浜岡原子力発電所の全炉停止要請。続報 1
かくして、浜岡原子力発電所は、全炉停止となることが決まった。もちろん、これで安全というわけではないが、まずは一歩
・浜岡原子力発電所の運転停止要請への対応について-----中部電力、2011年5月9日
" 2011年5月6日に、内閣総理大臣が浜岡原子力発電所のすべての号機について運転停止の要請を表明するとともに、当社は、同日、経済産業大臣より要請書を受領いたしました。
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当社は、要請への対応について検討を重ねてまいりましたが、こうした基本的な考え方に基づき、非常に厳しい状況ではありますが、現在運転中の浜岡原子力発電所4、5号機(4号機:沸騰水型、定格電気出力113.7万キロワット、5号機:改良型沸騰水型、定格電気出力138万キロワット)を停止することを本日、決定いたしました。4、5号機については、準備が整い次第速やかに停止いたします。また、停止中の3号機(沸騰水型、定格電気出力110万キロワット)についても、当面運転再開を見送ることといたしました。
今回の要請の受け入れにより、お客さま、立地地域の皆さま、株主の皆さまをはじめ多くの皆さまに多大な影響を及ぼすことが懸念されます。これらの方々に過度な負担、不利益が生じないよう、経済産業大臣に対し、別紙1のとおり確認をいたしました。
今後は、津波に対する安全性を一層高めるため、防波壁の設置などの対策を速やかに実施するとともに、地域の皆さまを始めとして、広く社会の皆さまにその内容をご説明してまいります。その上で、当社としては、中部地域への電力の安定供給のために早期の運転再開を目指してまいります。
また、浜岡原子力発電所の運転停止により、今後厳しい需給状況となることから、別紙3のとおり電力需給対策本部を設置し、電力の安定供給に向け、あらゆる施策を講じてまいります。
別紙
【別紙1】浜岡原子力発電所運転停止要請に係る確認事項[PDF:108KB]
【別紙2】2011年度最大電力需給計画[PDF:92.3KB]
【別紙3】「電力需給対策本部」の概要[PDF:83.6KB]
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5/9日以前のクリッピングなどは以下をご覧ください。
昨晩の突然の菅首相の浜岡原子力発電所の全炉停止要請の報には、びっくりしました。実際、突然の発表だったので、意外な人、立場の人の意外な意見を聞くことができました。
さて、報道ですが、
産経は、原子力推進側が浜岡原子力発電所の継続稼動にこだわっている様子を伝え、原発から撤退といったまちがったメッセージを発信しているとの懸念を報じましたが、海外でも困ると考えたのは原子力推進側だけでしょう。
・「なぜ今」「海外に誤ったメッセージ」原発放棄、信頼は失墜-----MSN産経ニュース、2011/05/06
これ以前、すでに浜岡原子力発電所はすでに有名でした。Hamaokaは、いまやもっとも注目される原子炉となったFukushimaについで、すでに有名だったのです。
UPIは浜岡原子力発電所を時限爆弾と評しました。
・Japanese nuclear plant a time bomb?-----UPI.com,May 3, 2011
FTタイムスは、福島原子力発電所事故により、反対運動の動向が再度注目される様を伝えました。
・Battle at site dubbed ‘most dangerous’ reignites-----FT.com,April 6 2011(無料登録で読めます)
-Japan live blog ? day five-----FT.com Blog,March 14, 2011
" 1552 - Further to our 1350 and 1458 posts, the Hamaoka nuclear power plant continues to operate safely despite a new earthquake striking nearby, the IAEA said. "
ビジネスウィークとロイターは、中電が再稼動を進めようとしていた3号炉について伝えました。
・Chubu Electric May Start Hamaoka No. 3 Reactor by End-June-----Businessweek,April 28, 2011
・UPDATE 1-Chubu Elec faces uncertainty on Hamaoka reactor restart-----Reuters,Apr 28, 2011
このように、浜岡原子力発電所は、明らかに他の原子力発電所とは別格である(一段と地震の警戒を要する地域のど真ん中にある)とされていました。Fukushima 、そして Hhamaoka 。日本の原子炉の動向は、海外では高い関心をもって伝えられていたのです。
ようやく、予知連関連からもバックアップ談話がでました。過去には、「地震予知は不可能」とする東京大学のロバート・ゲラー教授(地震学)の発言がありましたが、このタイミングで地質、地震屋さんの正直なところをだしてもらわないと。今がタイミングです! よろしくお願いします。
”地震学者からは「4連動も考える必要がある」”----四連動!
