
.......... "
関連
・岡山大学環境理工学部環境デザイン工学科 : 環境振動エネルギー学研究室 / 水流による振り子振動を利用した新しい潮流発電・小水力発電
-----image : 上記サイトより
".....また,同種の方式である米ミシガン大学のVIVACE(ヴィバーチェ)に比べて2倍以上のエネルギー取得効率を実現しました.流速5m/sの潮流であれば,たった20m長さの振り子1本で,直径100mを超える超巨大風車に相当する発電が可能です。....."
- 流体励起振動を利用した新型の風力発電および潮流発電の開発
・三井造船 : 2012年07月26日「三井造船技報」第206号発行 - 三井造船技報 第206号(平成24年7月発行)
"三井造船技報 第206号の構成内容
(再生可能エネルギー小特集)
.....
流力振動を利用した水流発電技術の有効性検証
担当部署:技術開発本部 技術総括部
共同執筆:岡山大学 大学院環境生命科学研究科
共同執筆:岡山大学 大学院研究科
...........
③流力振動を利用した水流発電技術の有効性検証
従来の発電方式とは全く異なる新たな発電方式の概念を提案し、水槽試験により得られた力学特性を紹介する。
..........
I 再生可能エネルギー小特集
CO2削減を目的とした新型帆装船舶の性能評価技術の開発
太陽熱発電システム(第1報)
−集熱レシーバの性能実証試験−流力振動を利用した水流発電技術の有効性検証
素反応解析技術を用いたバイオマス由来ガス組成推算技術の開発
.......... "
・「振り子」で潮流発電 岡山大大学院・比江島准教授ら-----山陽新聞、2012/12/15
".....比江島准教授によると、秒速5メートルの来島海峡の潮流ならば、風速50メートルの猛烈な風に相当するエネルギーを生み出すことができるいう。.....同大の農業用水のほか、3月から東京の三井造船の研究所でも本格的に実験研究。長さ90センチの円柱の装置を作り、秒速1メートルの流水で最大25ワット発電できた。エネルギー取得率も最大76%と高かった。計算上は長さ20メートルの円柱で秒速5メートルの潮流があれば8300キロワットの発電が可能で、直径100メートル超の風車1基分に相当するという。
.......... "
初出
・週刊GreenPost 55号 年末・年始特別版 しなやかな技術研究会 p.2
参考エントリー
・波力・潮流・潮汐・海洋温度差発電のカタログ 海洋エネルギーは次代を担う!
(波力・潮流・潮汐・海洋温度差発電のカタログ Index / 資料 / MEMO)
・三菱重工鉄構エンジニアリング、振動水柱型空気タービン方式の波力発電システムの実証研究を開始-----ソフトエネルギー、2011/11/18
・海流がバーに当たり引起す渦巻きの振動をエネルギーに変換する新機軸の発電システム Vortex Hydro Energy-----ソフトエネルギー、2008/11/17
[ カテゴリー : 潮汐力・海流など海洋エネルギー ]
おすすめエントリー
・週刊GreenPost 56号 2013/1/15-18日版 しなやかな技術研究会
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