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CIGS太陽電池モジュールで結晶シリコン太陽電池並の変換効率を実現 / プレスリリース 産業技術総合研究所

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-----image(pop up ; ”図1 10cm角集積型CIGSモジュールの写真”) & text : 産業技術総合研究所、2008年8月29日発表より

" 量産型CIGSサブモジュールでの変換効率15.9%を達成
●ポイント
・次世代の太陽電池として期待されているCIGS太陽電池モジュールを高効率化
・市販のCIGS太陽電池モジュールと同じ構造を用いて高性能を実現
・コストと性能で多結晶シリコン太陽電池に競合可能

概要
 独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)太陽光発電研究センター【研究センター長 近藤 道雄】化合物薄膜チーム 仁木 栄 研究チーム長は、CIGS系太陽電池の、銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる光吸収層の高品質化技術と集積化技術を開発し、量産型CIGSサブモジュールでのエネルギー変換効率15.9%(正式測定値)を実現した。

 現在、市販されているCIGS太陽電池モジュールの効率は11-12%程度である。今回、高品質なCIGS光吸収層を大面積で均一に製膜する技術を開発したこと、そしてその高品質なCIGS光吸収層の特性を生かしたプロセスを確立したことにより、10cm角のガラス基板を用いたサブモジュールでの変換効率が15%を越え、最も普及している多結晶シリコン太陽電池に対してコスト、性能ともに競合できる可能性を示した。

 今回の開発は、太陽電池市場におけるCIGS太陽電池の競争力を向上するものであり、導入・普及の加速が期待される。

 本技術の詳細は、2008年9月1日~5日にバレンシア(スペイン)で開催される第23回欧州太陽光発電国際会議(23rd European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition)で発表される。

開発の社会的背景
 地球温暖化対策の重要性が高まるにつれ、太陽光発電への期待はますます高まっている。世界の太陽電池生産量は毎年30%以上の割合で増え続けている。国内の太陽電池の累積設置量は、2006年時点で1.7ギガワット(GW)に達したが、2010年までに4.82GW、2030年までに83GW(国内全電力の約10%)という導入目標が設定されており、今後桁違いに大量の太陽電池の導入が求められている。

 現在、太陽電池の生産量の約9割は結晶シリコン太陽電池が占めているが、シリコン原料が不足し、その生産量はシリコン原料の供給によって制限されているのが現状である。また、さらなる導入普及のためには低コスト化が必須である。CIGS系、薄膜シリコン系などの薄膜太陽電池は大量生産による低コスト化が期待され、各メーカーが量産化に着手している。

 CIGS太陽電池は、研究室レベルの小面積(0.5cm2程度)のセルでは最大変換効率19.9%という高効率が実現されている一方で、商品化されたモジュールの変換効率は11-12%程度に留まっている。実用レベルの大面積CIGS太陽電池モジュールの高効率化が急務となっている。

研究の経緯
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研究の内容
CIGS太陽電池は、研究室レベルの小面積(0.5cm2程度)のセルでは最大変換効率19.9%という高効率が実現されている一方で、商品化されたモジュールの変換効率は11-12%程度に留まっている。小面積セルと集積型モジュールの構造の違いを図3に示す。小面積セル、集積型モジュールとも、ガラス基板、モリブデン(Mo)裏面電極、CIGS光吸収層、バッファ層、窓層までの多層膜の構造は全く同じであり、小面積セルのみ表面に金属電極を必要とする。最も大きな違いは集積型モジュールにおいては、P1、P2、P3という3段階のパターニング工程が必要となることである。このパターニングによってP3で切り分けられた個々のセルが電気的に接続されることで集積化が可能になる。集積型モジュールでは、このパターニングによって太陽電池として動作しない不活性な領域が全面積の5-10%をしめる。また、主に縦方向だけに電流が流れる小面積セルの場合と異なり、集積型モジュールでは最大3-5mmの幅にわたって透明導電膜の中を電気が流れる(図3の赤の矢印が電流の流れを模式的に示す)。そのため透明導電膜の電気抵抗を下げる必要があり、小面積セルよりも厚い透明導電膜が必要になる。透明導電膜とはいっても完全に透明ではないために透明導電膜中での光吸収によって入射光強度が減少する。不活性な領域と透明導電膜での光吸収の両方の損失を合わせると変換効率の低下は絶対値で2-3%程度と見積もられる。したがって、小面積セルで18-19%程度の変換効率が実現できれば15%以上の変換効率を持つ集積型モジュールの実現は十分に可能なはずである。

Fig3
-----image(pop up ; ”図3 小面積セル(左)と集積型モジュール(右)の構造”) : 同リリースより
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関連
産総研 太陽光発電研究センター : 研究チーム・研究内容

23rd European Photovoltaic Solar Energy Conference and Exhibition

コメント
 化合物系の薄膜太陽電池は、すでに市場に投入されている”次世代の太陽電池”です。今回産総研が、CIGS太陽電池の量産型モジュールで15.9%という高い変換効率を達成したことにより、まさに次世代は結晶系太陽電池と伍し、近い将来にはそれを抜き去るメリットを実現することが現実となったということです。

 世界の化合物系太陽電池のメーカーとしては、CIS系の生みの親と称されるドイツのWuerth Solarとシェルソーラー、ホンダがしのぎを削ています。いずれも変換効率12%越えを実現し、最新のアナウンスでそれ以上を表明できるかという微妙な開発競争が続いています。その中で発電用モジュールに利用できるCIS太陽光発電素子で15.9%は、技術革新の大きな指標となるできごとです。
 となると、アメリカのNanosolar社のことも気にかかります。

Nanosolarが太陽電池製造動画公開 やっぱりプリンターだ、印刷してる!?-----ソフトエネルギー、2008/06/23

 話題的には、先の三社を押さえCIS系太陽電池の分野ではもっともホットな企業だからです。IT系のメディアに愛されている同社は、ネット上でも大きな話題性のある活動を維持しているように見えます。同社のアナウンスでは、14%越えとなっています。今後、世界の化合物系太陽電池が市場で繰り広げる変換効率だけではない競争に注目です。(t_t)

MEMO
Wuerth Solar /

CIGS cell makers battle it out for efficiency crown-----CNET,January 27, 2008

Rump Session : Science and technologies which support production of CIS solar cells and modules-----CAT.INIST,2007

参考エントリー
フレキシブルなCIGS太陽電池で効率17.7%を達成 / プレスリリース 産業技術総合研究所-----ソフトエネルギー、2008/07/23

水で太陽電池の性能アップ / 産業技術総合研究所発表-----ソフトエネルギー、2006/04/03

光を使った高性能薄膜の製造技術を確立 / プレスリリース 産業技術総合研究所-----ソフトエネルギー、2006/08/29

有機薄膜太陽電池で世界最高レベルのエネルギー変換効率を達成 / プレスリリース 産業技術総合研究所-----ソフトエネルギー、2005/01/29

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