・原発停止要請の根拠…東海地震「発生確率87%」って?-----asahi.com,2011年5月7日
" 地震予知連絡会前会長の大竹政和東北大名誉教授は「南海トラフでは2千~3千年に一度、3連動よりも大きな地震があったとの見方が強まっている。次の地震を想定外にしないため、過去の明確な地震だけにとらわれない想定が必要だ」 "
原発をエネルギー問題としてとらえると、地球規模の気候変動&エネルギー問題(ピークオイル)による2100年までの現実的な壁にぶちあたる。3.11以前、世界で息を吹き返すかとみられた原子力発電の再興への動きは、実に多くの論客を巻き込み、気候変動およびエネルギー問題が人的な被害、経済的な被害の見積もりにおいて、チェルノブイリ原発事故の呪縛を、より過酷な現実による予想に置き換える形で、必要悪としての原子力を認めさせることに一部成功しました。
実際、中国、インド、ブラジルがエネルギー争奪戦のメンバーに入ってくることが”不可避”となるなか、その人口圧力はエネルギーにとどまらず、厳しく過酷な食料、水の争奪戦をイメージさせた感があります。すでにまずしい地域、特にアフリカでの気候難民への対処の難しさは、現在の北アフリカから中東を巻き込むジャスミン革命にさえつながり、地域の不安定化を現実のものとして強く認識させていたのです。
そして、より厳しい紛争、戦争といった究極の問題に対峙することを政策決定者、企業のトップにせまり、危機の高まりの中で、原子力の再評価の動きは拡大しつつあるように見えました。
実際、その議論を20年近くみてきた上での結論は、原発のある未来とない未来、それぞれのメリット、デメリットを理解したうえで、それぞれの地域や国、そして個人が厳しい覚悟で決断をしなくてはならないということを理解し、2度の被爆を経験したわが国でさえ、エネルギー問題という議論では、原子力発電所の事故による被曝をリスクとして勘案し、を受け入れる人が半数以上いる、という状況を受け入れざるを得ない現実がありました。
・「原子力は3本柱の一つ」 経産省の内部文書判明-----中国新聞、'11/5/7
したがって、上の経済産業省の裏マニュアルの存在は、きわめてわかりやすい、彼らのおとしどころです。未だ、原子力はエネルギー政策の根幹なのです。かれらには、農業、林業、漁業を少子高齢化、低成長経済の中で語るだけのヴィジョンがないことは、明らかですし、原子力の利権とパワーに絡め取られています。
彼らは、国のためと口にしますが、決して一人一人の市民を具体的にイメージできるわけでななく、単なる比較としての数字により政策を動かしてきました。その習いは、今回の福島原子力発電所の甚大な事故をもってしても、すぐに変えることができない点であり、被曝者の拡大という現在の現実に彼らが、これまでと同じく意図的なマスコミ操作による、矮小化、議論のすり替えによる誘導、情報の秘匿などにより対処していることからもうかがい知れる点なのです。
エネルギー政策としての原子力エネルギーを私個人は選択しませんが、政治的にメインストリームは原子力を必要悪として選択するという3.11以前の日本の状況があったのです。問題は、3.11以前にもありました。少子高齢化、雇用不安、地方に拡大する農林水産業から工業までひろがる空洞化、年金、医療、福祉、教育、そして財政。これらの問題はいずれも日本のしくみが破綻し、大きな変革を必要とするも、その力が政治にも国民にもないことが明らかになっていました。そして、3.11の地震、津波、そして福島原子力発電所の事故。このまさに未曾有の国難は、以前からの問題を浮き彫りにもし、いまも列島を席巻しているのです。
しかし、地震国日本における、原子力発電は、エネルギーの議論以前に、解決すべき重大な選択のポイントがあったのです。
原子力エネルギーはわが国では、地震のリスクをどう評価するかという問題であることを知れば、多くの人が原子力を選択しないだろうということ。つまり、地震の予知ができないこと、場所と時間、そして規模を評価することもできないこと。つまり、地震の巣のような日本では、そもそもリスクすら評価できない地震と原子力発電という究極の核汚染の種は同居できないということが理解されるのではないかと考えてきました。
でも間に合わなかった。福島原子力発電所の事故は起こってしまいました。
核廃棄物の地層処分で万年単位の時間を気にする原発推進論者も、1000年単位の地殻変動を無視します。なぜ、それができるかというと、地震が想定できない災厄だからです。だれも、わからないのです。だから逆にすべて想定外としようとしてきたのです。
