パナソニック、温泉の送湯管自体が発電する、傾斜積層構造を用いた熱発電チューブを開発
全国の温泉事業者のみなさん! お待たせしました。あなた方は将来発電事業者になることができそうです。
パナソニックが、温泉の送湯管自体が発電することを可能にする、傾斜積層構造を用いた熱発電チューブを開発しました。傾斜積層構造-「熱の流れにくい熱電変換材料と熱の流れやすい金属を傾斜して交互に積層し管状にした単純な構造」にし、試作した長さ10 cmのチューブで1.3 Wの電力を取り出すことに成功しました。
比較的低温(150℃以下)の温泉は、リリースよれば多数利用されているそうです。温泉の適温に冷ます家庭で、冷水中に通すことで、送湯管自体を熱発電器に変えることが可能になるかもしれません。利用の形態の中で、現実の利用をイメージさせるすぐれた開発のような気がします。
将来の温泉事業者のみなさんの可能性を開く技術開発にむすびつくといいですね。
プレスリリース / パナソニック、2011年6月20日
・世界初*)、傾斜積層構造を用いた熱発電チューブを開発
-----image(”【図】今回開発した熱発電チューブの構造図と写真”) : 同リリースより
" 地熱・温泉熱を活用してエネルギー問題解決に貢献
【要旨】
パナソニック株式会社は、熱電変換材料と金属を傾斜積層した、新しい構造の熱発電チューブを開発しました。熱エネルギーを電力に直接変換できる熱電変換[1]は、二酸化炭素排出ゼロの発電技術のひとつとして注目されています。今回、熱の流れにくい熱電変換材料と熱の流れやすい金属を傾斜して交互に積層し管状にした単純な構造を考案、お湯を流す配管そのものを熱発電チューブにすることが可能となり、試作した長さ10 cmのチューブで1.3 Wの電力を取り出すことに成功しました。本開発の成果を用いることで、地熱・温泉熱利用[2]などへの展開がより簡便になることが期待できます。【効果】
現在、導入が進んでいる太陽光や風力などと比較して天候などに左右されず安定な再生可能エネルギーとして地熱・温泉熱の活用が注目されています。これまで、温泉熱を利用した熱発電の取り組みがありますが、配管の外側に従来のπ型構造の熱電変換素子[3]を貼り付けて配線しているため熱を取り込む際のロスが大きく、信頼性にも課題がありました。本開発により、配管自体で熱発電が可能となり、熱の取り込みロスが少なく、複雑な配線も不要となり、熱発電システムの実現に大きく前進します。【特長】
今回の開発は、以下の特長を有しています。従来のπ型構造の熱電変換素子を使った場合に比べて4倍の発電量を実現1)。
1)同一の熱量を供給(温水90度、冷水10度)して比較。
製造方法が簡単で、お湯を流す配管などにそのまま使えるチューブ形状を実現。【内容】
本開発は、以下の新規技術により実現しました。熱の流れと垂直な方向に電気が流れるという独自の熱発電原理を考案
熱発電原理に基づき発電電力を最大化する熱流シミュレーション技術を構築
加工が困難な熱電変換材料をあらかじめカップ型にすることで、チューブを開発
..........
【用語の説明】
[1]熱電変換
材料の両端に温度差を生じさせ、熱エネルギーを電力に変えること。温度変化をもとに発電する現象は、発見者の名前をとってゼーベック効果と呼ばれます。タービンのような可動部がなく、二酸化炭素等の排出もない発電技術として期待されています。
[2]地熱・温泉熱利用
地熱エネルギーは、再生可能エネルギーの中でも急激な出力変動がないエネルギーとして期待されていますが、温泉との競合もあってあまり開発が進んでいませんでした。そのような中、比較的低温(150℃以下)の温泉熱はすでに多くの温泉施設で使われており、その熱をさらに発電に利用するという「温泉発電」の取り組みが報告されています。泉源からのお湯をわき水などで冷まして適温にするところなどで熱発電を使えば、発電と温泉を両立できるようになります。
[3]π型構造の熱電変換素子
従来の熱電変換素子の基本構造は、2種類(P型、N型)の熱電変換材料を並べて電極で接合した構造となっており、ギリシャ文字のπ(パイ)の形をしているため、「π型構造」と呼ばれています。実際の素子は、この「π型」をいくつも並べて電気的に接続して平板状に作られています。
.......... "
関連
・パナソニック技報:【7月号】JULY 2010 Vol.56 No.2 - 非対角熱電効果を用いた熱電トランスデューサ(PDF:576KB)
追加情報
・熱発電チューブ 世界初の実用化にめど-----NHK、2012年9月12日
".....長さ10センチ、直径1センチの「熱発電チューブ」の出力は4ワットで、4本組み合わせるとLED電球を点灯することができます。
「熱発電チューブ」は小型で軽く二酸化炭素を出さないのが特徴で、「パナソニック」は世界で初めての実用化に向けて6年後をめどに工場やビルの排熱や温泉地での活用を目指しています。....."
追加情報
・パナソニック、京都市のごみ焼却施設の排熱から電気をつくる「熱発電チューブ」の実証実験を開始-----ソフトエネルギー、2013/03/19
コメントつづき
熱発電素子は、「pn接合部に温度差を与えることで起電力が発生する-ゼーベック効果-を利用した」ものです。昔から、熱電対や熱発電素子のエネルギー分野への活用は模索されてきました。しかし、コストや利用のむずかしさからこれまではそれほど普及していません。今回、熱で発電する管が開発される可能性がでてきたことで、100度前後の温度差を確保できる分野であれば、エネルギー回収、発電事業が可能になるかもしれません。(2t)
参考エントリー
・富士通研究所、光(太陽電池)と熱(熱電素子)から電気を作る有機材料の発電素子を開発-----ソフトエネルギー、2010/12/13
・東京エレクトロン デバイス TED、INFINITE POWER SOLUTIONS社の低自己放電率の全固体薄膜2次電池 THINERGYの取り扱いを開始-----しなやかな技術研究会、2010/08/04
・コマツ(KOMATSU)は、世界最高効率の熱電発電モジュールを開発、販売-----しなやかな技術研究会、2009/02/12
・熱電素子を使った電気自動車を世界で初めて開発 / プレスリリース 大阪産業大学-----しなやかな技術研究会、2008/05/16
・棄てる熱から発電 セラミックス材料で実用可能な高温用熱電発電モジュールを実現 / プレスリリース 産業技術総合研究所-----ソフトエネルギー、2005/08/23
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コメント
お世話になります。熱電変換につきまして、アドバイスを宜しくお願い致します。
株式会社ジャスライト
社主
加茂 義明
投稿: 加茂 義明 | 2015/05/10 18:39
大変すばらしい研究を進めていると思います、私の住んでいる所も温泉地でこの自然の
熱源をなんとかeエネルギーに換え効率良く
活用できないものかと思っています。
素人考えでペルチェ素子を多少大きめの構成で
導入したら、そこそこの発電が出来るのではないかと、それが各湯元・利用施設に設置されれば・・・ それにペルチェ素子利用で冷房等
出来れば良いかなと思っています。
投稿: SSS | 2011/09/01 18:53