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日本地熱学会、クリーンな安定電源である地熱発電の促進と夏場のピークカット対策、地中熱利用ヒートポンプを提言

 日本地熱学会は、東日本大震による火力および原子力の大規模発電所の損壊による電力の供給不安に対して、クリーンな安定電源である地熱発電の促進を訴える意見書を発表。さらに夏場のピークカット対策、地中熱利用ヒートポンプを提言しました。

 火山および地震国日本にとって、地熱利用はもっと利用されてしかるべきですが、2000年以降地熱発電所の新設が無いということです。2010年現在の設備容量は、53.6 万 kW、発電量 30.6 億 kWh/年にとどまっています。NEDOが2001年に発表したリポートでは、地熱の残存ポテンシャルは、発電出力は95万kW、発電電力量は59億8千万kWh/年。さらに、2010年の環境省の導入ポテンシャル調査では、温泉発電の賦存量は72万kWと見積もられています。少なくとも現状の倍以上のポテンシャルがあり、3.11以前の見積もりでは今後20年間で20%弱の積み上げが可能とされてきました。
 しかし、地震国日本における、原子力および大型火力の電源としての脆弱さが明らかになり、特に原子力の場合、福島原子力発電所の事故の深刻な影響だけでなく、老朽化した原子炉の廃炉、核廃棄物の処理、貯蔵などもともと未解決だった問題のコストを未来に先送りすることをやめれば、+50%の積み上げも2030年ころまでには可能だと考えます。

 さらに、地熱というエネルギーの賦存量は、2千万kW程度という数字になります。現実に利用しているのが、53.6万kW。これから数十年で利用できる量は、現実的には+10万kW、コストをゆるやかにみつもった場合でも+100万kW程度。しかし、エネルギー量的には2千万kWもあります。この分野の研究開発、低温利用の促進などで、小規模分散型を追及した場合の可能性は非常に高く、家庭や施設などでの地中熱利用ヒートポンプの利用などを促進することで地熱利用は大きなポテンシャルをもっています。
 
プレスリリース / 日本地熱学会、2011年4月6日
ホームページ / 日本学術会議 東日本大震災対策委員会・内閣府に、下記の意見書を提出しました。
・今こそクリーンな安定電源である地熱発電の促進を [PDF]

" ‐制度改革でコスト削減と開発可能量増大化を、研究調査と技術開発でリスク低減を‐
東日本大震災により大規模発電所(原発、火力)が損壊し、電力供給が逼迫している。

地熱エネルギーは、クリーンで安定した再生可能エネルギーであり、低炭素社会の実現、大規模災害時の早期電源復旧、分散型電源などの新たな電力供給枠組みの構築に対し、学術的、技術的および政策立案のシンクタンクとして日本地熱学会は総力を挙げて協力する。

地熱発電は、
・天候や季節に左右されない安定電源
・ライフサイクル CO2 排出量は原子力以下
・発電コストは再生可能エネルギー中で最も低いレベル

である。しかも日本は世界3大地熱資源保有国の一つでありながら、2000 年以降地熱発電所の新設が無い(2010 年現在設備容量 53.6 万 kW、発電量 30.6 億 kWh/年)。その主たる理由は以下の通り;
①他のベース電源とのコスト競争:原発に比べてコスト高として敬遠された。温泉法の下での許認可に要する時間(調査?運開の年数が長いため、初期投資の利払い増加)、下記②③により最有望地域を開発できないこと等も、コストを上げている。

②国立公園の開発規制:日本の地熱資源の 80%以上が国立公園内にある。2010 年に一部緩和規制が行われたが、海外並みの本格的な開発には更に大幅な見直しが必要。

③温泉事業者からの反発:温泉影響の風評があるが、日本で地熱開発によって温泉湧出に影響が出た実例は無い。適切な事前調査と環境モニタリングにより、温泉へ影響しない地熱開発が可能なことを理解してもらうことが必要。景気低迷も地熱開発妨げの一因である。地熱開発は見えない地下を扱うため、開発初期の掘削で必ずしも優良な地熱貯留層に当たらないリスクがあり、「失われた十年」に企業がリスクを伴う大規模投資を行う余裕はなかった。
現在の地熱発電単価は約 20 円/kWh だが、①に記した通り制度改革によって単価は下がる。新エネルギー・産業技術総合開発機構による資源量評価が行われた地域だけでも、総容量 148 万 kW、90 億 kWh/年の地熱発電所新設が期待できる。その2倍の開発で福島原発の損失分が補え、国立公園内または海外並みの深部開発で可能性は一挙に広がる。またリスク軽減には継続的な調査研究が不可欠である。
従って地熱発電の大幅増進のために、1)国立公園等の大幅規制緩和、2)許認可のスピード化、3)学術調査と技術開発、が必要であり、1)と 2)の一挙解決には「地熱法」制定を提案する。
.......... "

・電力ピーク負荷低減のための地中熱利用ヒートポンプの導入促進の提言 [PDF]

" 東日本大震災と原発事故の影響のため、夏季に深刻な電力不足が想定されている。この最大の要因は冷房需要である。地中熱利用ヒートポンプは地中を熱源として空調を行うため、現在の冷房機器の主たる方式である空気熱源ヒートポンプと比べて高効率の運転が可能であり、消費電力を 3 分の 1 削減することができる。
この夏は東京電力管内で 850 万 kWの不足が予想されているが、ピーク時間帯において全エアコンの消費電力 1000 万 kW を 3分の 1 削減すれば 330 万 kW の節約ができる。また廃熱を地中に放出するためヒートアイランド現象の緩和が期待され、都内のオフィスビル街区を地中熱利用ヒートポンプに置き
換えた場合、最高気温で 1.2℃程度のヒートアイランド緩和効果が試算されている(玄地,2001)
。仮に気温を 1℃下げることができれば 170 万 kW の節約ができ、両者の効果によって夏のピーク負荷を 500 万 kW 低減させることが可能となる。このように省エネルギー技術である地中熱利用ヒートポンプの導入を進めることにより、結果的に災害時における安定的な電力供給を現在よりも容易にし、停電の回避により日本経済への影響を抑えることができると期待される。
.......... "

参考
新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEDO / NEDO再生可能エネルギー技術白書
" その他の再生可能エネルギー等(太陽熱冷暖房、中小水力発電、地熱発電、温泉熱発電・熱利用、雪氷熱利用、海流・潮流発電、潮汐力発電、熱電発電、圧電発電、工場等廃熱利用、温度差熱利用)の技術の現状(3.94MB) "
/ NEDO : 地熱発電開発事業

日本地熱開発企業協議会 / 資料 - 「展望 地熱発電 2030年」(資料)」(資料提供)

環境省 : 平成21年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査調査報告書

" ..........
第6章 地熱発電の賦存量および導入ポテンシャル [PDF 1,411KB]
6.1 既存調査レビューと課題整理
6.2 調査実施フロー
6.3 地熱発電(熱水資源利用)の賦存量の推計 
6.4 地熱発電(熱水資源利用)の導入ポテンシャルの推計
6.5 温泉発電の導入ポテンシャルの推計
6.6 地熱発電の賦存量および導入ポテンシャル(まとめ)
.......... "

環境省 : 再生可能エネルギー導入ポテンシャルマップ

Enviro2010geothermal
-----image : 上記サイト、マップファイルkmzをGoogle Earthに読み込んで表示

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世界で”再”注目される地熱発電、何故日本は地熱を熱心にやらないの?-----ソフトエネルギー、2008/08/04

[ カテゴリー : 温泉、地熱、地中熱 ]



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