清水建設、日露研究機関とともにバイカル湖で、メタンハイドレートのガス回収実験に成功
将来の国産のエネルギー資源として注目を集めつつも、その回収方法やコスト、資源量(質)にさまざまな問題点も指摘されるメタンハイドレード(以下、MH)。その回収実験に清水建設などが成功したということです。実験が行われたのはバイカル湖、400mの海底に回収装置を沈め、装置内でウォータジェットを使って海水とMHを混ぜ、そのまま湖面にまで回収し、ガスを分離することに成功したということです。
-----image : Google Earthキャプチャー画像。[バイカル湖]
プレスリリース / 清水建設、2009.03.05
・バイカル湖で、メタンハイドレートのガス回収実験に成功
-----image(”図1 メタンハイドレートからのガス回収実験の概要”) : 上記リリースより
" ―メタンハイドレートの新たなガス回収技術の確立に向けて、大きな第一歩 ―
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はロシア科学アカデミー陸水学研究所、北見工業大学及び北海道大学と共同でこのほど、バイカル湖水深約400mの湖底にて、湖底表層に閉じ込められたメタンハイドレートから、ガスを解離・回収する実験に成功。メタンハイドレートの新たなガス回収技術に確立に向けて、大いなる第一歩を踏み出しました。今後は引き続き、表層資源に関する埋蔵調査やプラント機器の改良などを行ったうえで、回収効率や経済性の向上を図って4年以内に、技術的確立を目指します。
なお本回収実験は、独立行政法人科学技術振興機構のH18年度採択革新技術開発研究事業による委託を受けて行った実験です。
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深層MHは、温度・圧力条件をごく僅か変化させるだけで相平衡状態を崩すことができ、加熱や減圧などの方法を使って、ガスを解離・回収することができます。しかし表層MHは海底に近い分、深層MHより低温で安定状態にあるため、その状態を崩して効率的にガス回収するのに工夫が必要でした。08年8月、バイカル湖の南湖盆の水深約400mの湖底で成功したガス回収は、「チャンバー」と呼ばれる鋼鉄製・茶筒状の反応容器(直径:1.2m,高さ2m.重量約840kg)内で、MHと水を攪拌。水に溶かしたMHを水ごと湖上へ運び、ガスを解離・回収した点が最大の特徴です。MHを加熱または、減圧するのではなく、単純にMHと水を攪拌するという極めてシンプルな方法に着目し、その方法を実行したことが実験成功の原因。海底または湖底を含め、表層MHから、ガスの解離・回収に成功したのは、今回の実験が世界で初めてです。今回の成功は、我が国の資源開発にとって、多様な埋蔵資源の確保という観点から、大きな意味を持っています。
≪本回収実験におけるガス回収技術の概要は、以下のとおりです≫
技術概要
まず内部にウォータージェット・ノズル32本(水平ジェット及び垂直ジェット各16本)を装着した鋼鉄製・茶筒状のチャンバーを、湖底に着底させます。
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-----image(”図2 掘削・攪拌用ウォータジェットを装備したハイドレート解離チャンバー”) : 同リリースより
MHの解離は、湖底に設置したチャンバー内でのみ発生。チャンバーの外側でメタンは一切発生しません。
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≪参 考≫表層MHからのガス回収技術に取り組む当社の目的
我が国のMH資源開発計画のメインターゲットが、東部南海トラフ海底深部にある膨大なMHであることは、間違いありません。しかしより安定的なエネルギーの供給を目指すのであれば、海底表層部MHの資源化は、有望な選択肢の一つとなります。そのためには安全で経済的な回収方法の確立が不可欠で、当社が本技術の開発に取り組む理由は、そこにあります。
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関連記事
・清水建設など、バイカル湖でメタンハイドレートのガス回収実験に成功-----日経BP NET、2009年3月6日
参考
・北見工業大学 機械工学
コメント続き
国の発表では、南海トラフの海底には、膨大な量のメタンハイドレートが眠っているということです。40TCFという量と記載されています。これは、約1.1兆m3に相当する量であるということです。
プレスリリース / 経済産業省、平成19年3月5日
・東部南海トラフのメタンハイドレート資源量評価結果について
" 経済産業省では、メタンハイドレート開発促進事業の一部を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に委託して実施しておりますが、本事業のうち、平成17年度より実施してきた「東海沖~熊野灘」の東部南海トラフ海域の資源量評価が今般終了し、このエリアにおけるメタンハイドレートの原始資源量は約40TCFという結果となりました
......... "
この約1.1兆m3という埋蔵量は、日本全体の年間ガス消費量の十年以上分に相当するということです。
さらに、このメタンハイドレートは、他の地域にも有望な量が埋蔵されていると推定されていますので、将来の日本のエネルギーの確保に大きな明るい可能性を示すものです。
とはいえ、イギリスやアメリカは自国の資源をもちながらも、再生可能エネルギーの確保にも力を入れています。日本の風土、地形、ライフスタイルにあったエネルギー源の確保を21世紀的な視野にたって行う必要があります。(t_t)
関連エントリー
・12年度にメタン産出試験=日本近海に埋蔵の「燃える氷」-経産省 / クリッピング 時事ドットコム-----しなやかな技術研究会、2008/08/21
・静岡沖で、大量の埋蔵メタンガス発見 - 東京-----GreenPost -Heuristic Life -,2007/6/21
参考
・石油開発環境安全センター事業報告 : メタンハイドレート開発促進事業(環境影響評価に関する研究開発)
・広島大学 地球資源論研究室 / エネルギー資源 / メタンハイドレートとは
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