国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣の演説”鳩山イニシアティブ”
日本時間の22日の夜に行われた国連気候変動首脳会合における鳩山イニシアティブの発表をみなさんはどうお聞きになったでしょうか? リアルタイムで国連のストリーミングで聞こうとしたのですが、サイトが落ちてしまったのか、聞けませんでした。結局、23日の報道で鳩山首相の演説を視聴したしだいです。
まずは、発言の内容は、
発表 / 外務省、平成21年9月22日
・国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣演説-----(E)
"潘基文(パン・ギムン)国連事務総長、
各国代表の皆様、
御列席の皆様、本日の時宜を得た国連気候変動首脳級会合でスピーチをする機会をいただき、誠に嬉しく思います。私は、先月末の衆議院選挙において初めて民意による政権交代を果たし、つい6日前に、内閣総理大臣に就任をいたしました鳩山由紀夫です。
気候変動の問題は、その影響が世界全体にわたり、長期間の国際的な取り組みを必要とするものです。すべての国々が、「共通だが差異ある責任」のもと対処していくことが肝要です。政権交代を受け、日本の総理として、本日御列席の各国のリーダーの皆様とともに、科学の警告を真剣に受け止め、世界の、そして未来の気候変動に結束して対処していきたいと存じます。
<削減目標>
まず、温室効果ガスの削減目標について申し上げます。
IPCCにおける議論を踏まえ、先進国は、率先して排出削減に努める必要があると考えています。わが国も長期の削減目標を定めることに積極的にコミットしていくべきであると考えています。また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、1990年比で言えば2020年までに25%削減をめざします。
これは、我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、国内排出量取引制度や、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です。
しかしながら、もちろん、我が国のみが高い削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできません。世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築が不可欠です。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。
なお、先ほど触れた国内排出量取引市場については、各国で検討されている制度についての情報交換を進め、特に、国際競争力への影響や各国間のリンケージを念頭に置きながら、議論を行ってまいりたいと考えています。
<途上国支援>
次に、気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、途上国も、持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で、「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があります。とりわけ温室効果ガスを多く排出している主要な途上諸国においては、その必要が大きいと思います。
また、気候変動問題の解決のために、とりわけ脆弱な途上国や島嶼国の適応対策のために、大変大きな額の資金が必要とされており、それを戦略的に増やしていかなければなりません。わが国は、国際交渉の進展状況を注視しながら、これまでと同等以上の資金的、技術的な支援を行う用意があります。
公的資金による途上国への資金や技術の移転は重要不可欠です。
ただし、それだけでは途上国の資金需要を満たすことはできません。効果的に公的資金が使われる仕組みづくりと同時に、公的資金が民間投資の呼び水となる仕組みづくりについての検討を各国首脳と進めていきたいと考えています。
途上国への支援について、以下のような原則が必要であると考えています。
第一に、わが国を含む先進国が、相当の新規で追加的な官民の資金で貢献することが必要です。
第二に、途上国の排出削減について、とりわけ支援資金により実現される分について、測定可能、報告可能、検証可能な形での、国際的な認識を得るためのルールづくりが求められます。
第三に、途上国への資金支援については、予測可能な形の、革新的なメカニズムの検討が必要です。そして、資金の使途の透明性および実効性を確保しつつ、国連の気候変動に関する枠組みの監督下で、世界中にあるバイやマルチの資金についてのワンストップの情報提供やマッチングを促進する国際システムを設けるべきです。
第四に、低炭素な技術の移転を促進するための方途について、知的所有権の保護と両立する枠組みを創ることを提唱します。
私は、以上を「鳩山イニシアティブ」として国際社会に問うていきたいと考えております。京都議定書は、温室効果ガスの削減義務を課した最初の国際的な枠組みとして歴史的なマイルストーンでした。しかしこれに続く新たな枠組みが構築されなければ、効果的な取り組みとなりません。そのための公平かつ実効性のある新たな一つの約束作成に向け、今後このイニシアティブを具体化する中で、コペンハーゲンの成功のために尽力したいと考えています。
<結び>
本日御出席のオバマ大統領が提唱されているグリーン・ニュー・ディール構想にも現れているように、気候変動問題への積極的な取り組みは、電気自動車、太陽光発電を含むクリーン・エネルギー技術など、世界経済の新たなフロンティアと新規の雇用を提供します。
世界の中で相対的に高い技術開発のポテンシャルと資金力をもっているわが国が、自ら率先して削減目標を掲げ、革新的技術を生み出しつつ、その削減を実現していくことこそが、国際社会のなかで求められている役割だと認識しています。わが国の国民、企業の能力の高さを私は信頼しています。国民も企業も、そして、私たち政治においても、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会をつくるということこそが、次の世代に対する責務であると考えています。
最後に、12月にコペンハーゲンで、まだ見ぬ未来の子供たちのために我々世界の政治指導者が大きな決断をしたと言われるような成果が上がるよう、共に協力することを皆様に強くお願いしたいと思います。
ご静聴ありがとうございました。"
関連
・訪米2日目 国連気候変動首脳会合・国連事務総長との会談-----首相官邸、平成21年9月23日
・UN Webcast Archives / 22 September 09 H.E. Mr. Yukio Hatoyama, Prime Minister of Japan.[Webcast: Archived Video - 10 minutes ]
関連記事
・国連気候変動サミット:オバマ米大統領演説要旨-----毎日jp,2009/9/23
・中国主席、温暖化ガス「大幅減へ努力」 対GDP排出量-----NIKKEI NET,2009/9/23
・鳩山首相、気候変動サミットで、25%削減を表明する-----しなやかな技術研究会、2009-09-22
コメント続き
自民党から民主党への劇的な変化は、素晴らしいですね。ただ、各国の利害が問題となり、対立する国際政治の世界では、気候変動をめぐる京都議定書以降の国際間の2020年ころまでの合意がどうなるかについては、本当に予断を許しません。日本の新政権が放った鳩山イニシアティブは、合意への希望となった一方で、アメリカと中国という二大温暖化効果ガス排出国の具体的で削減に向けての実効ある展望となると、まだまだ多くの対立軸を残したまま、年末のCOP15(第15回第3回気候変動枠組条約締約国会議)に向けて、まだまだ予断をゆるさない状況が続きます。
鳩山イニィアティブが世界と日本の将来の暮らしの展望には、具体性が欠けています。地方、そして都会における、人口や気候変動、エネルギーの消費構造を勘案した暮らしの青写真作りはこれからです。小規模分散型や巨大集中化した極省エネ社会の両極で日本は風土と社会システムにおいて大きな可能性を秘めています。さまざまな試みの中から、より多くの成功例を生み、それを積み上げる地道な展望が開けるのか、今回の転機に期待をしつつ、注意深く動いてみたいと思います。
ところで各国の報道ですが、日本についても一文、数行の記事で触れています。オバマ大統領、胡錦涛国家主席への報道のほうに重点を置いた報道が多いですが、この一文、数行が、なによりも大きな成果です。麻生政権で失った国際的な関心は、日本の国際社会での存在感がいかに危機的な状態だったことがいまさらながらにわかりました。(t_t)
関連エントリー
・日米首脳会談、、、産経から-----しなやかな技術研究会β、2009-09-24
・次期首相となる民主党の鳩山代表の温暖化効果ガス1990年比、25%削減目標表明の重み-----しなやかな技術研究会、2009/09/10
・民主党のマニフェスト-----しなやかな技術研究会、2009/09/01
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