地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ / プレスリリース 環境省
" ~低炭素社会に向けた12の方策~ 地球環境研究総合推進費(競争的資金)によって実施されている戦略的研究「脱温暖化2050プロジェクト」の最新の研究成果として「低炭素社会に向けた12の方策」の報告がありましたので、公表します。 この研究成果は、昨年2月の中間報告で示された「我が国が、2050年までにCO2の排出量を1990年比で70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」との結論を受けて、70%削減を現実のものとするための具体的な12の方策を提案するものです。 本報告は、本研究プロジェクトの中核であるシナリオチーム(国立環境研究所・京都大学・立命館大学・みずほ情報総研(株))が中心となってとりまとめたものです。 .......... 脱温暖化2050研究プロジェクトは、地球環境研究総合推進費(S-3)により、国立環境研究所が中心となって2004年度から実施しており、日本における中長期脱温暖化対策シナリオを構築するために、技術・社会イノベーション統合研究を行い、2050年までを見越した日本の温室効果ガス削減のシナリオとそれに至る環境政策の方向性を提示するものである。(http://2050.nies.go.jp/index.html) 2.「低炭素社会に向けた12の方策」の概要 「2050日本低炭素社会」シナリオチームは、2007年2月に「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」報告書を作成し、日本を対象に2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、主要な温室効果ガスであるCO2を1990年に比べて70%削減する技術的なポテンシャルが存在することを明らかにした。 (http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8032)-----環境省、平成20年5月22日発表より本報告は、70%削減シナリオ研究から得られた分析結果をもとに、どの時期に、どのような手順で、どのような技術や社会システム変革を導入すればよいのか、それを支援する政策にはどのようなものがあるかを、整合性を持った12の方策としてまとめ、対策モデルと組み合わせてそれぞれの方策の削減効果を定量的に把握したものである。特にエネルギー需要側での削減努力が重要であり、2000年比の削減分担を、おおむね産業13~15%、民生21~24%、運輸19~20%、エネルギー転換35~41%と算出した。
12の方策は、モデル研究から得られた効果的削減が可能な分野を主な対象として、その分野で取りうる対策とそれを推進する政策を組み合わせ、有識者の意見を加えて、構成したものである。すべての方策を組み合わせることで、70%削減が可能となる。
●低炭素社会に向けた12の方策●
方策の名称 説明
1 快適さを逃さない住まいとオフィス 建物の構造を工夫することで光を取り込み暖房・冷房の熱を逃がさない建築物の設計・普及2 トップランナー機器をレンタルする暮らし レンタルなどで高効率機器の初期費用負担を軽減しモノ離れしたサービス提供を推進
3 安心でおいしい旬産旬消型農業 露地で栽培された農産物など旬のものを食べる生活をサポートすることで農業経営が低炭素化
4 森林と共生できる暮らし 建築物や家具・建具などへの木材積極的利用、吸収源確保、長期林業政策で林業ビジネス進展
5 人と地球に責任を持つ産業・ビジネス 消費者の欲しい低炭素型製品・サービスの開発・販売で持続可能な企業経営を行う
6 滑らかで無駄のないロジスティックス SCM*1で無駄な生産や在庫を削減し、産業で作られたサービスを効率的に届ける
7 歩いて暮らせる街づくり 商業施設や仕事場に徒歩・自転車・公共交通機関で行きやすい街づくり
8 カーボンミニマム系統電力 再生可能エネ、原子力、CCS*2併設火力発電所からの低炭素な電気を、電力系統を介して供給
9 太陽と風の地産地消 太陽エネルギー、風力、地熱、バイオマスなどの地域エネルギーを最大限に活用
10 次世代エネルギー供給 水素・バイオ燃料に関する研究開発の推進と供給体制の確立
11 「見える化」で賢い選択 CO2排出量などを「見える化」して、消費者の経済合理的な低炭素商品選択をサポートする
12 低炭素社会の担い手づくり 低炭素社会を設計する・実現させる・支える人づくり
*1 SCM(Supply Chain Management):材料の供給者、製造者、卸売、小売、顧客を結ぶ供給連鎖管理
*2 CCS:二酸化炭素隔離貯留 Carbon dioxide Capture and Storage添付資料
別添資料 「低炭素社会に向けた12の方策」[PDF 3,261KB] "
コメント
「我が国が、2050年までにCO2の排出量を1990年比で70%削減し、豊かで質の高い低炭素社会を構築することは可能である」という提言は、力強く期待のもてる内容です。
しかし、こうしたシナリオが実際に動いていくかについては、まったく予断をゆるされず、原油や食料の高騰に現れてきている、現代社会を支えるさまざまな資源へのアクセスが阻害されることによる世界の不安定化ならびに景気への影響という事態が顕在化していくというより困難な局面において、希望を語ることさえ困難であるという認識が必要なのではないかと考えます。とはいえ、明るい面をみながら、建設的に動いていくことが硬直化、極端なナショナリズムを回避するためにも必要ということで、できるだけ自分のライフスタイルの中で、2050年の暮らしに関するヴィジョンを描いてみることが必要だと思います。
