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分子科学研究所、1種類の有機半導体に自由にp型、n型を形成する技術を発表

 分子科学研究所は、1種類の有機半導体において、不純物を極微量加えるドーピングによって、自由自在にn型化(電子が電気伝導を担う)、および、p型化(ホール(正孔)が電気伝導を担う)することに成功しました。

 具体的には、これまでp型しか示さないとされてきた有機半導体の代表であるフタロシアニンで、n型を。また、これまでn型しか示さないとされてきた有機半導体のC60でp型を。つまり、その両方について、p型、n型を自由にコントロールできることを示したことにより、すべての有機半導体について、シリコンで日常的に行われているような、ドーピングによるpn制御、pnホモ接合太陽電池が作製できることを実現したということです。

 これは、原理的にすべての有機半導体について、シリコンのような無機半導体で日常的に行われているような、ドーピングによるpn制御により、単独薄膜によるpn接合太陽電池が作製できることを意味し、より自由でフレキシブルなセル設計が可能となるということです。

 有機薄型セルは、安価ですが、屋外における日光の堅牢度に問題があるなどの課題があります。多様な設計が可能になることで、これらの課題の克服にも寄与するのでしょうか? 分子科学研究所は、今回の技術を応用し、実用化レベルの10-15%の光電変換効率を実現することを目指すということです。

プレスリリース / 分子科学研究所、2012年09月07日
1種類の有機半導体による太陽電池の作製が、全ての有機半導体で可能になった!  -フタロシアニン単独薄膜におけるpnホモ接合形成-

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-----image(”図2 作製したセルの構造。(a) 炭酸セシウム(Cs2CO3)をドーピングしたフタロシアニンの単独膜セル。(b) 酸化モリブデン(MoO3)をドーピングしたフタロシアニンの単独膜セル。(c) 炭酸セシウム(Cs2CO3)ドーピング層と酸化モリブデン(MoO3)ドーピング層を積層したホモ接合セル。光電流が発生する赤線で囲んだ界面がセルによって異なることが分かる。”) : 同リリースより

"フタロシアニン単独薄膜におけるpnホモ接合形成

[概要]
分子科学研究所の平本昌宏教授の研究グループは、有機半導体の代表であるフタロシアニンを、不純物を極微量加えるドーピングによって、自由自在にn型化(電子が電気伝導を担う)、および、p型化(ホール(正孔)が電気伝導を担う)することに成功しました。また、フタロシアニン単独薄膜におけるpnホモ接合有機太陽電池の試作にも成功しました。
 また、他の代表的有機半導体のほとんどについて、同様のpn制御ができる結果も得ました。これは、有機半導体エレクトロニクスを、pn制御を自在に行ってLSIなどをデバイス設計するシリコン無機半導体エレクトロニクスのレベルへと引き上げることになる成果です。
本研究は、JSTのCREST(研究領域名「太陽光を利用した独創的クリーンエネルギー生成技術の創出」)の一環として行われ、アメリカ物理学協会の発行する応用物理学の専門誌『AIP advances』の8月17日付(オンライン版)に掲載されました。

[研究の背景]
 有機太陽電池は、非常に低コスト、軽く、フレキシブルという特性があります。生活にとけこんだ多彩なカラー・デザインの有機太陽電池シートが2年程度で商品化され、屋根、壁、窓、自動車、ありとあらゆる場所に簡単に印刷・貼付け・ラッピング・塗布して、身近な社会全体に普及することが期待されています。この全く新しい、有機材料に特有の長所をもった太陽電池は、エネルギー問題解決の一翼を担うべく、次世代の太陽電池として産業的な応用が進みつつあります。
 実用化されている無機シリコン太陽電池では、すでに確立された半導体の科学に基づいて、望みの性能のセル(太陽電池)を作製できます。しかし、有機太陽電池については、有機半導体の基礎科学のレベルが全く不十分です。
 本グループは、すでに、フラーレン(C60)のpn制御(注1)とpnホモ接合(注2)太陽電池作製に成功しています(分子研プレスリリース2011年3月1日、分子研研究成果2011年10月4日)。今回のフタロシアニンは、これまでp型しか示さないとされてきた有機半導体の代表です。一方、C60はこれまでn型しか示さないとされてきた有機半導体の代表です。その両方について、p型、n型を自由にコントロールできることを示した今回の結果は、すべての有機半導体について、シリコンで日常的に行われているような、ドーピングによるpn制御、pnホモ接合太陽電池が作製できることを意味しています。

[研究の成果]
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[今後の展開及びこの研究の社会的意義]
 今回の結果は、原理的に、すべての有機半導体について、シリコンのような無機半導体で日常的に行われているような、ドーピングによるpn制御、単独薄膜によるpn接合太陽電池が作製できることを意味しています。これは、今後、有機半導体エレクトロニクスが無機半導体エレクトロニクスなみに発展するための、基礎的で必要不可欠な技術です。
 有機太陽電池においては、今回のドーピング技術によりpn制御を行うことで、より自由でフレキシブルなセル設計が可能となっていきます。今後、ドーピング濃度等のコントロールによって最適のセル設計が自由自在に行えるようになります。また、有機太陽電池は、今回のフラーレンとフタロシアニンに代表される、2種の有機半導体を共蒸着によって混合したバルクヘテロ層を用いないと、実用的な光電流が発生しないため、今回のpn接合技術を共蒸着膜に直接適用し、実用化レベルの10-15%の光電変換効率を実現していく予定です。
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最も優れたn型有機半導体として知られるフラーレンに、モリブデン酸化物をドープすることにより、p型にすることに成功した。平本グループは有機薄膜型の太陽電池の研究を進めているが、フラーレン分子(n型)とフタロシアニン分子(p型)の2種類の有機半導体を用いていた。今回、最も優れたn型有機半導体として、有機太陽電池に必ず用いられているフラーレン分子と、モリブデン酸化物とを同時に蒸着する共蒸着法によりモリブデン酸化物をドープしたフラーレンを作製し、物性を調べた結果、p型として働くことが世界で初めて明らかになった。この方法によれば、1種類の有機半導体のみを用いてn型、p型の両方を得ることができ、電池の電圧の起源となる内蔵電界を得られる。
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