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東京都、波力発電検討会が報告書をまとめました。わが国は波力発電に本腰を入れるべき!

 昨年から開催されてきた東京都の波力発電検討会が、2010年3月25日に第4回波力発電検討会を開催、その成果を報告書としてまとめ、提言とともに公開しました。

東京都、波力発電検討会をたちあげ。ブイ型の波力発電装置を検討?-----ソフトエネルギー、2009/08/06

 今回はさらに提言のほかに詳細な報告書が発表されました。2月2日の第3回波力発電検討会で公開された検討資料とともに、わが国の波力、再生可能エネルギーの振興にとって、基調となる資料となりそうです。提言は、国に対して再生可能エネルギー、新エネルギーとしての波力発電の研究開発の姿勢をも問う内容となっています。東京都は、沖ノ鳥島と排他的経済水域における、”当然発揮されるべき”エネルギーを含むすべての海洋権益に対して、国よりも積極的な姿勢を、以前から打ち出しているように思います。今後の国への働きかけ、東京都が大島を波力発電基地とする案も具体的に検討しているようですので、その具体化への本腰の入れ方に期待したいと思います。

東京都環境局  : 再生可能エネルギーの利用推進 / 波力発電検討会

" 検討会 資料
提言
報告書
第4回 波力発電検討会
第3回 波力発電検討会
第2回 波力発電検討会
第1回 波力発電検討会 "

 公開された「波力発電の導入促進に関する提言 平成22年3月 波力発電検討会」によると、

" 1.波力発電を「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」に基づく新 エネルギーに加えるなど、国のエネルギー政策として法的に位置づけ、開発・導入に取り組むこと。
2.波力発電を国の海洋基本計画に折り込むこと。
3.実海域における実証実験やモデル発電事業、海底ケーブル等のインフラの整備等の検討を進めること。
4. 今後の技術開発等を踏まえ、将来的には波力発電による電力も固定価格買取制度の対象に加えるほか、必要な支援策を講じること。

【波力発電の導入促進の考え方】
(1) 海外、特に欧州では再生可能エネルギー分野で海洋の利用が大きく進展するなかで波力発電技術についても実用化の段階にある。
(2) 日本周辺海域の波力の賦存量は十分大きく、我が国でも波力発電が本格的な再生可能エネルギーとして利用できる可能性が高い。
(3) 波力発電の普及が進むことにより、他の海洋再生可能エネルギーの普及と合わせて国内に巨大産業を創出することができる。
(4) 普及が進んだ段階で波力発電は他の再生可能エネルギーに対して一定の競争力を有する。
(5) 波力発電をはじめとする再生可能エネルギーは、地域における導入が進めやすいため、地域経済の活性化や雇用の拡大に結びつく仕組みづくりも併せて進めていく。

【波力発電の普及拡大ロードマップ】
 世界的に最も実用化に近い製品技術を導入し、国際協力により日本化を進め、日本国内で建造すること前提に、その技術の成熟度及び日本における製造能力から推測すると、2020年までには300MW以上の導入が可能と思われる。導入目標としては、他の海洋再生可能エネルギーとあわせて1GW程度とすることが望ましい。
 2020年以降については、波力の賦存量の大きさを背景として、洋上風力(浮体式)との相乗効果注)などから普及のペースは急加速し、風力発電に遅れながらも、概ね2030年までにはこれと並ぶ20~30GWの導入が可能と考えられる。

1003tokyowaveteigenroadmap

----image : 同提言より
.......... "

 提言では、世界で活発に研究開発が進み、実用化前夜とされる海洋エネルギー利用の現状を踏まえ、日本周辺海域の波力エネルギーの賦存量を正当に評価し、産業、雇用、そして漁業などのほかの海洋資源との開発計画のコンセンサス作りや共同事業化の可能性についても検討が行なわれています。

関連
東京都環境局

Ocean Power Technologies / European Marine Energy Centre, Orkney Isles, Scotland

波力発電の実証事業が“始動”
伊豆大島がエネルギー生産拠点に
-----bp special ECOマネジメント、2010年5月24日

波力発電のオーシャンパワー・テクノロジー Ocean Power Technologies、三井造船と出光興産、日本風力開発などと波力発電所建設計画に合意。日本初の本格的な海洋エネルギー発電プラント、2012年には登場か!?-----ソフトエネルギー、2009/10/15

コメント続き

 さらに報告書は、波力発電検討会における議論と検討課題が記され、P.7には、

" 【発電コスト】 ・ 最初のモデル事業は、生産体制もなく量産効果が出ないのでコストは高い。量が出れば安くなる。来年にも実施しようとするとコストはこうなるという数字なので、将来こうなるという数字も出してもらいたい。 ・ OPTのオーストラリア側パートナーも、今回の19MW までの発電事業にはビジネスとしては見ておらず、むしろコストダウンのプロセスが分かることが重要と考えている。 ・ 技術はかなり出来上がっている。モデル事業の規模がやや大きすぎる。100億円ぐらいで10MW 程度の事業であれば、国が本気になればできるので是非やるべきである。 "

 P.16には、

" 波力発電の適地としては、北方領土の南方沖、銚子沖、房総沖、伊豆小笠原諸島沖全域、南西諸島沖全域を挙げることができるが(図9)、それらが全てではない。今日では詳細な海象・波浪解析を実施すれば、波力発電の適地は広がる可能性も高い。 "

 など、積極的に動くための根拠を示そうとしています。
 さらに海外での研究開発の動向など世界の波力エネルギー開発を概観できる資料となっています。

 気になるのは、現在世界にさまざまな方式があるなかで、オーシャンパワー・テクノロジー Ocean Power Technologies社が選定されたのか、だが明確な選定理由は示されていない。このあたりは、事業者主体であると想像されます。当ソフトエネルギーの記事に同社が最初にでてきたのは、2007年。

Scotland seeks world lead in marine power / プレスリリース Scottish Executive(スコットランドの海流発電計画)-----ソフトエネルギー、2007/03/06

 この三年間でようやく実証試験場の建設計画までたどり着いています。ただ、今回の選挙で13年ぶりに保守党政権が生まれ今後、関連予算が削減されてしまう可能性もあるということですから、いずれの国も政治に翻弄されるエネルギー政策という側面はかの地も同じで、事業担当者をやきもきさせているかもしれませんね。

 とはいえ、国も動き出す兆しはでてきています。洋上風車も漁業資源の権利関係の整理と伴います。食とエネルギー、日本の重大な資源確保の可能性、さらには観光や離島振興の可能性もあるかもしれません。脱化石燃料のエネルギー政策の軸を原子力から自然エネルギー、再生可能エネルギーの利用に軸足を変える大きなチャンスと考えていただきたいです。

鳩山首相を本部長とする、総合海洋政策本部、2010年までに洋上ウィンドファームを大規模に展開する”素案”を発表-----ソフトエネルギー、2010/05/10

 今回の報告書でこれまで知らなかった情報の手がかりも見つかったので、これを足がかりに世界の波力発電の情報も積極的に集めていきたいと思います。(t_t)

参考
European Marine Energy Centre - Wave Energy Developers

英コーンウォール沖で、波力発電Wave Hub ウェーブハブプロジェクトが始まった-----ソフトエネルギー、2010/04/08

Pike Research、海洋エネルギー開発において、2025年に200GW規模の発電量を達成することが可能とのリポートを発表-----ソフトエネルギー、2010/02/23

イギリスの自然エネルギー-----自然エネルギー、2010/05/12

参考動画
News Update: Ocean Power Technologies, Inc. to Move from Research to Production

(TradeTheTrend,2010年04月27日)



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