京都議定書の1990年を基準とし、温暖化効果ガス6%削減という目標すら達成には、多くの困難と資金の投入が必要とされているなかで、さらに経済発展モデルを下敷きとしたさらなる削減案となると、資金と努力を考えれば大変な努力を必要とされることがわかります。今回のシナリオをより実感できる形で把握しようとするのですが、国の毎年の施策から、具体的な2050年の具体的な生活スタイルが描けないのです。まあ、私は、寿命的にも生きていないのですが、、、子供の世代の暮らしという意味でも現在の延長上にはないという漠然とした、あまり明るくない予想が先に立ってしまいます。国民的な議論が必要だということはわかるのですが、国民的な議論を尽くすことがどういうことなのか? という道筋すら見えてこない以上、結構シナリオ先行型ではなく、現状の問題的をもっと見ていかなければならないと思えてくるのです。(t_t)
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プレスリリース / 環境省、平成20年6月24日
・地球環境研究総合推進費戦略的研究プロジェクト「脱温暖化2050プロジェクト」成果発表のお知らせ ~英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」の刊行~
" 環境省の運営する競争的研究資金である地球環境研究総合推進費の戦略的研究「脱温暖化2050プロジェクト」は、2006年2月に日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」を発足させました。
このたび、その一環として行った世界および各国の低炭素社会シナリオについての分析の成果が、英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」として刊行されましたので、お知らせします。
同誌に収録された9編の論文は、2007年のG8ハイリゲンダムサミットで提唱された2050年までの温室効果ガス排出量半減という高い削減目標値について、世界および国レベルを対象にした数値シミュレーションモデルを用いて分析を行った結果、非常に困難な目標ではあるが技術的・経済的に達成可能なことを示すものです。
1.これまでの経緯
2005年のG8グレンイーグルズサミットで気候変動がG8の重要課題とされたことを受け、2006年2月、環境省と英国環境・食糧・農村地域省(Defra)の両大臣のイニシャティブにより日英共同研究「低炭素社会の実現に向けた脱温暖化2050プロジェクト」が発足しました。本プロジェクトは、日英が連携して、2050年における低炭素社会を実現することを目指した研究を実施するとともに、世界各国の同様の研究を集大成する国際ワークショップを継続的に開催し、国際的な政策形成に貢献することを目指すものです。http://www.env.go.jp/earth/ondanka/2050proj/press/index.html
2007年1月の日英の首相による「日英共同声明」は、「日本と英国は、引き続き低炭素社会に向けた科学技術に関する共同研究において協力する」とし、本共同研究を国家間の研究協力プロジェクトとして推進することが合意され、爾来日英間で強力に推進してきました。
日英共同研究の一環として、低炭素社会に関するモデル分析を行っている専門家による国際ワークショップ「Quantifying Energy Scenarios of a Low Carbon Society:低炭素社会におけるエネルギーシナリオの定量化」を2006年12月に英国オックスフォード大学で行いました*1。ここで議論されたモデル分析の枠組みに基づいて行われた研究成果が、このたび英文学術誌Climate Policyの増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」として刊行されました。
*1 国際ワークショップ「Quantifying Energy Scenarios of a Low Carbon Society:低炭素社会におけるエネルギーシナリオの定量化」
http://www.ukerc.ac.uk/TheMeetingPlace/Activities/Activities2006/0612QuantEnergyScenariosLCS.aspx
低炭素社会に向けたエネルギー需給シナリオとは?「英国エネルギー研究センター・エネルギーモデル会合」に出席して(地球環境研究センターニュース Vol.17 No.12)
http://www-cger.nies.go.jp/cger-j/c-news/vol17-12/vol17-12.pdf
2.英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」
本増刊号に掲載された論文から、世界を対象とした4つのモデル(英国、日本、ドイツ、アメリカの研究グループ)と国を対象とした5つのモデル(カナダ、日本、英国、タイ、インドの研究グループ)を使って、2050年半減に見合うケース(これをCarbon Plusケースと称する)について分析した結果を下表に示します。
世界モデルではtCO2あたり平均コストでは50ドル程度、限界削減費用でも330ドル程度で2050年半減が可能なことがわかりました。国内モデルの分析では、国によって設定している削減目標値等が異なるため一概に比較できませんが、せいぜい2%のGDP影響で大幅なCO2削減が可能なことがわかりました。*2
この増刊号は、低炭素社会構築に向けた世界および国レベルの長期シナリオとその政策的な意味づけについて、複数のモデルで分析を行った世界初のものです。今後さらなる分析が行われ、低炭素社会を現実にする対策が提唱されることが期待されます。
*2 すべての論文は、http://www.earthscanjournals.com/cp/008/supp/default.htmで参照(有料)できます。"
投稿: 追加情報 英文学術誌Climate Policy増刊号「低炭素社会に向けた長期シナリオ分析」の刊行 | 2008/06/25 21:44