« 福島大学と産総研、再生可能エネルギー分野における協定を締結 | トップページ | ソーラーリザーブ SolarReserve、ネバダ州で建設中の110MW太陽熱発電所用の高さ162mの中心塔をお披露目 »

住友化学の技術とUCLAの研究、有機薄膜太陽電池の変換効率10.6%を達成

 住友化学の高効率の長波長吸収型材料とUCLA の短波長吸収型材料と電気的損失を最小化する中間層材料の組み合わせにより製作された、タンデムセル構造の有機薄膜太陽電池が、世界トップレベルとなる変換効率10.6%を達成したと発表されました。
 この有機薄膜太陽電池を製作したのは、UCLAのヤン・ヤン(Yang Yang)教授で、米国の国立再生可能エネルギー研究所(The National Renewable Energy Laboratory,NREL)においてその高い変換効率が評価されたということです。ヤン・ヤン(Yang Yang)教授によれば、数年以内に変換効率15%達成を目指すということです。

 有機薄膜太陽電池は、製造工程、材料などがこれまでの太陽電池にくらべ、資源の制約を受けずに、簡便にかつ安価に製造できることが期待されてきました。ようやく、その技術的な課題が克服され、世界的に実用化、またはその前夜にあたる状況だといわれています。完成すれば、建物の屋根だけでなく、壁面や塀、あらゆる構造物の未利用なスペースが太陽光発電に利用できる可能性が開ける可能性があります。今後数年、ながくとも2020年までには、世界中のさまざまなところで利用されることが現実味をおびてきています。

プレスリリース / 住友化学、2012/2/14
発表サイト / 有機薄膜太陽電池の変換効率10.6%を達成 (PDF:123.9KB)

Sumitomocami_uclapolypv
-----image : 同リリースより

" 住友化学が開発した材料を使用して、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles、以下「UCLA」)のヤン・ヤン(Yang Yang)教授が作製した有機薄膜太陽電池の変換効率が、このたび、米国の国立再生可能エネルギー研究所(The National Renewable Energy Laboratory、以下「NREL」)において 10.6%であると認定され、世界トップレベルとなりました。NREL は、太陽電池の分野で世界的に有名な研究所であり、太陽電池の性能を評価して公式に認定する機関です。
 有機薄膜太陽電池は、軽量で薄く、フレキシブル化が可能なため、次世代の太陽電池として期待されています。印刷法により大面積のセルを連続して製造できるため、現状主流であるシリコン系太陽電池と比較して、製造コストが安くなると考えられています。
 今回作製された有機薄膜太陽電池は「タンデムセル構造」(図参照)によるものです。タンデムセル構造は、吸収する波長範囲が異なる 2 種類の光電変換層を組み合わせることにより、広範囲の太陽光エネルギーの利用が可能となるため、単セル構造と比べて、高い変換効率が得られます。しかし、吸収波長の異なる材料の組み合わせや中間層の材料によって、性能は大きく異なります。今回の 10.6%という変換効率は、UCLA の短波長吸収型材料と電気的損失を最小化する中間層材料、および住友化学の高効率の長波長吸収型材料の組み合わせにより達成されたものです。
 住友化学は、現在事業化に向けて注力しているディスプレイ・照明用途の高分子有機ELに関連する技術を応用し、有機薄膜太陽電池の開発を進めています。高分子有機EL、有機薄膜太陽電池とも共役系高分子(*)が材料の効率向上の鍵を握っており、当社が高分子有機EL材料の開発およびデバイス開発において培った高分子材料の設計・合成技術を生かせること、および、将来、有機薄膜太陽電池の材料を量産する際には、高分子有機EL材料の生産設備を活用できることが強みと考えています。
 住友化学は、今後、UCLA との共同研究等により、当社の強みを生かして、材料の性能向上に向けた開発を一層強化し、早期に有機薄膜太陽電池の変換効率を実用化レベルに到達させてまいります。有機薄膜太陽電池の特長を生かし、まずは携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器向けの充電器や、室内の壁や透明な窓ガラスとの一体型製品等の用途をターゲットとし、将来はさらに変換効率や耐久性を向上させ、一般家庭の屋根置き用や産業用発電の用途での採用を目指してまいります。

(*)共役系高分子:二重結合と単結合とが交互に連なっている高分子。有機物でありながら、導電性を示す特徴がある
........... "

関連
UCLA engineers create tandem polymer solar cells that set record for energy-conversion-----UCLA,February 13, 2012

Yang_yang_2
-----image : 上記リリースより

" In the effort to convert sunlight into electricity, photovoltaic solar cells that use conductive organic polymers for light absorption and conversion have shown great potential. Organic polymers can be produced in high volumes at low cost, resulting in photovoltaic devices that are cheap, lightweight and flexible.
..........
Further, after the researchers incorporated a new infrared-absorbing polymer material provided by Sumitomo Chemical of Japan into the device, the device's architecture proved to be widely applicable and the power-conversion efficiency jumped to 10.6 percent - a new record - as certified by the U.S. Department of Energy's National Renewable Energy Laboratory.
..........
"Envision a double-decker bus," said Yang Yang, a professor of materials science and engineering at UCLA Engineering and principal investigator on the research. "The bus can carry a certain number of passengers on one deck, but if you were to add a second deck, you could hold many more people for the same amount of space. That's what we've done here with the tandem polymer solar cell."

To use solar radiation more effectively, Yang's team stacked, in series, multiple photoactive layers with complementary absorption spectra to construct a tandem polymer solar cell. Their tandem structure consists of a front cell with a larger (or high) band gap material and a rear cell with a smaller (or low) band gap polymer, connected by a designed interlayer.
..........
This study opens up a new direction for polymer chemists to pursue designs of new materials for tandem polymer solar cells. Furthermore, it indicates an important step towards the commercialization of polymer solar cells. Yang said his team hopes to reach 15 percent efficiency in the next few years.
........... "

Yang Yang Laboratory

コメント続き

 ちょうど有機薄膜太陽電池を実際のビルに利用する事業がドイツで開始されるというタイムリーな記事がありました。

ビル壁で発電、有機薄膜太陽電池を利用へ-----Tech On!,2012/02/17

 詳細は上の記事を読んでいただくとして、開発したのは、ドイツのHeliatek社で、その有機薄膜太陽電池の変換効率は、9.8%だということです。今後、建物の壁などに利用しこれまでの太陽電池にはない、有機薄膜太陽電池の特徴をいかしてた、発電する”家”や”ビル”を作っていく事業に歩を進めるようです。(2t)

Heliatek achieves new world record for organic solar cells with certified 9.8 % cell efficiency-----Heliatek,December 05, 2011



ブログランキング・にほんブログ村へ

ブログ村ランキング参加中。クリックお願いします!
上のバナーをクリックしていただくだけで当サイトの- 評価 -の向上になります。ご協力ありがとうございます。





greenpost(@greenpost) - Twilog-----twitter : greenpost
---しなやかな技術研究会のGoogleマップ2

[PR]

|

« 福島大学と産総研、再生可能エネルギー分野における協定を締結 | トップページ | ソーラーリザーブ SolarReserve、ネバダ州で建設中の110MW太陽熱発電所用の高さ162mの中心塔をお披露目 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 住友化学の技術とUCLAの研究、有機薄膜太陽電池の変換効率10.6%を達成:

« 福島大学と産総研、再生可能エネルギー分野における協定を締結 | トップページ | ソーラーリザーブ SolarReserve、ネバダ州で建設中の110MW太陽熱発電所用の高さ162mの中心塔をお披露目 »