産総研、新たな原理"分子間電荷移動励起 "による広域光波長に対応した有機太陽電池の動作を実証
産業技術総合研究所は、新たな原理"分子間電荷移動励起 "による広域光波長に対応した有機太陽電池の動作を実証することに成功したと発表しました。
分子間電荷移動励起は、異なる有機分子間[有機分子化合物半導体-----電子を放出しやすいドナー性分子(DBTTF)と電子を受け取りやすいアクセプター性分子(TCNQ)が交互に積み重なった結晶構造を持つ。]の電荷移動に伴う光吸収を利用することで、これまでは利用できる光の波長が800 nm以下の狭い範囲でしかなかった有機太陽電池の欠点を補うことができるなど、これまでの問題点を克服することが期待される。今回開発された新たな原理"分子間電荷移動励起 "では、波長1000 nm以上の近赤外光領域にまでわたる広い範囲での波長に対応した光電変換を確認したということです。
このほか、励起状態の長寿命化も実現し、これにより発電効率の向上も見込まれるということです。
プレスリリース / 産業技術総合研究所、2010年11月24日
・新たな原理による有機太陽電池の動作を実証
-----image(”図1 分子間電荷移動励起による近赤外光の光電変換”) : 同リリースより
" -波長1 μm以上の近赤外光での光電変換を確認-
-異なる有機分子間の電荷移動に伴う光吸収を利用した新しいタイプの有機光起電力素子
-励起状態の長寿命化も実現し、これによる高効率化も期待
-軽量で低コストの有機太陽電池の研究開発に拍車..........異なる有機分子間の電荷移動に伴う光吸収を利用した、新しいタイプの有機光起電力素子(有機太陽電池)の動作実証に成功した。
有機太陽電池は、軽量で折り曲げが可能な太陽電池シートを製造する新技術として期待され、現在、世界中で盛んに研究開発が行われている。今回、2種の有機分子からなる分子化合物を用いた光起電力素子を試作し、従来の有機太陽電池では困難だった波長1 μm以上の近赤外光による光電変換を確認した。さらにこの素子では励起子や電荷キャリアの寿命と拡散長が、従来の有機太陽電池と比べて3桁程度長くなっていた。これによって光エネルギーをより有効に電気エネルギーに変換できることになる。
この開発によって、これまで有機太陽電池を高効率化する上で大きな課題とされてきた近赤外光の利用が可能になるため、有機太陽電池を高効率化するための新原理として期待される。.........
..........
しかし、有機太陽電池の変換効率は、ここ数年で7 - 8 %にまで改善されているものの、実用化にはさらなる高効率化が必要とされている。高効率化を妨げている要因には、(1)利用できる光が可視光領域(波長 < 800 nm)に限られ、太陽光エネルギーの約4割を占める近赤外光の利用が困難なこと、(2)光励起状態が著しく短寿命で、電気エネルギーに変換される前にエネルギーの大半が失われることなどがある。通常、有機半導体では光吸収によって生じる励起子の広がりが分子の内部に限られていることがこれらの問題の主な原因であり、現状の仕組みでは根本的な解決は難しいと考えられてきた。研究の経緯
産総研では、これまでに異なる分子間の電荷移動に伴う光吸収(分子間電荷移動励起)を光電変換に利用する革新的な有機太陽電池の開発に取り組んできた。分子間電荷移動吸収を利用すると、分子の組み合わせによって吸収する光の波長領域を広げることができ、従来の有機材料では不可能であった近赤外光の利用が可能になると期待される。そこで、異なる分子を組み合わせた有機分子化合物半導体に、電子と正孔をそれぞれ高効率に取り出せる導電性有機材料の電極をつけて有機光起電力素子を試作し、動作を確認することとした。
.......... "
コメント続き
有機太陽電池の変換効率は、変換効率は、ここ数年で7~8 %にまでなってきたが、さらなる開発が必要ということです。グリーン・ポストのブログのアーカイブにもその開発の歴史が刻まれています。ちなみに、アーカイブの中での有機薄膜の最高効率は、6.5%でした。
-----Google GreenPostサイト横断検索 : 有機太陽電池-----
こんな記事もありました。薄膜といってもいろいろな種類があります。予想よりも進化したことで一気に市場で頭角を現したファーストソーラーのCdTe薄膜太陽電池がもっとも目立つ話題でしょうか。
・薄膜太陽電池の本格市場投入は、2010年。そして各社変換効率アップも目指す-----ソフトエネルギー、2008/09/24
・太陽電池業界の熾烈な競争と業界の拡大。ファースト・ソーラーの太陽電池?-----ソフトエネルギー、2009/08/13
有機薄膜では、Googleのニュース検索で、これだけの数がヒットします。世界がしのぎを削る分野での今後に期待をもっています。(t_t)
-----Google News : Organic solar cell-----
参考
・有機色素増感太陽電池で変換効率7.5%の世界最高性能を達成-----産総研、2002年9月10日
・高効率化に挑む 新型有機薄膜太陽電池-----東京大学 大学院理学系研究科、科学技術振興機構、平成21年10月22日
・Wikipedia : Organic solar cell
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