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北陸先端大と科学技術振興機構、世界で初めて液体シリコンを用いた塗布プロセスにより太陽電池を製作

 北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)マテリアルサイエンス研究科の下田教授と科学技術振興機構(JST)の研究グループは、世界ではじめて液体シリコンの塗膜プロセスにより太陽電池の作製に世界で初めて成功したと発表しました。塗膜、つまり印刷するように太陽光発電素子を作成することは、非結晶系のプロセスによるものでしたが、画期的な塗布プロセスにより、p-i-n型のアモルファス・シリコン(非結晶系)薄膜太陽電池の試作を行ったということです。効率はまだまだですが、この画期的な方式の太陽電池が実用化されれば、製造エネルギーおよびコストの問題の解決につながる可能性があるので、非常に期待される研究成果となりました。

 太陽電池を印刷というイメージの現実化につながると素晴らしい研究です。Siインク(シリコンインク)で太陽電池を印刷する未来へ、また一歩近づいたようです。

プレスリリース / 北陸先端科学技術大学院大学、2011/02/07
マテリアルサイエンス研究科の下田教授の研究グループ、世界で初めて液体シリコンを用いた塗布プロセスにより高性能の太陽電池の作製に成功

" ..........液体シリコンから優れた半導体特性を有するアモルファス(非晶質)・シリコン薄膜の作製に世界で初めて成功しました。さらに、それを用いて、画期的な塗布プロセスにより、p-i-n型(注1)のアモルファス・シリコン薄膜太陽電池の試作を行い、高い性能を確認しました。これまで「液体からのアモルファス・シリコン太陽電池製造」は画期的な低コスト製造法として挙げられていましたが夢に過ぎませんでした。今回、研究グループでは、液体シリコンの溶質にあたるポリジヒドロシラン(ポリシラン)(注2)という中間体を徹底的に研究し、使いこなすことで、この可能性を世界で初めて示しました。
 今後、シリコン薄膜のさらなる高品質化、液体シリコン(Siインク)の低コスト化などの実用化のために企業との共同研究を実施し現在の商用電力と同等のコストを可能にするコストパフォーマンスの高いシリコン太陽電池の製品化を目指していきます。

1. 研究の背景
..........太陽電池の性能(コストパフォーマンス)の大幅な向上には、既存技術の延長上にはない画期的な技術が必要でした。

2.研究の成果
 本研究グループでは、シリコン(Si)の第3の形態である「液体」に着目し、液体シリコン材料(以下、液体Si)から半導体や太陽電池を作製する研究に取り組んできました。本研究グループのメンバーである、JAISTの下田 達也 教授、JSR株式会社の松木 安生 主任研究員らは、すでに液体Siから優れたポリSi薄膜トランジスタができることを2006年に発表しています。本研究グループで行ってきた研究はその後継研究に当たります。今回の研究成果は、その後の液体Si研究を集大成したものであり、以下に研究成果の概要を述べます。

 1)Siインクの開発
 液体Siの出発原料であるシクロペンタシラン(CPS)(注3)の重合過程を実験と理論面から詳しく研究し、CPSの重合体であるポリシランの分子量分布、その液体中での形態、経時変化等を正確に把握しました。また、ポリシランを溶かす適切な溶媒も発見し、塗布プロセスに安心して用いることができる液体Si、すなわち「Siインク」の開発に成功しました。

Zu1
-----image(”図1. 3種類のSiインク。ボロンをドープしたp型のSiインク(左)、i型(真性) Siインク(中央)、リンをドープしたn型Siインク(右)”) : 同リリースより

 2)ポリシラン膜の塗布技術の確立 
 液体Siから制御性良くポリシラン膜を基板上に形成することは、これまで非常に困難でした。本研究グループでは、塗布プロセスの基本に立ち返り、分子間力の基本パラメータであるハマカー定数(Hamaker Constant)(注4)を算出して、制御性の良いポリシラン膜の形成技術を確立しました。これによって、欠陥のない均一なポリシラン膜が基板上に形成でき、膜厚も制御できるようになりました。

Zu2
-----image(”図2. 液体シリコンから作成したアモルファス・シリコン薄膜”) : 同リリースより

3)優れた半導体特性のアモルファスSi薄膜の開発
 ポリシラン膜は加熱すると脱水素で固体のSiになります。その際に、ポリシラン中のSi原子は4本の結合手を一旦切り離して、再度Si原子同士で結合します。これは未結合手(ダングリングボンド:dangling bond)(注5)を生み出す過程であり、従来はポリシランから良質のアモルファスSi薄膜は作製できないとされていました。本研究グループでは、分子量、液体状態、塗布プロセス、焼成条件を詳細に見直し、ダングリングボンドの低減(1×1016/cm3)に成功し、Siインクから優れた半導体特性を有するアモルファスSi薄膜を作製することに成功しました。
.......... "

関連
JST 科学技術振興機構 / 平成23年2月7日 世界で初めて液体シリコンを用いた塗布プロセスにより高性能の太陽電池の作製に成功

コメント続き

 これまで「太陽電池を印刷する」というイメージの記事にはこんなものがありました。

 CIGSナノソーラーに関するもの、
ナノソーラー Nanosolar、やっぱり印刷している! 2-----ソフトエネルギー、2010/07/23

太陽電池がプリンターで印刷できたとしたら? / YouTubeから-----自然エネルギー、2008/12/11

Nanosolarが太陽電池製造動画公開 やっぱりプリンターだ、印刷してる!?-----ソフトエネルギー、2008/06/23

 有機太陽電池 
大日本印刷 印刷方式による有機太陽電池を開発 / プレスリリース-----ソフトエネルギー、2007/04/02

オーストラリアで太陽電池セルを印刷機で試し刷り!-----ソフトエネルギー、2009/03/06

 その他
Innovalight、OTB Solar、シリコンインクのインクジェットプリンターで薄膜太陽電池の製造を開始-----ソフトエネルギー、2009/07/01

 このように、そしてこれ以外にも印刷するように太陽電池を製作するという話題は、世界中でこの10年で結構いろいろあったと思います。ここらで、時代も煮詰まってきましたから、研究者のみなさま実用化お願いします。(t_t)

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