このことを、つまり私たちが住んでいる地盤、土地、風土のなりたちを理解することで、原子力はエネルギー問題ではなく、地震をどう評価する問題であることがわかります。残念ながら、科学ではなく、良識や常識、感覚が最終的な判断の元になる部分もでてきます。300万年では、500km動く地盤も、1年では数十センチ(大きな数字です!)となります。”よく動く大地の上に暮らす”ことを理解して、工夫していくしかないのです。
3.11以降、日本人がよりこれらの現実に対処し、正しい選択ができるようになるしかないことを前にもまして痛感しています。
何かを変えるとすれば、まず自分から始まり、そこにとどまらず、地域を、国を変える努力をする必要があるのです。
さらに発表後の情報をクリッピングしていきます。
関連情報 2011/5/6-
・中部電力:浜岡原発全炉停止を受け入れ-----毎日jp,2011年5月9日
" 【写真で見る】中部電力浜岡原発
【浜岡原発】全炉停止要請 受け入れに期待…枝野官房長官
【浜岡原発】全炉停止要請 中部電、9日午後にも受諾へ
◇浜岡原発停止要請 交付金、現行維持の意向--海江田経産相
◇浜岡原発停止要請 中部電株、11年ぶり安値 "
・九電、中部電から電力融通 浜岡停止なら困難に 九州の供給懸念-----西日本新聞、2011年5月8日
・浜岡原子力発電所の運転停止要請に関するコメント-----中部電力、2011年5月6日
" 経済産業大臣より、本日19時に、浜岡原子力発電所の運転停止に関する要請を受けました。
当社としては、要請内容について迅速に検討いたします。 "
・菅首相、浜岡全停止を要請 津波対策終了まで-----電気新聞、2011/05/08
・仙谷官房副長官:中部電の浜岡原発以外、運転停止を求めず-NHK-----ブルームバーグ、2011/05/08
・1号機の原子炉を循環冷却へ。浜岡原発は全基停止-----日経BP,2011年05月08日
・首相、中部電に「しっかり理解してもらいたい」-----MSN産経ニュース、2011.5.8
・全体像みえぬ電力政策 停止中原発32基、再稼働難航も 首相、浜岡に全面停止要請-----日本経済新聞、2011/5/7
" 全国の原発54基のうち、3月11日の東日本大震災で11基が停止した。定期検査で止まっていた原発も21基あり、現在は22基が運転中だ。 "
・保安院の独立なるか 政府 原子力組織見直し-----東京新聞、2011年5月5日
・国民不安に政治決断 政策転換は不透明-----東京新聞、2011年5月7日
" ただ、あくまでもいったん停止を求めたにすぎず、今回の判断が政府の原発政策の抜本的な見直しにつながるとの見方は小さい。 "
・浜岡原発が止まったら…真夏の電力供給、余力わずか-----asahi.com,2011年5月7日
・Japan urges three reactors be suspended over safety concerns-----The Globe and Mail,May. 06, 2011
・停止要請 評価の一方で批判も-----NHKニュース、5月7日
" 一方で、「唐突すぎる」といった批判的な意見も出ています。菅総理大臣には、浜岡原発だけに停止を求めた十分な根拠や、日本の中長期的なエネルギー政策について、さらなる説明責任が問われることになりそうです。 "
・菅首相、浜岡原発の運転停止を要請-----AFP BB News,2011年05月06日
・Japan PM Wants Another Nuclear Plant Closed Over Quake Fears-----ABC News,May 6 2011
" Japan urged a power company today to temporarily shut down operations at another nuclear plant that straddles a major fault line for fear it would not survive a major earthquake and tsunami. "
・浜岡原発:運転停止は「おおむね2年」 安全・保安院-----毎日jp,2011年5月6日
関連エントリー
・環境エネルギー政策研究所 ISEP、菅首相の「浜岡原発の停止要請」を高く評価する-原発を全停止しても電力は不足せず、安全性で正しい政治判断をすべき-とのプレスリリースを発表-----しなやかな技術研究会、2011/05/09
・菅首相緊急記者会見。浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を中部電力に対し要請-----しなやかな技術研究会、2011/05/06
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