NEDOのプロジェクトで高性能レアアースレス磁石の開発に向けて、強磁性窒化鉄合成に成功
NEDOの「希少金属代替材料開発プロジェクト」に取り組んでいる東北大学、と戸田工業などの研究グループは、高性能レアアースレス磁石の開発に向けて、世界初となる磁石の材料の合成に成功したということです。
発表によれば、高性能レアアースレス磁石として、世界初となる強磁性窒化鉄粉末の単相分離・生成に成功。これまでレアアースが必須とされてきた、電気自動車などのモーター、風力発電などの発電機用の強力な磁石の開発に向けて大きな研究成果をあげることになったようです。
今回合成に成功した、強磁性窒化鉄という材料は、基本的に鉄と窒素により構成され、レアアースを含まないということです。レアアースの確保には、他国との資源争奪戦や価格操作など多くの懸念が指摘される中、将来の高性能モーターの開発に大きな可能性を開く研究成果となりました。
プレスリリース / 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),2011年3月3日
・世界初、レアアースレス磁石(強磁性窒化鉄)粉末の単相分離・生成に成功
" 新エネルギー・産業技術総合開発機構 東北大学 戸田工業
NEDOの「希少金属代替材料開発プロジェクト」に取り組んでいる東北大学大学院電子工学専攻の高橋研教授、小川智之助教と戸田工業(株)などの研究グループは、これまで粉末として単相を分離・生成することができなかった強磁性窒化鉄(*1)を合成する手法を世界で初めて確立しました。 強磁性窒化鉄は、現在最強の磁石とされるネオジム-鉄-ボロン磁石(*2)の性能を凌駕する可能性のある物質で、この成果によりレアアース(希土類)を使用しない磁石の実現に大きく近づくことになります。
今後、強磁性窒化鉄の生成機構解明や微細ナノ構造制御などを検討し、より高性能な磁石材料設計を行う予定です。またスケールアップを段階的に進めながら磁石メーカーとの連携を行い、レアアースレス磁石(*3)・モーターの実用化検討を進めます。なお、このプロジェクトの参加機関は、東北大学、京都大学、千葉工業大学、倉敷芸術科学大学、戸田工業株式会社、帝人株式会社、トヨタ自動車株式会社、(独)物質・材料研究機構、(独)産業技術総合研究所(再委託)、(財) 電気磁気材料研究所(再委託)の10機関です。
(*1)強磁性窒化鉄:純鉄よりも高い飽和磁化、大きな結晶磁気異方性を持っている。鉄と11at%の窒素のみから構成され、基本的にレアアース・レアメタルを含まない。
(*2)ネオジム‐鉄‐ボロン磁石:レアアースであるネオジムを含む磁石。ハイブリッド自動車や電気自動車、洗濯機やエアコンなどの家電製品などパワーが必要なモーターに使用されており、これにジスプロシウムが含まれるものがある。
(*3)レアアースレス磁石:レアアースを必要としないハード磁石。
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2.強磁性窒化鉄について強磁性窒化鉄は、1972年に故・東北大学・高橋實教授がその存在を提唱しましたが、当時は薄膜としては得られたものの、粉末として抽出することはできませんでした。また飽和磁化などの実験データの再現性に乏しく、磁石性能を表わす重要な指標である結晶磁気異方性に関するデータはあリませんでした。近年になって、ナノ粒子合成技術の進歩により、粉末での一部生成確認がなされてはいるものの、強磁性窒化鉄の含有率(生成率)が低く不純物による影響もあり、再現性も含め期待されるような磁気特性は得られていませんでした。
3.成果の特徴
今回の成果は、鉄化合物の世界トップメーカーである戸田工業(株)が強磁性窒化鉄に最適な原材料を合成し、それを用いて高含有率強磁性窒化鉄が得られる前駆体の合成技術を東北大学が開発したことによって実現した産学連携の成功例です。
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関連
・世界初、レアアースレス磁石(強磁性窒化鉄)粉末の単相分離・生成に成功-----戸田工業、11.03.03
・レアアースを使わない磁石・モーター、実用化に光明…強磁性窒化鉄の合成に成功-----レスポンス、2011年3月3日
コメント続き
とはいえ、まだ開発、量産までには時間がかかります。
こんな報道もありました。
・レアアース価格高騰への「もうひとつの対策」-----The Wall Street Journal,2011年 2月 28日
" .....価格高騰が続いている。2月18日に財務省が発表した昨年12月の輸入通関統計によると、レアメタルの輸入平均単価が前年同月比なんと4倍に急騰した。..... "
・レアアース、脱中国へ1100億円投資 経産省、使用量削減で支援-----MSN産経ニューズ、2011.2.25
現在電気自動車用などに利用されている強力な磁石に使われるネオジムは、中国が環境規制を整備するなどして、資源物質としての戦略性を高めている材料です。この状況をいつかえることができるのか? 求められる時間に、成果がおいついていくのか注目されます。
参考
・高性能磁石向けジスプロシウムの使用量4割削減に成功-----新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),2010年12月27日
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