UL、ドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明するリポートを公開(日本語版)
ULは、同じブランドマークで知られ、アメリカ合衆国に本拠を置き、世界的な機器の機能や安全性に関する標準化を目的とした製品安全規格を策定し、同時に評価方法を設定、実際の評価試験を実施している企業です。
そのULが、そのチーフエコノミストであるエリン・グロッシ(Erin Grossi)による、2015年、ドイツのエネルギー・エコシステムの現地調査の結果をまとめた「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」というリポートを公開しました。
国内では、現在独メルケル政権とEU全体が直面している、政治および社会システムの困難な状況全体をもって、ドイツの再生可能エネルギーの重用、脱原発へと舵を切った手法全体を失敗だと決めつける話をする人もいます。また、再生可能エネルギーは原発を代替することはできないという、見当違いの話をする識者もいます。しかし、再生可能エネルギーの大量導入を口にしながら、実は優先接続などを最初に設定することこそがその導入の成功の秘訣であるというポイントを見逃している(または、意図的に無視している)現状においては、ドイツとアメリカの実証を得ての知見を国内に活かすための門戸の議論にさえ達していないと考えています。
今回のエリン・グロッシ(Erin Grossi)のドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明する白書がこのタイミングで読めることは、そうした考えに一石を投じる意味でも意味のあるものです。
そして、今回のリポートは、内容で比較されている独米の再生可能エネルギーの導入体制のリポートという意味だけでなく、福島第一原発事故を経験しつつ安易な原発再稼動に舵を切る日本人に向けてもいると考えています。その意味で、日本語版が同時リリースされたのだと考えています。
ドイツの成功を表す言葉としては、
「..........規制当局、送電系統運用会社(TSO)、配電系統運用会社(DSO)、再生可能エネルギー供給会社は、世界で最も信頼性の高いグリッドシステムの一つであることを示す長年にわたる記録が、太陽光や風力のような再生可能エネルギー源が有する間欠性によって途切れてしまわないように協力しています..........」という一文をリポートの中から拾いました。そして、この過程、どの送電線をどんなエネルギーが流れているかを、知りたいと思えばだれでも知ることができるというエネルギー民主主義を実現する、ドイツのかつてない試みであると読み取りました。
日本語リポートには、詳細な数字はあがっていません。誰でも読める18ページのパンフレットです。是非ダウンロードしてお読みください。
同書では、増加が続く再生可能エネルギーのグリッドシステムへの導入におけるドイツと米国のアプローチの違いが述べられています。そして、特にバッテリーでの蓄電、インテリジェント・トランスフォーマ/インバータ、センサーとデータ分析並びにそれらに関する規格などの分野での、この二つの国の技術協力の可能性に光が当てられています。オバマ政権は、再生可能エネルギー分野への投資を確保して任期を終えようとしています。アメリカ合衆国の今後については、大統領選挙の結果しだいでは、違い選択をする可能性もあります。また、困難に直面しているメルケル政権の今後も不透明です。
流動化する世界。そのタイミングで出されたこのリポートを味わって読むことにします。
独米の体制の違いを同リポートは、以下のように表現しています。
「二つの国の最大の違いは… ドイツ連邦政府が国内のエネルギー市場を転換すると決断したことである。」
プレスリリース / UL UL白書、ドイツにおける再生可能エネルギー成功の概要を説明、2016年2月12日
-----image : 「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」カバー
" 世界的な安全科学組織であるULはこのほど、ドイツが送電網への再生可能エネルギーの供給量の増量に成果を上げるために何を行っているかを理解する目的で調査を実施した。この調査とその結果は、ULの首席エコノミスト、エリン・グロッシ博士によって書かれた「Putting the Pieces Together: Transition and Transformation in Global Energy Markets(さまざまな現象の断片をつなぎ合わせる:世界のエネルギー市場における移行と転換)」と題する無料の白書(http:bit.ly/1VVnTnx )から入手できる。 .......... この白書のための調査には、現地調査およびドイツのエネルギー転換に取り組むエネルギー・エコシステム関係者とのインタビューが含まれている。ドイツは、原子力発電所を再生可能なエネルギー源に置き換えるという積極果敢な目標を設定することにより大きな経済的賭けをしており、グロッシ氏にとって非常に興味深いものであった。全体の再生可能エネルギーの使用量に関して、ドイツは2014年に30%の目標をパスしており、全国的に2025年までに40-50%、2050年までに80%に到達する計画である。グロッシ氏は「われわれは、なぜドイツが再生可能エネルギーにそのような重大な経済的賭けをするのか、なぜそれが最終的に成功するとドイツ政府が信じているのか、世界中の他の市場が貢献できること、それから学ぶものは何なのかを明らかにしたかった」と語る。
同白書は、ドイツの環境上の見解と安全保障上の見解の間の全体的な相違、送電網の持続可能性を維持することにカミソリのように鋭い焦点を合わせていること、最新の工学的課題の幾つかを解決する仮想発電所の登場について説明している。しかし、同調査はまた、ドイツがそのエネルギー目標を達成するために対処しなければならない幾つかのエネルギー上の盲点があること、そして他の国々は、その克服に役立つイノベーションを与えることができると記している。
グロッシ氏は「われわれが最終的に明らかにしたことは、ドイツが自身の変革の取り組みを進めるために最終的に必要とするであろうさまざまな技術は既にあるということである。アジアや他の市場の製造立国は、その取り組みを達成するのを支援することができる。われわれが注目した具体的なイノベーションは、電池による蓄電、インテリジェントな変圧器、インバーター、センサー、データ分析およびそれらに関連する規格である」と語る。
同白書は、これまでよりももっと広がりのある、柔軟性に富んだ、スマート・エネルギーを擁した未来がこれからの10年間に開花し、発展途上国は中央集中システムを構築するよりもむしろこれらのシステムを利用するようになる、と結論付けている。なぜなら、今日の機械・電気工学と情報技術のリソースをもってすれば、それは現在、技術的に実現可能であり、経済的に実行可能であるからである。
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白書の全文は、ULのオンラインライブラリー(http://bit.ly/1VVnTnx )において各種言語でダウンロードできる。
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関連
・UL Whitepaper by Chief Economist Dr. Erin Grossi Outlines Renewable Energy Success With Power Grids in Germany & Potential Opportunities for Other Nations-----UL、January 21, 2016
・UL Podcast - "Putting the Pieces Together
(UL CI Marketing、2016/02/01 )
参考
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