BN/Siヘテロダイオード太陽電池の試作に成功! / プレスリリース 物質・材料研究機構
-----image(pop up ; ”図1太陽電池に用いられるp型BN/n型Siヘテロダイオードの概念図”) & text : 物質・材料研究機構、平成20年9月4日発表より
" 世界初・耐久性に優れ宇宙でも活躍・将来は透明太陽電池も
概要
1.独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:岸 輝雄)半導体材料センターの小松正二郎グループリーダーらは、可視光に対して透明で、もっとも丈夫な材料(高温耐火物)のひとつである高密度窒化ホウ素(sp3-結合性BN)による太陽電池の試作に世界で初めて成功した。
2.地球温暖化、燃料資源の枯渇・高騰に対処するため、様々な省エネルギー技術・新エネルギー開発が活発化している。なかでも太陽電池はシリコン太陽電池の実用化により普及が世界的に進んでいる。しかし、シリコンにはない機能や特徴を持つ太陽電池材料の発見、開発の余地もまだ大きく残されており、開発競争は激しい。今回発表するBN/Si系太陽電池は今まで報告例がなく、物質・材料研究機構が世界に先駆けて着手し、作製に成功した。
3.BNは、紫外レーザや透明トランジスタなどを可能にするワイドバンドギャップ1)半導体2)として、期待されている材料だが、従来は半導体化に必要なドーピング3)が困難であった。今回、高密度BN薄膜のドーピングにレーザミキシング・プラズマCVD法という独自の手法を用いた結果、世界で初めてBN/Siヘテロダイオード4)の作製に成功した。これを用いて太陽電池を試作したところ、2%程度の発電効率を示した。これは現在の最も進んだシリコン太陽電池の水準(18%)と比較すると大きな開きがあるが、世界で初めて試作されたBN/Siヘテロダイオード太陽電池の出だしのデータとしては前途有望な値と考えられる。
4.今回採用されたレーザミキシング・プラズマCVD法は、ダイヤモンドと同等な原子間結合様式をもつ高密度BN(sp3-結合性BN)が合成されると同時にシリコンのドーピングが進行するプロセスであり、これにより世界で初めてBN/Siヘテロダイオードが実現できた。また、レーザミキシング・プラズマCVDは、ワンステップで太陽電池セルが作製できることも特徴であり、この製造法では、電池薄膜の表面がミクロンサイズのコーンに覆われるため、太陽光の反射が抑えられ、光吸収効率の向上に役立つ。
5.BN/Si太陽電池は、特に耐久性、信頼性、耐候性などの要求がシビアな無人観測装置や、宇宙環境などの用途に特化したものが製品化される。今後、今回作製に成功したp型BNに加えて、n型BNを作製し、全体がBN製のホモダイオードを作製する予定で、この場合、可視光に対して透明な電池が出来る。これにより、蓄電池との組み合わせによる車載型サンルーフ発電システム、サングラスや窓に貼り付けられる太陽電池などの開発が期待される。
6.本研究成果は9月5日開催の応用物理学会(中部大学)にて発表される予定である。
......
【用語解説】 詳細資料pdf版より
1)バンドギャップ 半導体の中で電子が取り得るエネルギーには制限があり、あるエネルギーの範囲は電子が存在できない。これを日本語で禁制帯、英語でband gapと呼ぶ。このエネルギーのギャップの大きさが、電子が光子とエネルギーの授受を行う際の目安を与えるため、半導体物性では重要になる。
2)半導体・絶縁体 物質は電気の通りやすさ(導電性)に応じて、金属、絶縁体、半導体に大別される。金属では温度が上がると導電性が下がるが、半導体では逆で、温度が上がると導電性が増す。代表的な半導体はシリコンで、以下に述べるドーピングにより、様々な特性が調整され、現代文明の基礎を成す物質である。
3)ドーピング、p型、n型 半導体では、不純物を混入することで導電性を制御できる。シリコンの場合、例えばB(ホウ素)をドープした場合、B原子にシリコン結晶格子中の電子が取られ、電子の不足分が生じ、この電子欠損部分(ホールという)による導電性が発生する。この状況の半導体をp型半導体と呼ぶ。 同様に、例えばシリコンにP(リン)をドープした場合、P原子がシリコン結晶格子に余分な電子を与え、これが導電性を与える。この状況の半導体をn型半導体と呼ぶ。
4)ダイオード、ヘテロダイオード 上記p型半導体とn型半導体を接合した場合、電流.電圧特性に著しい変化が現れる。一つは、整流特性で、p型からn型の方向への電流は流れるが、逆は非常に流れにくくなる。この状況の半導体接合をダイオードと呼ぶ。特に、p型半導体とn型半導体の材料が異なる場合、ヘテロダイオードと呼ぶ。
5)ドーパント ドーピングでドープする物質【 3)の例では、BとP 】をドーパントと呼ぶ "
コメント
p型BN/n型Siヘテロダイオードを利用した太陽電池の素子の製造に世界で始めて成功したと、物質・材料研究機構が発表しました。当初の発電効率は2%で、「世界で初めて試作されたBN/Siヘテロダイオード太陽電池の出だしのデータとしては前途有望な値」とのことです。
高密度窒化ホウ素(sp3-結合性BN)を使った太陽電池ということですが、BN(窒化ホウ素)という材料すら聞いたことがなく、文字通り世界初ということですので、高純度シリコンに依存しない太陽電池材料として注目されるのでしょうか?
この材料は、”可視光に対して透明で、もっとも丈夫な材料(高温耐火物)のひとつ”だそうですので、宇宙など過酷な場所での利用に適しているとのことのようです。宇宙での太陽電池といえば、ガリウム砒素が有名ですが、元素記号面からみるとBNのほうが希少性もなく、公害などの問題もおきそうにないですね。まあ、素人考えなんですが、、、、
材料、コスト、製造にレーザーを使って半導体形成を行うということですから製造にかかるエネルギー量なども気になるところです。透明で、構造が「電池薄膜の表面がミクロンサイズのコーンに覆われるため、太陽光の反射が抑えられる」という点も興味深い特質です。
今日のエントリーは、
「窒化ホウ素を利用した新型半導体構造をもつ太陽光発電素子が日本の研究機関で開発された」です。ある方から、1行で内容をまとめた文章を追加してくれと頼まれたのですが、、、、。こんなのをどこか目立つところに配置すればいいのでしょうか?(t_t)
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コメント
追加情報
・窒化ホウ素を用いた半導体を形成、効率2%の太陽電池として機能-----EE Times Japan,2008/10/15
" 図1 試作したBN/Si基板
太陽電池として機能する。直径1インチのn型Si基板上に形成した。 "
http://eetimes.jp/article/22430/
投稿: 追加情報 窒化ホウ素を用いた半導体を形成、効率2%の太陽電池として機能 | 2008/10/15 10:13
追加情報
・発電する窓ガラスも夢じゃない「窒化ホウ素太陽電池」(1)-----WIRED VISION,2008年9月26日
http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200809/200809261601.html
投稿: 追加情報 発電する窓ガラスも夢じゃない「窒化ホウ素太陽電池」 | 2008/09/28 21:19