竹中工務店、建物の揺れを防ぐ制振装置と増幅器を組み合わせ、約45倍も効率のいい振動発電システムを開発
竹中工務店は、建物の揺れを防ぐ制振装置を開発していて、今回振動発電機と振動増幅器を組み合わせることで、振動発電における発電量を約45倍に高めることに成功したということです。
建物内の設備機器の振動、歩行や列車の振動などの弱い振動も増幅して使うことができ、設置すれば半永久的に発電する発電方法として注目を集めそうです。
当初、研究開発中の技術としての発表だと考えていましたが、リリースによれば来年度中にオフィスや工場向けなどへ採用を目指しているということです。意外に実用化まで近い技術なので驚きました。
今回利用している技術は、高層建物で利用されるTMD(チューンド・マス・ダンパー)という技術を増幅器に応用しているということです。通常のTMDは、揺れに同調する振り子を用いて建物の揺れを抑制する装置です。建物の不快な揺れを抑える技術だということです。竹中工務店のホームページを見ると、これ以外にもいろいろな免震、制振技術があり、現在のさまざまな建物の居住性能や使用感を高めていることがわかりました。通常は、揺れを抑える技術を、揺れを増幅する技術にしてしまった発想の転換が見事です。
プレスリリース / 竹中工務店、2010年9月16日
・建物の揺れを防ぐ制振装置が話題の振動発電に一役
" 振動発電機と振動増幅器を組み合わせることで発電量を約45倍に
竹中工務店(社長:竹中統一)は、建物内外で発生する小さな振動を振動増幅器で増幅させることにより、振動発電機の発電量を増加させるシステムを開発しました。当社技術研究所内で振動発電機と振動増幅器を組み合わせた試作機を用いて実験したところ、振動発電機のみで発電した場合に比べて発電量が約45倍になりました。
振動発電は、建設工事中に発生する振動や建物内で常時稼働している設備機器の振動、歩行振動や列車振動などの小さな振動「環境振動」を利用して行います。環境振動を利用した振動発電は、電子機器の消費電力が数十から~数百mWまで下がってきたことで適用範囲が広がってきています。
本システムは、建物床の制振装置として広く使われている※「TMD(Tuned Mass Damper)」を振動増幅器として利用するもので、振動を制御しながら高効率の発電を可能にしました。※TMD
おもりとバネを組み合わせた振動体を作り振動を制御したい部分に取り付けることによりおもりは大きく振動する代わりに振動を止めたい場所の振動が小さくなる仕組みのこと。おもりを分割して振動源に合わせて各おもりを動かすことにより、幅広い振動数の振動にも対応可能。【特徴】
■発電量を約45倍にすることが可能
振幅が大きくなると発電量も増加するという振動発電機の特徴に着目し、振動発電機に伝わる振動の振幅を約6.7倍に向上させ、発電量を約45倍にすることができました。■幅広い振動数の領域で振幅を大きくし、発電効率の大幅な低下を防止
発電機の発電効率が最も良い振動数(25~30Hz)の時に発電する電気量を、数倍広い振動数(22~42Hz)にわたる約4倍の振動数帯で確保することが可能になり、適用範囲が広がりました。■振動を利用して発電するどんな方式の発電機とも組み合わせて適用が可能
振動発電の発電方式には、素子が歪む際に電気が発生する「圧電型」、磁石とコイルの移動によりコイルを通る磁束が変化して電気が発生する「電磁誘導型」、電荷を帯びた電極同士の位置がずれることで電気が発生する「静電誘導型」による発電の3タイプがあります。
今回の試作機は電磁誘導型を採用しましたが、本システムの増幅機構はどのタイプの発電方式とも組み合わせが可能なため、設置場所や用途に応じて幅広く活用していくことが可能です。【開発経緯】
振動発電における大きな課題は、「発電量の少なさ」と「振動数のズレ」でした。振動発電は、微小な振動をエネルギー源としており、得られる電力が限られていました。また、従来の発電機は効率よく発電できる振動数が限定されていたため、振動源の振動数が変化した時に著しく発電量が低下するという難点がありました。
本振動発電システムにより、「発電量の少なさ」と「振動数のズレ」の両方が同時に克服され、発電場所(振動源)をえらぶことなく振動発電機を設置することが可能になりました。
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コメント続き
振動で発電というと、圧電素子を使うのかと思っていましたが、今回のシステムは電磁誘導型だということです。45倍の発電量の増加と書かれていますが、具体的な出力の数字がありません。また機器の規模もイメージできる情報は公開されていません。また、情報があれば、是非とりあげてみたい技術です。地震国日本が、微振動を増幅して発電する。オモシロイですね。(t_t)
参考
・Wikipedia : 振動発電
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