スーパーエルニーニョとは? 1976/77年の「気候の転換点」と現代の極端化を比べる
スーパーエルニーニョとは何か
1976/77年の「気候の転換点」と現代の極端化を比べる
スーパーエルニーニョとは、公式の気象用語ではありません。気象庁の正式な定義では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差が、5か月移動平均で+0.5℃以上の状態が6か月以上続く場合をエルニーニョ現象とします。
一般に「スーパーエルニーニョ」と呼ばれるのは、その中でも特に強い現象です。目安としては、熱帯太平洋の海面水温偏差が+2℃前後、またはそれ以上に達するような極端なエルニーニョを指します。
仕組みは、太平洋赤道域の「風」と「海」の連鎖反応です。ふだんは東から西へ吹く貿易風が、暖かい海水を西太平洋に押し寄せています。ところが、この風が弱まると、西太平洋にたまっていた暖水が東へ移動します。これが赤道ケルビン波として伝わり、南米ペルー沖の冷たい湧昇を弱めます。
海面が温まると、大気の対流域も東へ移ります。すると貿易風はさらに弱まり、さらに暖水が東へ広がる。この正のフィードバックが強く働くと、エルニーニョは一気に大型化します。これが、ビヤクネス・フィードバックと呼ばれる仕組みです。
重要なのは、1976/77年の現象です。この年は、単なるエルニーニョの年ではありませんでした。北太平洋の気候システム全体が、冷たいモードから暖かいモードへ移った「レジームシフト」として知られています。
1976/77年のエルニーニョ自体は、近年のスーパーエルニーニョほど強烈な水温上昇ではありませんでした。むしろ大きかったのは、その後の太平洋全体の基調変化です。アリューシャン低気圧の強化、アラスカ沖の水温上昇、北米西岸の気候変化など、数十年単位の変化につながりました。
一方、現代のスーパーエルニーニョは、すでに温暖化した地球の上で発生します。つまり、同じエルニーニョでも、出発点の海水温が高い。熱帯の海面水温が高くなるほど、大気中に供給される水蒸気は増え、豪雨、干ばつ、熱波、森林火災などが激しくなりやすくなります。
世界への影響は広範囲に及びます。インドネシアやオーストラリアでは干ばつと森林火災が起きやすくなり、ペルーなど南米西岸では豪雨・洪水が増えます。大西洋では、太平洋側の対流活動の影響で上空の風のずれが強まり、ハリケーンの発達が抑えられる傾向があります。
日本への影響は、昔ほど単純ではありません。典型的には、エルニーニョ時の日本は冷夏・暖冬になりやすいとされます。しかし近年は、インド洋の海面水温上昇が遅れて効いてくる「インド洋コンデンサ効果」などにより、日本付近の高気圧配置が変わり、猛暑と豪雨が同時に起きるような複雑な形になっています。
つまり、1976/77年は「太平洋の構造が変わった年」でした。現代のスーパーエルニーニョは、「温暖化で底上げされた地球の上で、ENSOが極端化する現象」です。
両者を比べると、こう言えます。
1976/77年は、気候システムの土台が切り替わった年。
1997/98年、2015/16年、2023/24年以降のスーパーエルニーニョは、その切り替わった土台の上で、温暖化と重なって激甚化する現象。
したがって、現代のスーパーエルニーニョを見るときは、「エルニーニョだから冷夏になる」といった単純な理解では不十分です。見るべきものは、熱帯太平洋、インド洋、偏西風、日本近海の高水温、そして地球温暖化の重なりです。気候は、もはや一つの現象だけで説明できる段階を超えています。
参考:気象庁、NOAA、ENSO関連研究資料など
NOAA発表で見えてきた「2026/27年スーパーエルニーニョ」の可能性
米海洋大気局(NOAA)気候予測センターは、2026年5月14日に発表したENSO診断で、エルニーニョ現象が近く発生する可能性が高いとしました。発生確率は、2026年5月から7月にかけて82%。さらに、2026年12月から2027年2月の北半球の冬まで続く確率は96%とされています。
これは、前月時点の見通しよりも大きく踏み込んだ内容です。以前は、夏ごろまでエルニーニョでもラニーニャでもない「中立状態」が続く可能性が見られていました。しかし今回の発表では、熱帯太平洋の海面水温の上昇が予想以上に早く進んでおり、エルニーニョの発生がかなり近づいていることが示されました。
これまでの報道では、このNOAA発表をもとに、今回のエルニーニョが秋から冬にかけて強い、または非常に強いレベルに達する可能性が高まっていると伝えています。一部の気候モデルでは、過去最強級のエルニーニョになる可能性も示されています。
ただし、NOAA自身は、現時点では強度予測にはまだ不確実性があるとしています。つまり、「エルニーニョが発生し、冬まで続く可能性は非常に高い」が、「どこまで強くなるか」は、まだ幅をもって見る必要があります。
それでも注意すべき点は、今回のエルニーニョが、すでに高温化した地球の上で発生しようとしていることです。エルニーニョは自然の気候変動ですが、現在は人為的な温暖化によって、地球全体の気温の土台が高くなっています。そのため、強いエルニーニョが重なると、世界的な熱波、干ばつ、豪雨、山火事、水不足などのリスクが一段と高まります。
CNNなどの報道は、今回のエルニーニョによって、2026年または2027年が観測史上最も暑い年となる可能性が高まると指摘しています。これは、エルニーニョそのものが地球を温めるというより、もともと温暖化で高くなっている気温に、熱帯太平洋からの追加的な熱が重なるためです。
過去にも、1997/98年、2015/16年、2023/24年のような強いエルニーニョは、世界の気温記録や異常気象と深く関係してきました。今回の現象が「スーパーエルニーニョ」と呼べる規模に達するかどうかはまだ確定していません。しかし、NOAAの最新見通しは、2026年後半から2027年初めにかけて、世界の気候リスクが高まる可能性を強く示しています。
日本にとっても、これは単に「エルニーニョだから冷夏・暖冬」という話ではありません。近年は、インド洋や日本近海の高水温、偏西風の蛇行、太平洋高気圧の変調が重なり、猛暑と豪雨が同時に起きることがあります。したがって、今回のNOAA発表は、日本の夏、秋、冬の気象リスクを考えるうえでも、重要な早期警戒情報と見るべきです。
要点はこうです。
NOAAは、2026年5月から7月にかけてエルニーニョが発生する確率を82%、2026年冬まで続く確率を96%と見ています。発生そのものの可能性はかなり高い。一方で、「スーパーエルニーニョ」と呼べるほど強くなるかどうかは、まだ確定していません。
参考:NOAA Climate Prediction Center「ENSO Diagnostic Discussion」、CNN報道、Reuters報道
しなやかな技術研究会 Alternative Technology Research Group for the world of resilient communities /GreenPostの視点から言えば、スーパーエルニーニョ発生の可能性は、ただでさえ、ホルムズ海峡封鎖、トランプ禍の中で、資源、材料、景気と懸念が尽きない中、さらに厄介な地球規模の災厄が来るかも!? という厄介な課題を私たちに突きつけること。
─────
Webマガジン GreenPost からのご案内
GreenPost は、「しなやかな技術」と「発見的生活」をテーマに活動するWebマガジンです。
ご案内ページはこちら:
https://note.com/greenpost/n/n03a5acde6e5c
─────
| 固定リンク

